川崎で始まった挑戦――。見事に期待に応えたのは郡司浩平(26、左)だった。右手を力強く突き上げ、ファンの声援に応えた。決勝は前で奮闘した渡辺雄太(22)の逃げも光っていた。
がっちり握手する2人が、南関の新しい山脈を築いていく。郡司は「雄太が粘らせないように駆けてくれたし、ホームで誰か来るかなと思っていたけど、しっかり踏んでいた」。後は郡司が落ち着いて対処。3番手の小原大樹(28)もビッチリ内を締めてラインの仕事を完成させた。
「内を見たら小原さんが締めてくれていてありがたかった。完全にラインの力ですね。前で頑張ってきて、またこうして雄太のような下の選手が出てきている。ボクももっと頑張らないといけないですね(笑い)。ウィナーズカップは取れちゃった、という感じだったけど、今回は地元でもあり、期待もされていた。勝ちにいって勝てたのでうれしさはまた違いますね」
地元ファンの声援は大きく郡司を包んでいた。ナイター開催の記念で、今回は平日(火曜日)の決勝戦。ホームでレースを見ていたが、目立っていたのはスーツ姿の人が多かったということだ。
開催は全体に天候に恵まれず、また売り上げも目標の50億円には遠く及ばなかった(41億5280万8900円、総入場者数=10981人)。ただし、今開催は元々、売り上げは厳しいだろうとの観測であり、売り上げではなく新しいファン層の開拓が主眼だった。ひとつの方向性は見えたのではないだろうか。
ここをスタート地点として競輪界は何を見すえるべきか、だ。問題点を解消できれば、確実に前進できる状況と前を向けばよい。
ただ無念と思えるのは、電話、ネット投票に混乱したファンが多かったことだ。6日午後に公式HPがリニューアルされ、投票にたどり着けなかったファンが発生してしまっていた。11日の午前、お世話になった伝説の記者(70歳くらい)から久しぶりに電話があった。
「どうやって投票すればいいのか分からなくてよ、教えてもらえないか。この何日かはあきらめちゃったけど、やっぱりそうもいかねんだよな(笑い)。もうオレなんか、ログインとか言われると分からなくなってよ~。問い合わせの部署に電話をかけてもつながらないし…」
ちょうど4月中に会おうと計画していたところなので、その時に買えるようにできればと思うが、こうしたケースは全国で起こっていたようだ。リニューアルというのは、その後の改善を伴うものだが、この川崎ナイター記念の直前過ぎたのはリスクだった。
SNSなどを見ても、ダイジェストが見られない、投票が分からないという悲鳴がちらほら…。まずは戸惑っているファンのために、リニューアル後、ファンから上がった声を吸い上げて使いやすいものに素早く変更していくことが重要だ。ファンだけでなく、記者、そして選手も情報収集の不備にすでに泣いている。
正確で、深い情報を記者は提供できるように心がけているが、うろ覚えでは書けないし、締め切り時間もある中、問い合わせることは無理だ。情報の提供の面でも改善が求められる。
今回の売り上げのみを見てナイター記念の失敗という判断はできない。もし、3年後、5年後と同じような状況なら、失敗なのだと判断することも重要になってくるだろう。だが、昼間のファン層だけを頼っていては、10年後、20年後は明らかに厳しい。ナイターの時間帯でのファン層を生み出さなければ、先は望めない。
現在高齢のファンにはナイター記念はきつい…というのも事実だろう。土日であるとか、ナイターは平日に特化するとか、時間帯を変えることも視野に入れていいだろう。ある意味、これだけの材料があるので、解決に向かうことをガンガンやればよいのだ。