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この「邦訳の刊行が期待される洋書を紹介しまくることにする」は、私的ゴールデンウィーク恒例企画だった。
ワタシは昨年末でサイト更新を停止しているが、今回まではこの企画をやったほうがおさまりがよいのではないかと思った次第である。これは以前にも書いたことがあるが、洋書を紹介してもまったくアフィリエイト収入が増えないし、紹介エントリ自体あまり注目されない。この企画は、そうしたものの供養という側面もある。
通例であれば、ゴールデンウィーク中に公開していた企画だが、今回はそれより少し早めに公開させてもらう。
これをやるのは今年が最後だろうし、ブログの更新停止状態は変わらないが、現在 WirelessWire 連載の電子書籍化の作業を行っており、もう少ししたらその告知に再びこのブログを利用させてもらうことになるだろう。
それでは邦訳の刊行が期待される洋書を紹介させてもらうが、ワタシの調べが足らず、既に邦訳が出ていたら、はてなブックマークや Twitter 経由で教えてください。
この本は2016年版に入れるべきだった本だが、なぜか漏れていた。ありがたいことにというべきか、残念ながらというべきかまだ邦訳が出ていないので、2017年版に入れさせてもらう。
『インフォメーション』に続き、本書も評判も良いので、じきに邦訳も出るだろうが。
原書もまだ出ていないので、当然ながら邦訳もまだである。この本を取り上げたときは、2017年9月刊行予定だったが、さらに少し後になっている。
彼の前著は WirelessWire 連載の記念すべき1回目「インターネットによる中流階級の破壊をマイクロペイメントが救うか」で取り上げているが、「バーチャルリアリティの父」がそのテーマについて書くというなら、邦訳も原書とそうスパンをおかずに出るのではないか。
Dawn of the New Everything: Encounters With Reality and Virtual Reality
Dawn of the New Everything: A Journey Through Virtual Reality
Dawn of the New Everything: A Journey Through Virtual Reality
原書刊行から少し時間が経ってしまい、最新情報ではなくなってしまったが、IoT のセキュリティ問題を実地的に扱った本が出るべきだと思うのよね。
Abusing the Internet of Things: Blackouts, Freakouts, and Stakeouts
Abusing the Internet of Things: Blackouts, Freakouts, and Stakeouts
ビル・ゲイツも推すこの本の邦訳が出ていない理由が分からない。現在、鋭意制作中であることを願うばかりである。
The Master Algorithm: How the Quest for the Ultimate Learning Machine Will Remake Our World
The Master Algorithm: How the Quest for the Ultimate Learning Machine Will Remake Our World
ブログで紹介したときと、書名が変わっているね。紙版に比べ、電子書籍がずっと安いのに注意。
やはり、Maker Media を立ち上げた Dale Dougherty が著者に名前を連ねているのが気になる。
Maker City: A Practical Guide to Reinventing Our Cities
Maker City: A Practical Guide for Reinventing American Cities
TED 講演を見ると、本に対する期待値も高まる。一時期邦訳が滞っていたようにも感じた彼の本だが、これは今年中に邦訳が出るんじゃないかな。
Wonderland: How Play Made the Modern World
Wonderland: How Play Made the Modern World
『ツイッター創業物語 金と権力、友情、そして裏切り』(asin:4532319331)で一躍名をあげたニック・ビルトンの新刊とあれば楽しみで、ちょうど本文が公開されるあたりで刊行予定だが、今年中に邦訳出るんじゃないかな。題材のアングラ感と日本人にとってのなじみの薄さが不安要素ではあるが。
そういえば今年になってこの事件の「第三の悪徳捜査官」の存在が報じられたが、そのあたりにも言及はあるのか。
本書についての詳しい情報は、原書のサポートサイトをあたってくだされ。
American Kingpin: The Epic Hunt for the Criminal Mastermind Behind the Silk Road
American Kingpin: The Epic Hunt for the Criminal Mastermind Behind the Silk Road
これはすごく面白そうな題材なので、邦訳を期待したいところである。
インタビュー対象の人選もロックだけでなく、ドクター・ドレーやファレル・ウィリアムスの母親なども含んでいるのはよいと思う。
From Cradle to Stage: Stories from the Mothers Who Rocked and Raised Rock Stars
