初詣や結婚式、七五三、豆まきといったおめでたい行事で私たちの身近にある神社ですが、お葬式にも「神道(しんとう)式」があることをあまり知らない人も多いのではないでしょうか。


身内の方やご友人が亡くなられた時、神道式で葬儀を執り行うことになったら、どんな葬儀になるのか想像もつかない、あるいは不安に思うはずです。

どのような流れになって、どのようなことに注意したらいいのでしょうか。


私たちが普段から慣れている「仏式」とどのようなところが違っているのかなど、神道のお葬式に出席するにあたって、困らないように流れやマナーなどをご紹介します。

さらに、喪主になった場合の気になる費用についても、参考にしてみてください。


-- この記事の目次 --

1.神道(しんとう)とは

2.神道式葬式と仏式葬式との違いは?

3.神道での葬儀の流れ

4.神道での葬儀の儀式のやり方

5.知っておきたい神道での葬式マナー

6.神道での葬式費用について

まとめ

1.神道(しんとう)とは


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神道は日本固有の宗教です。

しかし、神道という名前の宗教は、もともとありませんでした。

ちょうど聖徳太子の時代6世紀ごろに中国から「仏教」が伝来し、それと区別するために、従来から日本にあった信仰・宗教を便宜的に「神道」と名付けたことによるものです。

仏教、キリスト教、イスラム教といった宗教には、宗教として広く伝えるためや後世に伝えるための「経典」「聖書」「コーラン」が整っています。

しかし、日本の土着宗教である神道は、こういった目に見えるような経典はありません。

さらに宗教ではおなじみの布教活動も行いません。

「伝説」や「言い伝え」があるだけです。

そのため、その概念はとてもわかりにくく、外国人に説明しても理解されない部分もたくさんあります。

実際、日本人である私たちにとっても、「儀式」や「慣習」としての神社は身近にあっても、宗教となるとよく分からないという人も多いのではないでしょうか。

1.1 神道と日本人

神道とは、日本固有に存在するさまざまな神様を信仰する多神教です。

その歴史は古く、卑弥呼以前の太古から起源していると言われています。

日本人の自然観と先祖崇拝の念が核となり私たちの生活に根付いています。

神道と他の宗教の違い。

それは他の宗教がひとつの神を崇めるのに対し、神道では八百万(やおよろず)の神を崇める点にあります。

神道では偉業を成し遂げた祖先たちだけでなく、木や石、川や山に、さらには普段使っている器などにさえ「神」を見出すのです。

たとえば、使わなくなった「針」の神様を祀る「針供養」や人形に宿った魂を鎮めるために行う「人形供養」もそれぞれの神様を祀ったものです。

山開き、海開きといった行事も、山の神様、海の神様に祈りをささげて、事故などがないようにお願いする儀式です。

つまり日本人の心の中には、ひとつの絶対神ではなく大いなる自然に感謝し、その自然は、恵みももたらすが、災いももたらす畏れ多いものが神なのだということを子々孫々まで伝えるための宗教といっても過言ではありません。

そして、自然や身の回りのものと共存することを信仰として体系化されたのが神道なのです。

 

1.2 神道と仏教の違い

神道と仏教の大きな違いは仏教が「普遍宗教」であるのに対して神道が「民族宗教」であるところです。

普遍宗教である仏教には経典があり「教え」があります。

その教えを信じることで、人種や国を超えて、言葉や環境が違っても誰でも信者になることができます。

しかし民族宗教である神道では、明確な「経典」というものがありません。

そのため言葉や環境が壁となって布教することはできませんから、神道がほかの国に拡がることはありませんでした。

その一方で、昔から神道は私たちの生活にとって身近なものでした。

お正月や七五三、合格祈願、厄払いなど行事として、あるいは心のより所として神社はありました。

仏教とは違った面もありますが、日本に根付いた仏教は、長い間に神道の影響を大きく受けてきました。

たとえば、仏教では死者は、仏さまのところに行って成仏します。

しかし、私たちは仏壇に対して、仏様に祈るというよりも「おじいちゃん」「おばあちゃん」に祈るということをしていませんか。

それは、祖先が私たちを見守ってくれているという「神道」に基づく考え方です。

このように本場の仏教徒の人が聞いたら驚くような日本独特の風習や仏教に対する考え方があります。

これは長い間、土着の「神道」とその時の政権が利用した「仏教」がうまい具合に融合し、さらに庶民にとって受け入れやすいように改変されながら現代の仏教が確立されたといってもいいでしょう。

