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種子発芽の生理を学ぶ | ||
■種子は成熟につれて含水率が10%程度までに減少し、この脱水過程で貯蔵性を獲得します。 |
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1)水分 | ||
■種子は感想状態にあれば、他の条件を揃えていても発芽する事はありません。種子が水分を吸収する量は種類によって異なり、イネ科の種子は種の重量の25~30%を吸水しますが、マメ科の種子は80~120%吸水します。しかし、供給する水分の量は多すぎても少なすぎても良くありません。 ■水分が多すぎると、酸素の供給が妨げられ、発芽が阻害されますし、少なすぎると発芽に必要な量を吸収できず、発芽遅れや、生長が停止します。 ■種子によってはこのような不利な条件に耐えるため、二次休眠に入るものも有ります。 |
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2)温度 | ||
■普通の種子は、5℃くらいの低温から発芽し始めますが、これを発芽最低温度といい、だんだん温度が上がるにつれて発芽も良好になり、ついには最高点に達します。 |
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3)酸素 | ||
■余りにも深い覆土とか水浸しという場合を除き、酸素は空気中に十分にあるため通常は問題になりません。一般に10%以上の酸素濃度を必要としますが(空気中の酸素濃度は約21%)、発芽可能な酸素濃度は5%以上です。これも種類によりかなりのばらつきがあります。 |
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4)光線 | ||
■種子が発芽する場合、光線の存在によって発芽が促進される種子を好光性種子といい、反対に抑制される種子を嫌光性種子ということは前にお話しましたが、光線の影響は発芽温度によってかなり変化します。 | ||
5)種子の休眠 | ||
■種子が完熟し、完全に発芽力を備えているにも関わらず、普通の条件では発芽しない現象を種子の休眠と言います。成熟にしたがって自然に休眠するのを一次休眠、これに対して種子がある不利な条件に遭遇した場合に、それに耐えようとして入る休眠を二次休眠ということは、先にお話しました。 ■野菜種子では十字花科作物、ぼごう、レタス、その他数種のものに見られます。 ■休眠打破の方法には(1)溶液を使うもの、(2)5℃~10℃の低温に一定期間保つもの。(3)60℃で2~3日通風感想するものなどがあります。(1)はダイコン、レタス、ゴボウ、シュンギク、ナス、シソ、(2)はダイコン、レタス、シソ、タデ類、(3)はホウレンソウ、らっかせいなどです。
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6)硬実 | ||
■一般に種皮が硬くて吸水しにくいため、発芽しない種子を硬実といいます。 ■野菜種子では通常有りませんが、エンドウ、インゲン、オクラなどを乾燥貯蔵した場合に若干の硬実を生じる事があります。 ■身近で有名なのは朝顔です。一部をナイフで削ったり、砂と混ぜて、種皮を傷つけた記憶のある方も多いと思います。ただ、現在の種子はその処置をして販売しているものも有ります。 |
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7)発芽しない原因を探る | ||
失敗その(1) 土の乾燥 ■せっかく芽が出ようとしているのに、水切れさせてしまったケースです。 ■芽は土中で枯れてしまうので、もう発芽しません。まき床の土はいつも適度に湿っている状態を保つ事が大切です。 |
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失敗その(2) 水の与えすぎで、土が腐った ■大粒の種子の場合、ぜんぜん芽が出てこないのは、こういう場合が多いものです。たねまき用土はなるべく水はけの良いものを使います。 ■また、大粒種子の場合は、土が乾く直前まで水を控え、乾き気味に管理するのがポイントになります。とくに、芽が出る前に雨に当てるのは避けたいものです。 |
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失敗その(3) 発芽適温を守れなかった ■温度は高すぎても、低すぎても芽は出てきません。発芽温度には十分注意しましょう。 ■以外と地温が高過ぎたり、低すぎたりするのはよくある例です。地温計などもありますので、利用しては如何でしょうか。 |
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失敗その(4) 温度が高すぎた ■温度を確保するため、まき床をガラスなどで覆っておくと、温度は保てますが、湿度が異常に高くなり、種が腐ってしまうことがあります。 |
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失敗その(5) 好光性の種子なのに、覆土してしまった ■種は覆土するものという固定観念があると、こういう失敗を招きやすくなります。 ■種をまく前に、種袋の説明書を読めば、覆土不要については必ず説明してあります。 ■同様に説明に薄く覆土すると書いてある場合も、決して厚く土をかけてはいけません。 ■また、嫌光性の種子に覆土しなかった場合も、芽が出ません。この場合は、もう一度覆土し直せば、芽が出てくることもあります。 |
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失敗その(6) 硬実の種を吸水させずにまいてしまった ■アサガオなどの硬実の種子は、必ず種が水を含んだのを確認してからまきましょう。 ■芽が出てこないときは、まいたところを指でさぐると硬い種が出てきます。これを再び取り出して、傷をつけて水を吸わせてからまくと発芽します。 |
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失敗その(7) 未熟な用土を使った ■完全に醗酵していない未熟な腐葉土などを種まきに使うと、醗酵熱が出たりガスが発生して、せっかく出ようとした芽を傷めてしまいます。 ■腐葉土や堆肥は完熟したものを使うのが鉄則です。 |
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失敗その(8) 水やりの水が強すぎて種が流れた ■せっかく薄く均等にまいても、上から強く水をかけては種が流れてしまいます。 ■播種後の水やりは、大粒ダネをのぞいて、底面吸水させるか、ハンドスプレーなどで優しく水をやります。 ■種は横に流れるだけでなく、奥深く沈む事もあります。結果的に超深植えになって、発芽不良になることもあります。 |
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失敗その(9) 種子が古い。または、管理が悪かった ■種子が古くなると発芽率が悪くなるものもあります。また、買って帰りうっかり湿気の多い場所や熱いところなどにおいて置くと発芽率が下がってしまいます。 ■個人での種の保存は難しいもの。きちんと管理されているお店で買い、置き場所にも注意して、シーズン中に使いましょう。 |
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失敗その(10) 酸素不足 ■発芽時には呼吸作用がさかんになり多くの酸素を必要とします。 ■余りにも深く種を蒔きすぎたり、蒔き床が水浸しになって酸素不足が原因で発芽できない事もあります。 |
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8)主要野菜の発芽適温 | ||
◇トマト・・・20~30℃ | ◇キャベツ・・・15~30℃ | |
◇ナス・・・昼16時間30℃ 夜8時間20℃ | ◇ホウレンソウ・・・15~20℃ | |
◇ピーマン・・・20~30℃ | ◇レタス・・・15~20℃ | |
◇キュウリ・・・25~30℃ | ◇ハナヤサイ・・・15~30℃ | |
◇スイカ・・・25~30℃ | ◇ダイコン・・・15~30℃ | |
◇メロン・・・25~30℃ | ◇ニンジン・・・15~25℃ | |
◇カボチャ・・・25~30℃ | ◇タマネギ・・・15~20℃ | |
◇ハクサイ・・・20~25℃ | ||
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三重興農社では常に種を最適の環境で販売するため、専用の冷蔵庫を備え、インキュベーターでの発芽試験を定期的に行っています。どうぞ、安心してお買い求めください。 資料:社団法人 日本種苗協会編 種苗読本 |