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 山本幸三・地方創生相が16日、観光振興のために文化財を活用することについて「一番のがんは学芸員。この連中を一掃しないと」と発言したことが波紋を広げている。翌日撤回されたが、発言について「理解がない」と嘆く関係者がいる一方で、「もっと市民に向き合わないと」との意見も出た。現場の声を聞き、考えた。

■保護とのバランス模索

 今年1~3月まで、東京国立博物館で開催された「春日大社 千年の至宝」展。展示を見た菅義偉官房長官は、英語以外の中国語や韓国語の解説が不足していると不満を漏らした。同館の関係者によると、菅氏は多言語表示への対応を求め、同館は急きょ対応に追われたという。

 海外からの観光客(インバウンド)に利便を図ることは、「観光立国」を目指す安倍政権の意向に沿うものだ。文化庁は、今年2月から文化財を観光に生かすための多言語解説について検討する有識者会議を開き、3月には文化財を中核にした観光拠点形成についてのオンライン講座を初開催。自治体の文化財担当者、学芸員ら約2千人が参加した。

 その矢先の山本大臣の発言。影響を与えたとされるのが、大臣の知人で、小西美術工芸社社長のデービッド・アトキンソン氏だ。『新・観光立国論』などの著書がある。取材に応じたアトキンソン氏は「『一掃』という表現はダメだが、文化財を活用した観光で注目を集めれば、その文化財を保護するための補助金も得られやすくなる。国の財政が厳しい現在、観光資源にならなければ保護も厳しくなる」と話す。

 山本大臣は17日に発言を撤回、松野博一文部科学相が18日に「学芸員は博物館運営を支える専門的職員。文化財を後世に伝えるために極めて重要な業務を担っている」と学芸員を擁護。速やかな幕引きが図られた。(宮代栄一、後藤洋平)

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