From Cradle to Stage: Stories from the Mothers Who Rocked and Raised Rock Stars (English Edition)
正直、新刊のタイトルだけ聞いたときは、「今更アテンションエコノミー話かい?」とちょっと訝しく思ったものだが、未翻訳ブックレビューを読むと、なるほど、これはアメリカの大統領選挙後に Facebook が責められる要因となったフェイクニュース、ポスト真実の問題まで射程範囲とした本だったかと納得する。
これは前作のときよりは短いスパンで邦訳が出るんじゃないかね。
The Attention Merchants: The Epic Scramble to Get Inside Our Heads
The Attention Merchants: The Epic Scramble to Get Inside Our Heads
何より、「ランサムウェア」がズバリ書名になっていることに驚いたものだが、感染までに関しては他のコンピュータウィルス、マルウェアなどの類との違いはないという理解なのだが、それでランサムウェア独自の本になっているんだろうかと不思議に思っているところはあるので、これは是非オライリー・ジャパンに邦訳をお願いしたいところである。
Ransomware: Defending Against Digital Extortion
Ransomware: Defending Against Digital Extortion
ルー・リードについては、『ワイルド・サイドの歩き方 ルー・リード伝』(asin:4907435614)という決定版といえる伝記本が出ているので(二年前に買って、実はまだ読み通せていない……)、これの邦訳は難しいでしょうな。
しかし、暴露本的伝記が出て、おそらくそのネタ元であろう最初の奥さんの回顧録が出たとなれば、ファンとしては複雑な気持ちにもなる。ここはひとつ、晩年のおよそ20年をともに歩んだローリー・アンダーソンに回顧録を書いてほしいところだが、それは無理な相談か。
ルー・リードというと、彼のパーソナル・アーカイブがニューヨーク公共図書館入りしたとのことだが、観に行きたいものだ。
Perfect Day: An Intimate Portrait Of Life With Lou Reed
Perfect Day: An Intimate Portrait Of Life With Lou Reed (English Edition)
久しぶりに冒険野郎マクガイバーの名前を見て盛り上がってしまったが、なんで今頃になってマクガイバーの名前を冠した本を出すのだろうと思ったら、Lee David Zlotoff はマクガイバーのリブートをもくろんでいたんだね。
その企画がうまくいき、リブート版が日本でも成功すれば、この邦訳を期待……は無理かな。
The Macgyver Secret: Connect to Your Inner Macgyver and Solve Anything
The MacGyver Secret: Connect to Your Inner MacGyver & Solve Anything (English Edition)
この本に収録された写真については、100 Photographs という TIME 内のサイトを見ていただくとよいが、チェ・ゲバラやら 9.11 のときにビルから落下する男やら第二次大戦終結後のキスの写真やらワタシでも知ってる写真が揃っていて、これは邦訳を出す価値がある本だと思うね。
100 Photographs: The Most Influential Images of All Time
ザ・バンドのメンバーで、解散後ロビー・ロバートソンを終生憎んだリヴォン・ヘルムの回顧録は『ザ・バンド 軌跡』(asin:4276234352)として邦訳が出ているので、ロビー・ロバートソンのほうの本も邦訳出てほしいところ。
昨年はラスト・ワルツのライブから40周年のトリビュートツアーがあり、今やメンバーではロビー・ロバートソン以外では唯一生存するガース・ハドソンもゲスト出演している。フルセットライヴ音源を聴いたら、もちろんオリジナルほどではないが、豪華なメンバーによるライブが意外によかった。
この本は実は原書が出るのがおよそ一年後だったりする。この本のことを知ったときは2017年秋刊行の予定で、ブログで取り上げたときは2018年1月になっていて、その後さらにリリース予定が遅れてしまった。いったい何が起きているのか。
(大雑把に書くが)インターネットに対する否定的な論調の本というと、ニコラス・G・カーの本ぐらいしか邦訳されなくなったが、彼の三作目の評価はいかに。
Freedom As a Service: The New Digital Feudalism and the Future of the City
さて、以上が昨年末までにブログで取り上げ済の本で、以下はブログで取り上げ損ねた本、2017年になって存在を知った本などを紹介させてもらおう。
今や MIT メディアラボ所長にして、昨年末のバラク・オバマとの対談も印象深い伊藤穰一と、『クラウドソーシング―みんなのパワーが世界を動かす』(asin:4153200018)の邦訳もあるジェフ・ハウの本が出たとなれば、当然邦訳がすぐ出るやろうと思っていたが、なかなか出ない。なんでだろう?