 

1.3 神道における葬式の意味とは

仏教では、故人はその信仰によって極楽浄土に行けることになっています。

仏様のもとで安らかに暮らせるため、さまざまな煩悩にまみれた現世からは切り離されたものとなります。

そして年に1回、お盆にはその魂は家族のもとに帰ってくるといわれています。

しかし、神道の場合には故人を極楽浄土に送るものではありません。

亡くなった人には、死んでもまだ役割があるのです。

神道の考え方では、故人には家の守り神になってもらわなくてはなりません。

神道では、人は神によってこの世に生を受け、この世で役割を終えると、また神のもとに帰って、子孫を見守るとされています。

そのための儀式が神道の葬式なのです。

家に神棚のある人ならわかるかもしれませんが、日本の神様というのは漠然としています。

なぜなら、ひとつの姿ではなくいくつもの集合体であるからです。

その集合体の中に含まれるのが「御先祖様」であり、神道の葬式の真髄といってもいいでしょう。

1.4 なぜ神道での葬式は少ないのか

現在、日本で執り行われる葬儀のうち、94%が仏式で、神道式で行われるのはわずか2%だといわれています。

それはなぜでしょう。

神社では、結婚式や七五三、赤ちゃんが生まれればお七夜など、「生」に関する身近な行事がたくさんあります。

ところが「死」にまつわる「葬儀」だけは、神社で行われることはほとんどありません。

それは、神社はあくまでも神様のいらっしゃるところであり、神の領域に「死」という穢(けが)れを持ち込むことはよくないとされているからです。

そのため「おめでたいこと」は神社で、「死にまつわること」はお寺でという図式が出来上がって現在に至っています。

もうひとつの神道での葬式が少ない理由としては、江戸時代に行われた寺請(てらうけ)制度、またの名を檀家(だんか)制度の影響です。

これは幕府がキリスト教を排除する目的で作った制度です。

「すべての人は寺院の檀家となり、寺院から寺請証文を受け取ること」を強要。

それは、神社の神職であっても例外ではありませんでした。

お寺では、自分のところの檀家からお布施をもらうかわりに、葬儀や法要の一切を行って、檀家の管理という仕事を任されることとなりました。

その流れが、戸籍が作られた明治以降も続いており、葬式=仏式となったのです。

2.神道式葬式と仏式葬式との違いは?


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神道式葬式と仏式葬式には、さまざま点で違いがあります。

その中でも大きな違いは、仏式ではお寺で葬式をしますが、神道では神社で葬式は執り行われないという点です。

その他にも気をつけたいことがあります。

2.1 読経は祝詞(のりと)

