新時代に入った日本2

なんの気なしに、ふとThe Huffington Postをみると、ナノテクのLouis A.Del Monteが、ペンスの環太平洋歴訪はアメリカの先制攻撃を周知するためのもので、ペンスがアメリカに戻る26日から数日で北朝鮮への先制攻撃をするのではないかという趣旨の記事を書いている。

B-2のMOPによる空爆を取り上げてあって、この人がよく理解している技術のひとつがナノテクによって破壊力を増した、例のアフガニスタンに落とした人員殺傷用の巨大爆弾MOAB、GBU-45/Bと、こちらは徹甲弾であるコンクリート貫通爆破用15トン爆弾MOPだからでしょう。

ここのところ、このブログ記事も殺伐とした話が続いていて嫌だが、どうやら世界のなかでただ一国情報から遮断されているらしい日本国内では話題になっていなくても、世界中が注視しているニュースのなかで日本と日本人の運命が最もかかっているのは、緊迫どころではなくなってきた北朝鮮とアメリカ間の緊張で、いくら政治の話が嫌いだと言っていても、来週核ミサイルが東京に落ちるかもしれないと英語記事が出回ったりしているのに、近所に先週開店した欧州式のケーキ屋さんの話を書いていたのでは、いくらなんでも間が抜けている。

ロケットには単体の筐体に弾頭が付いている一段式のロケットと、二段三段に分かれて、空中で切り離して、二段目、三段目に着火する多段式ロケットがあるのは知っていると思います。
簡単にいうと、北朝鮮が持っているミサイルのうち日本が射程に入っているものは一段式で、アメリカ本土に到達しうるものは多段式になっている。
アメリカが暢気に構えていたのは、簡単に言えば北朝鮮の軍事技術力をバカにしていたからで、具体的には

1 核はつくっていても一段式のロケットの弾頭に出来るほど小さく出来ているわけはない

2 多段式のICBMは、弾頭は大型なので核を搭載しうるがロケットの切り離し時の制御が難しいが北朝鮮に、その技術があるわけはない。

の主にふたつの理由によって、北朝鮮が年がら年中すごんでみせる「核による報復」は口だけの駄法螺とみなすことができた。

アメリカという国は、例えば日本がアメリカに対して開戦したときには世界で17位というポルトガル軍よりも小さな軍隊(軍隊、と述べるときは通常、地上軍のことを指します。もちろんアメリカは当時でも世界1,2を誇る海軍を持っていた)ですませていたくらいで、もともと「本土さえ攻撃されなければ、攻撃をうけてから考える」防衛戦略でやってきた国で、広義には、いまでも同じなのだとみなすことが出来る。

まだイラクで激しい戦闘が続いているさなかにやってきて、立ち並ぶ海兵隊員たちを前に、「やあ、諸君のおかげでイラクの紛争は終わった。よかったよかった。
きみたちを誇りにおもう」と聞いていた海兵隊員たちが腰を抜かすような演説をバラク・オバマがぶてたのも、悪くいえば、「イラクなんて政治上のバランスさえ保たれていればアメリカ国民の知ったことか」というアメリカの伝統的な外交感覚に根ざしている。

あれ?
おかしいじゃないか、と言い出したのは北朝鮮の軍事パレードを分析していた軍事専門家で、詳しいことは省くが、彼らの観察では、いつのまにか北朝鮮は多段式ロケットを正しく飛ばせるようになっている。
ぼくの眼には、そこでアメリカの態度が豹変したように見えました。
北朝鮮の金正恩を単なるホラ吹き独裁者とみなしていたのが、そのときから現実の脅威に変わった。

もともと、いまは人類にとってはめでたくもホワイトハウス内の権力闘争に負けて失脚したバノンが描いたデザインで軍事外交を描いていたトランプ政権は、共和党の伝統外交政策におおきく舵をきって、アメリカが戦争からやや興味を失っていたように見えたのに、今度はまた遮二無二北朝鮮との開戦にひた押しし始めたのは、やはり、自分の領土が現実の危険にさらされたことへの、トランプ政権ではなく、アメリカ国民一般の意志の反映であるとみなすことが出来ると思います。

意見がわかれていたシリアへのトマホークによる巡航ミサイル攻撃は「トランプが下した初めてのまともな判断」ということになり、北朝鮮への攻撃も「仕方がないのではないか」という色が滲んでいる。

前に書いたように、英語社会というのは、以心伝心というか、空気を読む能力が極めて高い社会で、「空気を読め」と強調するわりには、びっくりするほど周囲が考えていることに鈍感なところがある日本語人に較べると、いつのまにか、問わず語らずのうちに、砂が風のなかを流れるように、音もなく変化する。
イギリス人に較べれば、遙かにはっきりと述べる傾向があるアメリカ人といえども英語人は英語人で、おなじで、表面は反対が内心では仕方がないと考えて、周囲に判るように暗黙のサインを送っているひとも含めて、北朝鮮との戦争にGOサインを社会全体が示している。

英語を読める日本の人が一様にとまどっているように見える、突然の戦争機運は、だから、自分達に被害がでる可能性がでてきたアメリカ人たちの、防衛本能だと言う言い方でも良いと思います。

Louis A.Del MonteはB-2搭載のMOPによる核ミサイルシェルター攻撃を示唆しているが、このMOPは、RAFのアブロランカスター爆撃機に搭載されてUボートの分厚いコンクリートシェルター破壊に使われて成功した11トン爆弾「グランドスラム」のいわばアメリカ軍の手による後継爆弾で、
15トンのナノテクノロジーによって爆発力を増大させた通常爆弾です。
効果はグランドスラムのUボート基地爆撃の戦訓によって折り紙付きで、まず成功することでしょう。