この本についての情報は、公式サイトをあたってくだされ。
Whiplash: How to Survive Our Faster Future
『ブログスフィア:アメリカ企業を変えた100人のブロガーたち』の邦訳がある二人は、2013年にも共著を出しており、それについては「「文脈の時代」がもたらす強力なサービスの光と影」で取り上げている。で、2014年には『コンテキストの時代―ウェアラブルがもたらす次の10年』(asin:4822250474)として邦訳も出た。
本書はこの二人の三度目の共著となるわけだが、電子出版のみなのに彼らの主張を感じる。今回は副題でズバリ「拡張現実と AI はすべてを変える」と言い切っており、彼らの新しいもの好きは変わってないようだ。
スティーブ・ジョブズのスタンフォード大学での卒業式スピーチ以降、多くの人に知られるようになった Whole Earth Catalog だが、その精神の継承や21世紀版を目指す動きは Worldchanging などいくつかあるが、これもその一つでしょうな。
さすがに邦訳は出ないだろうが、こういうのは気になるね。
Whole Earth Field Guide (MIT Press)
mathbabe ブログの著者として知られ、『データサイエンス講義』(asin:4873117011)の邦訳もある著者だが、この本は高い評価を得て、2016年の全米図書賞ノンフィクション部門にノミネートされた。
ここ数年、ビッグデータは大々的に宣伝されてきた。そして世界の不完全モデルである統計データを分析することで執拗に効率を追求することの危険性が分かってきた。自身もデータ科学者である著者は、雇用から治安維持に至るまであらゆる分野でアルゴリズムに依存することの危険性を伝えている。
ビッグデータの問題点に今すぐ対応を – カスペルスキー公式ブログ
ビッグデータの問題については、ワタシも「ビッグデータの不都合な真実」、アルゴリズム依存の問題は「我々は信頼に足るアルゴリズムを見極められるのか?」などで書いており、彼女の懐疑的な姿勢は現在必要とされていると思うので、邦訳が出ないとまずいと思うわけだ。
Weapons of Math Destruction: How Big Data Increases Inequality and Threatens Democracy
Weapons of Math Destruction: How Big Data Increases Inequality and Threatens Democracy
GPS の発展の歴史をまとめた本ということで、今ではスマホで当たり前のように使っている GPS 機能だが、考えてみればまだ本格的に実用化されて50年程度のテクノロジーなんですな。
地震予測計器と GPS の組み合わせにより大地震の予報ができるという話も面白い。もはや我々の日常生活の根幹をなすテクノロジーについての本なのだが、これは邦訳が出るべき本でしょう。
Pinpoint: How GPS Is Changing Technology, Culture, and Our Minds
正直に告白すると、ワタシがこの本に興味をもったのは、ズバリ書名である。つまり、ルー・リードのアルバム Magic and Loss の名前を引っ張ってくるセンスが嬉しかったからだ。それに「アートとしてのインターネット」という副題も興味をそそる。
著者の Virginia Heffernan は、テクノロジーとカルチャーに強いジャーナリストだが、一方で天地創造説を支持して大変な批判を浴びたりもしている。
Magic and Loss: The Internet as Art
Magic and Loss: The Internet as Art (English Edition)
『法廷に立つ科学: 「法と科学」入門』(asin:4326403047、訳者によるサポートページ)の邦訳が2年前に出ている著者の現時点での新刊である。
『法廷に立つ科学』は、法律と技術の兼ね合い、倫理的な問題を扱ったものだが、新刊のタイトルはズバリ「イノベーションの倫理」であり、やはり新しい技術がもたらす倫理的な問題を扱っている。こういう本は重要だと思うよ。
The Ethics of Invention: Technology and the Human Future
以前、ワタシはウェブのコメント欄を研究した本を紹介したことがあるが、この本の共著者 Whitney Phillips は、ネット上の荒らし(internet trolling)を専門とするヘンな(失礼)研究者で、この人の一冊目の本『This Is Why We Can't Have Nice Things』(asin:0262028948)もそれについての本だった。