仏式の葬儀では僧侶がお経を唱えてくれます。

しかし神式では祝詞を唱えることになります。

お経では故人の「冥福」を祈る、あるいは冥途の道を記すといった内容になります。

つまり、故人が迷うことなくお釈迦様のところに行けるように唱えるのがお経です。

神道の祝詞の場合は、子孫の繁栄を祈る内容になります。

これは、神道では、人は死んだら家の守り神となり子孫を守る役割を担うという意味合いが強いからです。

また祝詞には、故人の実績や人柄が盛り込まれた内容となっています。

そのため、どちらかというと祝詞はお経よりも悲壮感があまり感じられません。

「祝」という文字が表すように、神道では人の死は悲しみではなく、家を見守る神様がひとり増えたのだという考え方です。

そのため葬儀の祝詞を聞いているとカラッとしていて、心が晴れてくるようだという人も多いようです。

2.2 焼香と線香はない

仏式では必ず焼香と線香は欠かせません。

仏式での線香は、霊が迷わないように仏さまのところまで行けるようにするといった意味があります。

また、お線香の煙は、死者が仏さまのところまでたどり着く7日間の「食料」であるともいわれています。

しかし、神式では当然のことながら焼香と線香は使用しません。

神道では、玉串奉奠(たまぐしほうてん)と言われる木を使います。

玉串とは、榊(さかき)の小枝に紙垂(しで)をつけたもので、この玉串に心を託して、神、すなわち故人に捧げるという意味が込められています。

2.3 神社での葬儀はしない

仏式では、お寺で葬儀を執り行うことも多いと思います。

これは、もともとお寺の本堂自体が故人を供養する場として作られているからです。

日本において、神道に比べて後発の仏教は、なんとかして日本での布教を成功させなくてはなりませんでした。

そこで注目したのが「葬儀」でした。

それまで神道で葬式をおこなえるのは身分の高い公家ばかりだったからです。

それまでの庶民の葬儀は「捨て置き」同然のものでした。

そこにありがたいお坊さんが仏様のもとに故人を送り出してくれるという話に皆飛びついたのです。

こうした歴史からもわかるように神社での葬式はタブー視され、神社は神がいらっしゃる神聖な場として、死という穢れは持ち込まないことになっています。

そのため神道の斎場は通常、自宅か貸しホールなどで神主を招いての葬式になります。

2.4 戒名は諡(おくりな)

仏教の場合、故人は仏門に入ったときの呼び名として「戒名」を授かります。

神道では戒名の代わりに「諡」を授かります。

諡は、故人の名前が先にかかれ、そのあとに生前の功績や亡くなる前の尊称を書きます。

なぜなら、生前使っている名前は、神様と親から授かった大切なものという考えだからです。

戒名のように生前とは異なる名前が付けられることもありますが、多くは氏名の下に「~之霊」「~命」「~命霊」をつける場合がほとんどです。

神社によっては大人の男性の場合の諡は「大人(うし)」とつけられます。

これは支配者という意味を指す言葉で、男性に対する尊称として使われるものです。

大人の女性の場合の諡は「刀自(とじ)」とつけられます。

これは戸口を支配するという意味を示し、そこから転じて主婦や女性を示す尊称として使われるものです。

また厳密には幼児の男性は「稚郎子(わかいらつこ)」、女性は「稚郎女(わかいらつめ)」、少年の男性は「郎子(いらつこ)」女性は「郎女(いらつめ)」、青年の男性は「彦」女性は「姫」、老年の男性は「翁(おきな)」女性は「媼(おうな)」、これらの諡の後に「命(みこと)」をつけます。

また、仏教のように戒名の位によって料金の高低ということはありません。

2.5 七日法要はしない

仏式では初七日や四十九日といった法要が続きますが、神式ではありません。

葬儀火葬で終わりです。

そのあと身内だけの会食といった流れになるかもしれませんが、仏式でいう精進落としはありません。

神道では亡くなった次の日から翌日祭、十日祭、二十日祭、三十日祭、四十日祭と続きます。

十日祭が仏式でいうところの七日法要に当たります。

そして五十日祭を迎え、この日が忌明けとなり、神官、親族、知人などを招いて法要を営みます。

それから百日目、一年目の命日(一年祭)、満三年目の命日(三年祭)、満五年目(五年祭)、満十年目(十年祭)、満五十年目(五十年祭)と節目が続きます。

精進落としや七日法要はありませんが、きちんと神道の法要を行うとすればさまざまな「祭」があることを念頭においておきましょう。

3.神道での葬式の流れ


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神道では焼香もなく、使う道具も違います。

また神道お葬式の流れは、仏式とはかなり違っているので、おおよその流れをつかんでおけば、まごつかなくて済みます。
 

3.1 帰幽奉告(きゆうほうこく)

