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二度寝の目覚め
こちらは『永い後日談のネクロニカ』の二次創作(?)になっております。元がTRPGですし、ネクロマンサー視点なので、少し判断に困りますが、楽しんでいただければ幸いです。
安全な場所に、長く居た人間は危険に疎い。
例えば、道路の信号。
自分は歩道で青信号のはずなのに、暴走車に轢かれて死んでしまった。
例えば、銀行で預金中。
強盗に占拠され、偶然選ばれた人質になってしまい、殺されてしまった。
例えば、海水浴中。
深い水中で、足を吊ってしまい、溺死してしまった。
例えば....
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そう、例えばの話だった。
俺は乱雑したマンションの一室で、大学の帰宅後ベッドインした。
電気も消した。ガスも確認した。明日の朝食の準備もした。
安心して明日を迎えられる!!
しかし、世界に絶対はなく、そしてとても非情で、理不尽だと知った。
なぜなら、起きたらそこは。
5畳ほどの鉄の箱の中で寝てた、自分の寝てる布団を残して。
「…………ねむぃ………まだ土曜………まだ大丈夫………」
だが、人間は急激な変化に耐えられない。
……別に、寝ぼけている訳ではないのだ。決して。
数刻後
「ここは………どこだ?」
当然の疑問にぶち当たる。
ただ幸い、近くに扉があり、その扉は開いているようだ。
(もし、今の現状が誘拐や拉致ならば、布団ごと持ってくる必要はなく、俺が憎くて殺したいわけでもない。)
現状の確認をしたが、謎が深まるばかりだ。
「親切に出口があるんだ、ご厚意に沿って出るか。」
俺は布団から這い出て、鉄の扉を開けた。
出て先は、所々が朽ちた、木製の部屋だった。
だいたい12畳ぐらいの広さだったのだろうが、鉄の箱…もとい、俺が入ってた場所が部屋の半分を占領している。
木製の部屋には3つのものがあった。
1つは本棚。
かなり厚めの本が、ところせましにある。
2つは何かの機戒。
人1人入れるぐらいの培養液の入ったシリンダーと、店のレジのような、色々なボタンが乱立する機械があった。
3つは冷蔵庫。
この冷蔵庫は外付けなのか、壁にドアほどの大きな扉がついている。
あと、おまけ程度に中央に椅子があった。
「これは………研究室か?」
研究室というには狭すぎるし、書斎というには奇妙すぎる部屋だ。
ふと、視線を落とすと、椅子の上に手紙があることに気づいた。
「ここで手紙か。タイミング良すぎるな。」
だが、他に手がかりがある訳でもない。俺は読むことにした。
『拝啓、雨宮悠治くん。
私はホーエンハイムという者でネクロマンサーだ。
君を、この2244年に呼び出したのは他でもない、私だ。
まず、君をここに呼んだ理由だが、私は研究に飽きた。だから、代わりに君に引き継いでほしい。拒否権はないがね。
ただし、私の研究成果は好きに使ってくれて構わない。といっても、私が作ったドールやサヴァントは全部処理してしまったがね。
まあ、材料は冷蔵庫に入れてある。好きなものを作るがいい。
私は先に、死後の世界でゆっくりするよ。
あと、忠告として、この世界では君だけでは生き残れないことを言っておくよ。餞別として、この世界で生きれる体を送ろう。
さあ、そこからは君の舞台だ、観客を楽しませてくれ。
ちなみに、君を呼んだ方法は''タイムリープ''。ようは、ここは未来だ。そして、過去に戻るのは不可能とだけ言っておくよ。
敬具 ホーエンハイム』
手紙のなかには、一緒に1本の注射器が入っていた。
………なんだこれは。まるで意味がわからんぞ。
だが、いたずらにしては手が込みすぎている。
まずは、この手紙の真偽の裏付けをしなければ。
……真実でないこと祈ろう。
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さしあたって、最初に確認を始めたのは出入口だ。
どうやら木製の家からの扉は鍵がかかっていた。
しかし、大きな問題にはならなかった。