もう一人の共著者 Ryan M. Milner は、昨年『The World Made Meme: Public Conversations and Participatory Media』(asin:0262034999)というインターネットミームについての本を出している人だったりする。
その二人が書いた本だが、昨年もアメリカ大統領選挙にからめてインターネットにおける荒らし行為もいろいろと問題になっており、書かれるべくして書かれた本と言えるだろうか。
何より表紙の顔文字だし(そういえば、少し前にこれをロードも使ってたね)、The Ambivalent Internet というタイトルもなんともらしい気がする。
The Ambivalent Internet: Mischief, Oddity, and Antagonism Online
「新たな音楽ビジネスでやっていく方法:忠実なファンを集め、ミュージシャンとしての生計を立てる実践的な情報」というなかなか身も蓋もないタイトルの本だが、ワタシがこの本を知ったのは、独立系ミュージシャンのサバイバルを助ける本物の漢ことデレク・シヴァースが序文を書いているから。『デジタル音楽の行方』の訳者としては、このテーマに興味があるんですね。
そういえば、『デジタル音楽の行方』の著者 David Kusek の『Hack the Music Business: Build Your Own Career』(asin:B00MVACBLS)ですっかりブログで取り上げ損ねたので、こういうミュージシャンサバイバル本も取り上げておこうと思った次第。
著者の Ari Herstand は、プロのミュージシャンにしてネットを含む執筆活動や俳優などマルチに活動している人で、日本語圏でもロケットニュースで【バンドマン必見】現役ミュージシャンが書いた「あなたのライブに誰も来ない7つの理由」が正論すぎてヤバイという記事で彼の文章が取り上げられたことがある。
Joy Division〜New Order 方面については、イアン・カーティスの妻デボラ・カーティスの『タッチング・フロム・ア・ディスタンス―イアン・カーティスとジョイ・ディヴィジョン』(asin:4434082485)、バーナード・サムナーの『ニュー・オーダーとジョイ・ディヴィジョン、 そしてぼく』(asin:4907276400)といった邦訳が出ている。あと、バーナード・サムナーと Electornic で組んでいたジョニー・マーの自伝(asin:4401644239)も出る。
ピーター・フックの本は、マンチェスターのクラブハシエンダについての『ハシエンダ マンチェスター・ムーヴメントの裏側』(asin:4781605818)は出たが、Joy Division について書いた本の邦訳は出なかった。
New Order 時代を扱った本書も、すごく面白そう、というかかなりぶっちゃけてるみたいなので興味があるが、ものすごい分量みたいなので、やはり邦訳は難しいか。
モンティ・パイソンの公式的な本もそれなりにあるが、それでもこういうのが作られるところに偉大さとちゃんとアーカイブを残すことの重要性を痛感する。
写真などもふんだんな本なので、これの邦訳は難しかろうな。
しかし、思えばワタシはモンティ・パイソン再結成公演も Blu-ray を買ったまままだちゃんと観てないし、ジョン・クリーズの自伝もまだ読みきっていないんだよな……。
昨年は英国の EU 離脱に絡めて話題になったり、テリー・ジョーンズの認知症などシリアスな話も伝わってきたが、そういえばこないだ彼の最後の監督作『ミラクル・ニール』を礼儀として観たんだよな。
期待値を思い切り下げていたのでそんなにがっかりしなかったし、ラストのビリー・ワイルダー作品のあの名台詞の流用も、むしろほろりときてしまった。
Monty Python's Flying Circus: Hidden Treasures
アメリカの著名な法学者である著者の本は、近年でも『恐怖の法則: 予防原則を超えて』(asin:4326154357)、『賢い組織は「みんな」で決める:リーダーのための行動科学入門』(asin:4757123558)、『選択しないという選択: ビッグデータで変わる「自由」のかたち』(asin:4326550775)と毎年のように邦訳が出ているので、この新刊にしてもそうなることを期待する。
この新刊が特に気になるのは、書名からして、彼の名前を若いネットワーカーにも知らしめた『インターネットは民主主義の敵か』(asin:4620316601)を思わせるからである。