臨終の後、神棚や祖霊舎(それいしゃ)に故人の死を奉告します。

そして神棚や祖霊舎の扉を閉じて白い紙を貼り封印します。

これは五十日祭の忌明けまでそのままにしておきます。

3.2 枕直しの儀

ちょうど仏教での枕飾りのように米や水、酒などを供えて御霊を弔う儀式です。

死亡の直後、遺体を部屋に安置し、北枕に寝かせて白い布で顔を覆い、屏風を立てます。

また、守り刀を置き、灯火に点火します。

遺体の前に白木八足の案を置き、生前好きだった食べ物や洗米・塩・水を供えます。

3.3 納棺の儀

遺体を棺に納める儀式です。

遺体を清め、新しい布団と共に入棺します。

その後、柩を表座敷の間へ移し、柩前を装飾してお供え物をして、礼拝をします。

故人が愛用していたもの等を入れてフタをします。

棺を白い布で覆った後、全員で拝礼します。

3.4 通夜祭・遷霊祭儀

仏式のお通夜にあたるのが通夜祭です。

葬儀を行なうまでの間、遺体のある場所で生前同様の礼を尽くして手厚く奉仕する大切な儀式です。

神主によって祝詞を奏上し、参列者は玉串を持って拝礼します。

遷霊祭は、出棺前に故人の霊を霊璽(れいじ)に遷す儀式で「みたまうつし」とも言われ、夜間に行うのが本式です。

3.5 葬場祭の儀

仏式での葬儀・告別式に当たります。

神道の葬式の中でも最も重要な儀式で弔辞の奉呈、祭詞奏上、玉串奉奠などが行われます。

故人との最後のお別れになります。

実際の流れとしては、

(1)
楽士、参列者、会葬者、関係者が着。神主である斎主、副斎主、係員が着席。

次いで喪主、家族、親族が着席の順で着席します。

(2) 斎主が一拝し、一同がこれにならいます。

(3) 係員が饌(食物)を供え、次に串の先に赤い紙を挟んだ幣帛(へいはく)を供えます。

(4) 斎主が祭詞を申し上げる。

この間参列者は、軽く頭を下げておきます。

(5) 故人を追悼する誄歌(しのびうた)を奉奏します。

誄詞、弔辞、弔詩歌、弔電等を奏上する場合は誄歌奉奏の次に行います。

(6) 斎主が玉串拝礼します。

(7) 喪主、家族、親族の順番に玉串拝礼します。

(8) 参列者、会葬者、関係者が玉串拝礼します。

(9) 斎主一拝して、一同これにならいます。

(10) 退出します。

となります。

 

3.6 火葬祭の儀

火葬の前に火葬場で行われます。

神主が祭祀を奏上し、参列者は玉串を奉って礼拝します。

その後荼毘に付されます。

3.7 埋葬祭の儀

火葬の後に、そのまま墓地へ行き埋葬する時に埋葬祭が行なわれます。

墓地の準備が整わなかったり、時間的な余裕がない場合など遺骨を家に持ち帰る場合もあります。

3.8 帰家祭の儀

玄関で手水をおこない、お祓いをします。

その後、新しく用意した祭壇で霊璽や遺影を飾ったり、供物が供えられます。

神主が祭祀を奉上し、玉串奉奠をおこなって儀式が終了します。

4.神道での葬式の儀式のやり方


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神道では、葬式のなかでの儀式として独特なものがあります。

