ユーロが上昇、仏大統領選の開票受け
仏大統領選第1回投票の開票結果が出た23日夜、ユーロの対ドル為替レートが2%上昇し、昨年11月半ば以来の水準に達した。大統領選では、親欧派の中道派エマニュエル・マクロン前経済相が首位となり、決選投票で極右「国民戦線」のマリーヌ・ル・ペン氏と対決することになった。
欧州連合(EU)離脱を問う国民投票の実施を呼びかけているル・ペン氏に加え、同様にEUに否定的な左翼ジャン=リュック・メランション氏が勝ち進むことを恐れていた市場関係者は、親EU派のマクロン氏がル・ペン氏の対立候補となった結果を歓迎したもよう。
開票結果が明らかになるにつれ、ユーロは対ドルで2%上昇し、昨年11月10日(米大統領選の結果が出た翌日)以来の高水準、1ユーロ=1.09395ドルを付けた。その後の取り引きで、1.0840ドルまで小幅に戻した。
欧州市場も上昇相場で始まり、フランスのCAC40指数は取り引き開始直後に4%急上昇した。
投資家のリスク回避通貨といわれる円に対しては、ユーロは3%上昇して5週間ぶりの水準に達した後、119.50円まで下がった。
対ポンドでは、1.2%上昇し0.8480ポンドをつけた。
大統領選後にユーロが一気に上昇したのは、投資家がいかに不安だったかの表れだとアナリストたちは言う。クレディ・アグリコル銀行の外国為替部ディレクター、斉藤裕司氏は「市場は当初、予想より強く反応した。つまり大勢が投票の前には警戒を強めていたということだ」と説明する。
パリの金融調査コンサルタント会社オピマのオクタビオ・マレンツィ最高経営責任者(CEO)は、「法人税を引き下げ、企業の経営負担を引き下げると公約を掲げるマクロンは市場を安心させるだろう。基本的に、マクロンは従来の国のあり方の継続を意味する」と話す。
ロンドンの証券会社シティ・インデックスのリサーチディレクター、キャスリーン・ブルックスさんも同意見で、第1回投票の結果を市場が好感した理由は2つあると話す。
「第一に、マクロンは政治的に安定した中道派の候補だ。フランスのオバマのようなもので(中略)安心できる候補とみられている。第二に、マリーヌ・ル・ペンが破壊したいEUとユーロの未来が、この結果で前より盤石になった」
投資銀行出身のマクロン氏はフランソワ・オランド大統領の下で経済相を務めた後、政権を離れて新党を立ち上げた。議員経験がないなど政治経験は少ないながらも、各種世論調査は5月7日の決選投票ではル・ペン氏を抑えて当選するものと予想している。
オランダの銀行ラボバンクの金利戦略担当リチャード・マグアイヤ氏は、「中道派の有権者はこれでマクロンのもとに集まるので、ル・ペンは大統領になれないというのが大方の考え方だ。つまりこれはきわめて主流派寄りの、親EU的な結果になるとみられている」と話す。
<フランス大統領選第1回投票の得票率(投票率78.69%)>
第1回投票で敗れたフランソワ・フィヨン元首相は、すでにマクロン氏支持を表明。アラン・ジュペ元首相などフランス政界の重鎮も、次々とマクロン氏の支持に回っている。
一方でラボバンクのマグワイヤ氏は、英国のブレグジット投票とドナルド・トランプ米大統領が当選した後だけに、今から結果を決めつけるべきではないと苦言する。
減税と支出削減を掲げるマクロン氏に対して、ル・ペン氏は雇用拡大と安全保障強化、移民受け入れ削減を主張し、イスラム過激主義の脅威を強調している。