国際社会と協調して繁栄を目指すのか。それとも自国第一主義を掲げて国を閉じるのか。

 フランス大統領選挙は、グローバル化時代の国の針路を問う選択になりそうだ。

 前者を訴えるのが中道・独立系のエマニュエル・マクロン氏。後者が右翼・国民戦線のマリーヌ・ルペン党首である。

 5月7日の決選投票は、正反対の立場をとるこの2人によって競われる。

 いずれの道も利点と欠点があろう。しかし、グローバル化はもはや押しとどめがたい世界の現実だ。多くの先進国が直面する共通の課題だからこそ、この時代をどう生き抜けばいいか、突っ込んだ論戦を望む。

 両者の違いは、国境の壁をなくして人や物の往来を促してきた欧州連合(EU)への態度とも重なり合う。

 親EU派のマクロン氏は、伝統産業が他国に移転したり、移民や難民が急激に流入したりする現実に対する人々の不満と不安の声にこたえてほしい。

 一方、反EUを説くルペン氏は、経済問題や難民危機のように一国では解決できない課題にどう取り組むのか、明確な説明を果たす責任がある。

 長年、交代で政権を担ってきた左右の2大政党の候補が、ともに決選投票への進出を逃したのも異例の事態である。

 「成長重視の右派、分配重視の左派」という古い対立軸から抜け出せず、グローバル化時代への処方箋(せん)を示しきれない大政党の限界が露呈した。

 公金流用疑惑など候補の金銭スキャンダルも浮上。「反エリート」を掲げるルペン氏、「右でも左でもない」が売り物のマクロン氏への追い風になった。

 既得権に安住し、庶民の声に耳を傾ける努力を怠ってきた2大政党は、今回の敗北を真摯(しんし)に反省して出直すべきだ。

 02年に国民戦線が決選投票に進んだ時は、ほぼ全ての政治勢力が「反右翼」の包囲網を敷いて当選を阻んだ。

 だが、今回も同じ手法が通用するかは疑問だ。

 たしかに移民規制などルペン氏の排外的な公約には懸念すべき点が少なくない。

 とはいえ、国民戦線がグローバル化を不安視する層の受け皿になっていることも否定しがたい現実である。

 むしろマクロン氏がなすべきは、EUという国際協調の取り組みが、いかに平和と経済発展をもたらしてきたか、丁寧に説明を尽くすことだろう。それこそポピュリズム(大衆迎合)を封じる唯一の道でもある。