それぞれあまりなじみのない手順かもしれません。

当日あわてないように、頭に入れておくと安心です。

4.1 神棚封じ

神棚封じとは、神棚に白い紙を貼って「死」という穢(けがれ)をお社に入れないようにする儀式です。

穢というのは決して「汚れ」という意味ではありません。

大切な人がいなくなってしまうことで、遺族は嘆き悲しみ、そして気力も木が枯れてしまうようになる「木枯」が語源になっています。

古くは、門や玄関に「忌中札」を貼り、玄関は開けっ放しにしておくのがしきたりになっていました。

封じ方は神棚の扉を閉じ、白い半紙で神棚の正面を隠します。

白い半紙はしめ縄に、ピンなどは使わずにテープなどで張り付けて固定します。

神棚封じの間は、お神酒などの供え物はやめて、神棚の扉を閉じ、礼拝もしないようにします。

神棚封じは、五十日祭である忌明けを終えてから、白い半紙を取り除き封印を解きます。

4.2 手水(ちょうず)の儀

手水の儀とは、神道の葬儀の時に、身を清めるために行うものです。

通夜式、納棺の儀式などの前に、式場に入場する際に行ないます。

神社に行くと必ず、手を洗う場所があります。

初詣に行った時にも詣でる前に手を洗ったり、口をすすいだりしますが、これと同じように、葬儀の前にも身を清めるという意味で手水の儀を行います。

葬儀では、桶からひしゃくに水を汲むことになります。

<手水の手順>

(1) 左手・右手の順で手を洗います。

(2) 左手で口をすすぎます。

(3) 懐紙で手を拭きます。

4.3 玉串奉奠

玉串奉奠は、仏式でいうところのお焼香に当たるものです。

神道独特の作法ですので、葬儀に出席する前に一度練習しておいたほうがいいかもしれません。

(1) 神職の前に並び自分の番がきたら遺族の方々に一礼。

次に神主に対しても礼を行います。

(2) 玉串を受け取るときには、先ず右手で茎の部分を取ります。

次に左手で葉の部分を受け取ります。

そのとき、右手は手の甲が上にくるようにつかみ、左手は玉串を支えるように手のひらを上に向けて受け取ります。

このとき玉串と体は水平状態です。

(3) 神主がその場を離れたら、受け取った玉串を胸元あたりに持って行きます。

祭壇に向かって一礼してから玉串案(玉串が置かれた台)の方へ進んで行きます。

(4) 玉串案の前まで来たらもう一度礼を行います。

次に、右手の甲の部分を下に返しながら右回りに90度向きを変えます。

ちょうと茎の部分が胸元に来るようにします。

そして、左手を茎の方にずらして持ち、右手で玉串の中程を支える様に持って更に右回りに半回転させます。

玉串の茎の方が祭壇に向いた状態になるので、この時点で玉串案にそっと捧げます。

(5) 玉串を奉奠したら、そのまま1歩下がり2回礼2拍手1礼を行います。

その後、神職と遺族に一礼してから自席に戻ります。

このとき注意しなければならないのは拍手をする際、決して音を立てないように行うということです。

初詣でお詣りする時の二礼二拍手一礼は同じですが、葬式の場合は「忍び手」といって音を立てずに拍手を打つことが決められています。

4.4お墓

神道ではお墓でも同じく線香は用いません。

代わりに玉串を奉奠する際の八足台を用意します。

お墓は「奥都城(おくつき)」と呼ばれ「奥深い所にあり」「外部から遮断された境域」という意味でもあります。

家には先祖の霊を祭るための欅や檜で造られた神棚を祀ります。

仏教では仏壇にあたりますが、本来仏壇とは 仏像を祭るためのものであるのに対して、神棚は祖先の霊を家の守護神として祭るという点に違いがあります。

5.知っておきたい神道での葬式マナー


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いつも仏式で慣れているため、神道での葬式に出席するとなると、いろいろ困ったことも出てくるかもしれません。

ここでは、神道の葬式に出席する時の最低のマナーをご紹介します。

 

5.1 数珠は?

仏教では、定番の数珠ですが神道では使いません。

数珠はもともと、念仏の回数を記憶するためのものとして使われていました。

そのため、念珠とも呼ばれています。

しかし神道の場合、祭祀を奉じるのは神主の役割であり、参列者が奉じてはならないものと決められています。

念仏ももちろん言いませんから、数珠を持つ意味もありません。

 

5.2 服装は?

服装は、とくに神道に限ったものはありません。

仏式と同じく喪服または、男性ならダークスーツ、女性なら色・デザインの地味なスーツかワンピースを着用しましょう。

男女ともに色は黒で、靴下やストッキング、バック靴もできるだけ黒で統一したほうがいいでしょう。

アクセサリーも結婚・婚約指輪、真珠のネックレス以外は極力着用しないように注意しましょう。

 

5.3 お香典は?

神道の場合にもお香典には特に仏式との違いはありません。

お香典の金額もお香典返しをしていくことも通常同じです。

ただし、神道の場合お香典の包の表書きに少し注意しなくてはなりません。

「御霊前」「御榊料」「御神饌料」「玉串料」「御神前」などと書きます。

「御霊前」は神道でも使用することができますので、無難です。

表書きは、仏式と同じように薄墨で書くのがよいでしょう。

また神道の場合は、仏教によくある蓮の花の絵柄の不祝儀袋は使わないので注意してください。

水引より上に「御玉串料」「御榊料」「御霊前」などの表書きをして、水引の下中央部分に、自分の名前をフルネームで書きます。

 

5.4 弔電は?

弔電でよくやってしまいがちなのが「~のご冥福をお祈りします」「成仏されることを」「ご供養になれば」などという言葉です。

死に対する考え方が仏教と神道では異なっており、故人は仏のもとに行くわけではなく、家の守り神になるので「御冥福」「成仏」「供養」という言葉は神道においてはタブーとなります。

弔電を送る際には、相手の宗教が「神道」であることを伝えておくと、それに見合った文面を提案してくれるので、失敗がなくて安心できます。

6.神道での葬式費用について


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日本人の葬儀の平均が金額は200万円だといわれています。