念のために書いておくと、『インターネットは民主主義の敵か』の原題は『Republic.com』で、ドットコムをハッシュタグに置き換えているところにしろ、「ソーシャルメディア時代の分断された民主主義」という副題も、どうしても『インターネットは民主主義の敵か』を連想させる。
西田亮介さんも「冒頭またしても絶妙な問題設定で嘆息した。読まざるをえない。このあたりが、たぶん抜群にうまい」とのことで、これは邦訳が楽しみな本ですな。
#republic: Divided Democracy in the Age of Social Media
#Republic: Divided Democracy in the Age of Social Media
フランシス・フォード・コッポラ自身が、映画『ゴッドファーザー』サーガの解説本を出していたんだね。カラーページも含め、800ページ近い分量ということで邦訳は難しいか。しかし、これは出てほしいよな。評価も高いようだし。
The Godfather Notebook (English Edition)
さて、ここあたりからまだ原書も未刊行の本が主になる。
ワタシも「初心者向けBitcoinガイド」を訳した Andreas M. Antonopoulos の『Mastering Bitcoin』は、日本語訳がネット上に全文公開され、『ビットコインとブロックチェーン:暗号通貨を支える技術』(asin:4757103670)として紙の本も出た。
その彼のビットコインに関する講演をまとめた本が昨年出ている。
The Internet of Money (English Edition)
そして、今年の秋には、ブロックチェーン技術を利用した分散型アプリケーションプラットフォーム Ethereum についての本を共著で出す。
Mastering Ethereum: Building Smart Contracts and Dapps
Ethereum も昨年ハードなトラブルに見舞われたりしたが、彼の本ならやはり邦訳の価値あるんじゃないだろうか。
フリーソフトウェア/オープンソースソフトウェアの成功の要因を分析した本は、『オープンソースの成功―政治学者が分析するコミュニティの可能性』(asin:4839916586)など既にあるが、この本が面白いのは、著者の Chris Tozzi がハワード大学の歴史を専門にする助教さんであること。歴史学の観点からの分析となると一味違うものになりそうだ。
といっても、ワタシがこの本に興味をもったのは、ジョナサン・ジットレインが序文を書いているから。「インターネットの好ましからざる未来を止め、生成力を保つことはできるのか」で彼の本を取り上げて以来、彼の仕事にはずっと注目し続けているが、いったいいつになったら彼は次の単著を書いてくれるのか……。
For Fun and Profit: A History of the Free and Open Source Software Revolution (History of Computing)
一年近く先に刊行される本の話をしても仕方ないかもしれないが、Brutal Refactoring という言葉、なんか流行りそうじゃないの。
著者の Michael Feathers は、『レガシーコード改善ガイド』(asin:4798116831)の著者として知られる。ワタシも昔、「Cを愛して…」という彼の文章を訳したことがある。
Brutal Refactoring: More Working Effectively with Legacy Code
Andrew Keen のことは、最初の本を「Web 2.0は我々の文化を殺すのか?(その1)、(その2)」で取り上げてから、2冊目、3冊目と本を出すたびに取り上げてきた。
しかし、邦訳は一冊目が『グーグルとウィキペディアとYouTubeに未来はあるのか?―Web2.0によって世界を狂わすシリコンバレーのユートピアンたち』(asin:4901679856)として出たが、2冊目以降は続かなかった。
ということは今回のインターネット批判本も邦訳は出ないのだろうが、逆にいうと本国では一定の客を掴んでいるということか。憎まれっ子世にはばかるとはまさにこのことと言いたくなるが、今度出る新刊については、なんとカズオ・イシグロが推薦の言葉を書いていて、マジかよ〜、となった。
PandoDaily の創始者として知られるサラ・レイシーの本は、一冊目も二冊目もブログで取り上げているが、結局どちらも邦訳は出なかった。
久しぶりの三冊目は、「子宮は機能であってバグじゃない」というタイトルを掲げる、働く女性たちをターゲットとした本のようだ。