時間が設定されており。12時間経つと、扉のロックが解けるようだ。
次に確認したのは本棚だ。
とりあえず、必要性の高い、さっきの手紙にあったワード、『ホーエンハイム』『ネクロマンサー』『ドール』『サヴァント』あと、追加で歴史書だ。
結果的に、手紙の内容は真実だった。それを歴史書が教えてくれた。最初はこの歴史書も偽物と思ったが、内容に現実味があり、かつ写真やサンプルが物的証拠となった。精神的にかなりの重圧になったが、先に進まないわけにはいかない。
次に『ホーエンハイム』については本棚からの収穫はなかった。しかし、元の世界での知識としては、中世の錬金術師として有名な人物なのがわかった。
最後は『ネクロマンサー』だ。これに関しては、一緒に『ドール』と『サヴァント』についてもわかった。ついでに、注射器の正体も予測できた。
まず、この世界でネクロマンサーとは統べる側の者の、ほとんど指す。
人類の98%以上が死滅した世界で、残りの生き残った人類はネクロマンサーになり、死体を操り、孤独や暇などを埋めるだけの者や、他のネクロマンサーを嫉妬し恨む者もいる。
正直、過去から来た一般人の俺に、そのような超越者のような精神はない。今考えるべきは、生き残る事だ。
話しはそれたが、様々な目的をもってネクロマンサーは存在している。その操ったり、動かしている特定の死体を『ドール』や『サヴァント』と呼ぶ。
これらの死体を動かしているのは、魔法でも死霊術でもない、粘菌だ。
死体に意識があるか、などを話すと『自我理論』とかかなり細かい事になるので、ここでは省略する。
核による最終戦争が起きた地球は、とても生物が生きていける環境ではない。しかし、死体には環境はほとんど関係ない。
だが、どうやらホーエンハイムは、手広く研究していたそうだが、その内の1つの研究成果が、手紙の中の注射器のようだ。
この中に入っている粘菌は、生物を現在の環境でも活動できるようにするものらしい。
ただし、現在の環境でも活動できるように、遺伝子から身体まで『作り替える』ので、結果的に活動可能だが、それ以外は保証できない。
だが、もし歴史書通りの世界だった場合、この注射器は使う必要性になる。ある程度覚悟をしていたいいだろう。
ネクロマンサーの知識を得て、気づいたら11時間経っていた。
流石に疲れた。
けど、できることはしておこう。
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本棚の次は、謎の機械についてだ。
かなり詰め込んでネクロマンサーの知識を得たが、機械については予測はついていた。
カチャカチャ
動作確認してわかったが、やはりこの機械は『ドール』を製造するための機械のようだ。しかも、結構高性能っぽい。
さて、次は冷蔵庫を_________
ピィーーー
『規定時間が過ぎたため、扉を解錠します。解錠に合わせて、ホーエンハイム様のメッセージを再生します。』
どいやら12時間たったようだ。
しかし、メッセージとは?
『ようこそ、雨宮悠治くん。おそらく君は、本棚の本を呼んでくれただろう。その上で話を進める。知っての通り、この世界は生物が生きられ環境ではない。そして、それは私の家も例外ではない。今ちょうど扉を解錠しようとしているが、解錠した瞬間、ここは外と代わりなくなる。君ならどういう意味かわかるね?今から5分の時間を与えよう。それでも覚悟を決めなさい。
ホーエンハイム様のメッセージは以上です。
これより解錠シーケンスに移行します。解錠まで残り5分です。』
「………選択肢は無いか。」
椅子の上の注射器を取り出す。
腕を適当な物で縛り、静脈を浮き上がられる。
打つ前に戸惑い………はしなかった。
むしろ、これからどうなるか好奇心が勝ったのは、彼が異常なのか、早継に変わる環境のせいなのか、わからない。
どちらにせよ、1分もいらず、彼は注射を打った。
結果、彼は意識を手放した。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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