そのようななか、神道での葬式費用が仏式に比べると「安い」ということで、神道の葬式を考えている人も多くなっているといいます。

その実態を調べてみました。

6.1 神道での葬式にかかる費用は

神式の葬儀費用が安いとは言っても、最低でも3050万円ほどを考えておきましょう。

できるだけ安く抑えたい場合には公営の斎場を利用するようにします。

神道で行う葬式費用も仏式で行う葬式費用も、基本的には何も変わりません。

通夜・葬儀での飲食代、供養品、霊柩車代なども同じようにかかります。

また仏式でも神道でも祭壇などを豪華にしようと思えば、費用の上限はないと考えるべきでしょう。

逆に簡素に使用と思えば、宗旨に関わらず費用を掛けずに執り行えるのがお葬式です。

仏式と違う費用が出るのが「玉串代です。

神主用の大玉串が23本、遺族や親族、一般会葬者用の小玉串が人数分必要になります。

小玉串で1300円くらいです。

100人の会葬者がいれば、3万円になります。

玉串は仏式でいうお焼香に当たりますが、仏式のお焼香・お線香の費用は葬儀社に依頼すればセット価格の中に入っているので、とくに別途料金としては組み込まれていません。

しかし、神道式のお葬式では参列者の数によって玉串の数も違ってきます。

  神道の祭壇には、祭壇にさまざまな供物が必要となります。

その種類も野菜、果物、体、干物、お餅、お菓子などです。

それらの費用もかかります。

また、神道であっても神主さんへのお礼は必要です。

お布施に比べてかなり安くなるといわれていますが、神道の場合、斎主と祭官の二人で葬儀を執り行うことがほとんどです。

そのため二人分のお礼を出すことになります。

 

6.2 神道での葬式が安いといわれる理由は

神道での葬式が安いといわれている最大の理由が「お布施」と「戒名」です。

日本での仏式の普及が「寺請制度」にあったことはご説明しました。

お寺の役割としては、檀家に対してさまざまな面での管理が必要となりました。

そのため管理、維持していくのにも多くの「お布施」が必要でした。

さらに、戒名です。

戒名は本来ならば仏門に入ったものしかもらえない名前だったのです。

しかし、いつの頃からか檀家として生前にお寺に尽くしてくれた人たちにも、仏の弟子としての名前を与えるようになりました。

さらに時代は下り、檀家制度が崩壊してお寺の収入が激減してしまった影響もあり、「戒名料」という名目によって、お寺の維持システムが確立されていったのです。

このようにお寺を維持するためのお布施や戒名料を必要としないため、神道の葬式は仏式よりも安いといわれています。

実際、仏式の戒名に当たる「諡」には費用はかからず神職に渡すお礼の中に含まれます。

そういったことが神道での葬式が安いと言われる根拠になったと思われます。

 

6.3 本当に神道での葬式が安いのか

「葬式仏教」という言葉があります。

普段は仏教徒でもないのに、儀式に過ぎない葬式を独占的に行うことにより、お布施や戒名料など不当、かつ不明瞭な利益を上げているのではないかという「皮肉」を込めた呼び方だそうです。

なぜ普段から付き合いのない、あるいはまったく関係のないお寺に対して、高額なお布施を渡さなければならないのか。

さらに信徒でもないのに、高額な戒名料を払わなくてはならないのかといった疑問が膨れ上がってきたということでしょうか。

しかし、神道での葬式が仏式の葬式に比べて安いということは決してありません。

簡素にしようと思えばそれなりの金額で準備ができます。

ただ安いからという理由だけで神道を選ぶというのは、いかがなものでしょう。

菩提寺があったり、生前の本人の意向があった場合などは、仏式で行ったほうが悔いが残りません。

また、最近では宗旨にこだわらずに音楽葬やお花葬など故人が好きだったものをメインテーマにして送り出そうという葬儀も増えてきました。

形式や費用にこだわらず、身の丈に合ったその人らしい葬儀を行うことが見直されているということでしょう。

まとめ


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お祝い事や節目節目、あるいは初詣や厄除けなどで、私たちの生活に神道の行事は溶け込んでいます。

しかし、お葬式となるとあまりなじみがなく、神道の葬式に出席することで、あらためて日本独自の宗教であることや、神道の考え方などを知きっかけになるのではないでしょうか。

神道の死生観は、祖先を自分たちの守り神として崇敬することです。

亡くなった人は、家族を見守る御霊(みたま)となって、先祖の神々の仲間入りをしたと考えます。

家を守ってくれているのが、代々のご先祖様であることを思い出して、感謝とともにお葬式に出席しましょう。