テック系をずっと取材してきた彼女にとって、元エンジニアの女性が暴露した上司の度重なるセクハラ行為は、彼女の宿敵である Uber に限った話ではないという認識があるに違いない。
サラ・レイシー自身は新刊について、「私のツイッターが嫌いな人は、この本はもっと嫌いになること請け合い」と宣言しており、挑発的な内容なのは間違いなさそうだ。
A Uterus Is a Feature, Not a Bug: The Working Woman's Guide to Overthrowing the Patriarchy
A Uterus Is a Feature, Not a Bug: The Working Woman's Guide to Overthrowing the Patriarchy
ティム・オライリーと言えば、オライリーメディアの創業者であり、Web 2.0 の提唱者の一人で、テック系の人で名前を知らなければモグリという人だが、電子書籍やエッセイを集めた薄い本を除けば、これが初の単著になるんじゃないか? しかも版元はオライリーメディアでなく Random House だったりする。
書名から推測するに、What’s The Future? ブログ、並びに「『羅生門』としてのUber、そしてシェアエコノミー、ギグエコノミー、オンデマンドエコノミー、1099エコノミー(どれやねん)」で紹介した、Next:Economy カンファレンスで披露した、未来の経済、未来の仕事についての知見をまとめた本になるのではないか。
これは邦訳出るやろうね。あとこの本だけは、どれが本国版かよく分からなかったので、4つリンクを並べる形になってすいません。
WTF?: What's the Future and Why It's Up to Us
WTF?: What's the Future and Why It's Up to Us
WTF: What's the Future and Why It's Up to Us
WTF: What's the Future and Why It's Up to Us
ジョン・ポールフリーというと、「デジタルネイティブ」という言葉の生みの親……と書くと正確ではないかもしれないが、日本ではその関係の認知が大きかった。
その後 WirelessWire の連載で彼の当時の新刊を取り上げようとしながらどうしてもそれができないうちに、その邦訳が『ネット時代の図書館戦略』(asin:4562052848)として出ているのを、刊行から大分経ってから知ったりした。
その申し訳なさというわけではないが、彼の予定されている新刊をあげておきたい。
「安全な空間、勇敢な空間:教育における多様性と自由な表現」というタイトルは、教育の現場におけるポリティカルコレクトネスと表現の自由の相克について、まさに教育者である著者が論じている本であろうと推測される。
ドナルド・トランプが大統領選挙に勝利したあたりから「ポリコレ棒」なる言葉をネットで目にするようになったが(その1、その2)、この本はそうしたご時勢を考えると実は重要なものになりそうな予感がする。
Safe Spaces, Brave Spaces: Diversity and Free Expression in Education (MIT Press)
2016年に一躍脚光を浴びた言葉に Alt-Right(オルタナ右翼)があり、これを主題とする本が今年刊行されるかと思いきや、Kindle の自主出版本を除けば、この言葉自体を書名に掲げる本は、ワタシが見た範囲では意外にもこれ一冊だけだった。
著者の George Hawley は、アラバマ大学の政治学の助教で、アメリカの保守派を取材した本を何冊も出している人なので、内容的には期待できるのではないか。
オルタナ右翼というと、マイロ・ヤノプルスも回顧録の出版が騒動になるも、小児性愛容認ともとられる発言で出版がキャンセルされてしまい、その当事者の本は当分に出そうにない。またその代表的存在であるスティーブ・バノンがトランプ政権の要職につくも後に失脚(?)するなど、どれだけ影響力を持ちうるかは未知数なのだが(個人的にはせんでほしいところだが)。
さて、オルタナ右翼というと、八田真行が日本のオルタナ右翼研究の第一人者になる勢いで(?)、今年のはじめ新書『オルタナ右翼』の刊行が告知されており、期待したのだが、どうもその後著者か出版社にキャンセルされてしまったようで、これを予定出していれば、世界最初のオルタナ右翼解説書となる紙の本だったかもしれんのに残念なことである。
それでは皆さん、ごきげんよう。当分の間、さようなら。
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