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【社会】

大飯原発「地震想定に欠陥」 差し止め控訴審で元規制委員が証言

 関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の運転差し止め訴訟控訴審の口頭弁論が二十四日、名古屋高裁金沢支部(内藤正之裁判長)であり、原告の住民側証人として出廷した元原子力規制委員の島崎邦彦・東京大名誉教授が、関電による地震想定について「過小評価の可能性があり(算出方法に)大変な欠陥がある」と主張した。

 島崎氏は地震予知連絡会長や日本活断層学会長を歴任。二〇一二年から二年間、規制委の委員長代理を務め、大飯原発の地震対策の審査を指揮した。内藤裁判長は島崎氏を「最も重要な証人」と述べており、判断に影響を与える可能性がある。

 大飯原発の審査で関電は、耐震設計の目安となる揺れ(基準地震動)について、原発付近の断層面積などから地震の規模を推定する計算式に基づき、最大加速度八五六ガルになると想定している。

 この日の証人尋問で島崎氏は、規制委を退任後の研究や昨年四月の熊本地震の観測データを踏まえて証言。関電が使った計算式を大飯原発周辺のように震源断層が垂直に近い場所に適用すると、地震の規模を小さく見積もる可能性があると指摘した。

 島崎氏は昨年六月、同様の見解を規制委に伝え、基準地震動の再考を求めたが、規制委は「見直す必要はない」と結論付けている。

 閉廷後の記者会見で、原告の島田広弁護団長は「(規制委の)審査がずさんで、不十分なことが明らかになった」と証言の意義を強調。関電は「本日の尋問によって、当社の主張が影響を受けることはない。大飯原発の安全性が確保されていることを引き続き説明していく」とのコメントを出した。

 一四年五月の一審・福井地裁判決は「大飯原発には一二六〇ガルを超える地震が到来する危険がある。(地震対策に)構造的欠陥がある」として二基の再稼働の差し止めを命じ、関電などが控訴した。

<地震想定の過小評価問題> 原子力規制委員会で原発の地震対策を審査した島崎邦彦東京大名誉教授が、関西電力大飯原発などで想定が過小評価されている恐れを指摘。規制委は指摘を踏まえ、大飯原発の地震想定を再計算したが「見直しは不要」と結論。その後も島崎氏は想定の手法を変えるべきだと主張した。規制委は関電の想定は十分な余裕を考慮しており、審査に問題はないとの立場を崩していない。

 

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