だが、ここで破壊されるものは何か?
ということを考えると、第一優先目標が、ここに掲げた北朝鮮のミサイルラインアップのうちのTEPODONG-2とKN-08/14の発射装置の破壊で、これはほぼ確実に破壊に成功するだろうと考えられています。

ところが、日本の人にとっては最も心配なはずの北朝鮮の在日米軍に対する報復攻撃に使われる予定のNO-DONGやKN-11,MUSDAN BM-25は巧妙に隠蔽された移動発射台から発射されるわけで、ベトナムやイラクの戦訓を考えても、空爆でこの近中距離戦力を破壊することは不可能に近い。

地上軍を派遣することは考えられないので、特殊部隊による金正恩と側近の暗殺や、ちょうどいまアフガニスタンでオスプレイと海兵隊の小部隊を使って行われている麻薬拠点やタリバン司令部の破壊作戦とおなじ長駆侵入・拠点急襲型の作戦を考えているのでしょうが、ウサマビンラディンを殺害するのに何年かかったかを考えれば、数年という期間を考えるのが最も適当でしょう。

仮に北朝鮮が「広島級」という嫌な言葉で呼ばれる10キロトン以下の、例えばNO-DONGに搭載できる核弾頭を持っているとすると、個人の心理に照らして最悪なことには、「ときどき核ミサイルが飛んでくる日常」という以前に書いた
ありふれた光景
https://gamayauber1001.wordpress.com/2017/03/09/ordinary-life/
の核弾頭バージョンという最悪な日常になるわけで、アメリカ人たちは長距離ミサイルを破壊して安心できても、日本人にとってはアメリカとの同盟を呪う毎日になってしまう。

では、そうしないための対策は、とおもって見渡しても、たとえばLouis A.Del Monteの、この今日(4月22日)の記事にも記されているとおり、なにも発表されていない。
どうやら空爆でなんとかする、という方針のようで、ぼくなどは、だって、あんたたちいつも空爆でなんとかなると述べて、どうにかなったことはいちどもなかったではないですか、と自動的に考える。
現代戦の歴史を通じて、地上軍の派遣、暗殺部隊の派遣、七転八倒して、やっとサダム・フセインのような、北朝鮮に較べれば遙かに脆弱な軍事勢力を倒してきたわけで、いくらなんでも楽観的にすぎるのではないかとおもうが、トランプ政権と米軍は、そうは考えていないようです。

もともと縁故がなくて、日本語の興味につられただけで日本との付き合いが始まったぼくは「心配している」という表現はあてはまらないが、なんとなく釈然としない気持ちになっている。
元は日本人ではあっても、いまは日本には「高校と大学の友達はいるけどね」という程度の義理叔父に聞いてみると、「政権はわざわざ手を挙げて攻撃してくださいと言うバカなんだからどうでもいいが、マスメディアに騙されて殺される日本人が気の毒だ」という感想だった。
官邸にミサイルが当たって、政権がふっとんだ日本がいきなり降伏するというわけにはいかないのか、と不穏なことを言う。

アメリカがアフガニスタンを攻撃しはじめたとき、アメリカとロシアを衛星中継でつないで行った討論会をテレビで観たことがあったが、「あなたがたはアフガニスタン人のゲリラ攻撃の執拗さ恐ろしさを理解していない」と口々に述べる元ソ連の将校たちに対して、アメリカの将軍と将校たちは、やや冷笑気味に「当時のソ連軍と、いまのアメリカ軍では軍事技術力がまったく異なるからご心配なく」と答えていた。

実際に戦闘が始まってみるとホンダのバイクにまたがったタリバン兵たちは自在に走りまわって遠くから狙撃し、爆弾トラップをしかけてアメリカ軍兵士の腕や足をふっとばし続けた。

北朝鮮は、表面は軍事パレードで華やかに行進する正規軍が戦力だが、現実の中心戦力は、ゲリラ戦部隊で、史上初めてのゲリラ戦に特化した軍隊です。
自他共に認める中心戦力は、
1 核・生物化学弾頭ミサイル
2 特殊部隊
3 サイバーテロ部隊
で、前にも述べたが、どれも日本のネトウヨみたいな人々の侮りを裏切って世界最高水準にあるのが確認されている。

その三戦力のどれもがゲリラ化され機動化されているのが北朝鮮の戦力の特徴で、先制攻撃には向いていないが、他国の攻撃に対しては相当な防衛力を持っている。

それが判っているから、アメリカの歴代政権も放っておいたので、中国も、日本も、韓国も、なんとなくうやむやにしておくのが最も平和維持の目的にかなっていた。

それが急速に状況が変化していまの様相になったのは、安倍政権とトランプ政権の相乗した政治効果のせいがおおきいが、なんだか政治の話ばかりしていて、うんざりしてきたのと、もっと適任な人がいるに決まっていて、こんなサーバーの隅っこの弱小ブログでウダウダ言っていても仕方がないので、このヘンでやめておきます。

米艦隊の北上、ペンスの太平洋諸国歴訪、シリア攻撃、タリバン爆撃、といかにも符丁が合って、15万人の人民解放軍が北朝鮮国境に貼り付いたいまの状況(こちらはたまたまだが極東ロシア軍もウラジオストークに集結している)が、空振りで、来週が終わっても、なあーんだ、なんにもなかったね、と言っているうちに、冗談ではなくて老人ボケが指摘されているトランプの気が変わって、「やっぱ、めんどくさいから北朝鮮との戦争やめるわ」になることを期待しよう。

ほら、ツイッタでみんなで唱えたミサイル避けの、あのおまじない。

ちちんぷいぷい!
ちちんぷいぷい、ちちんぷいぷい!!
ぷいのぷいのぷい!!!

祈るくらいしか、やれることはなさそうです。

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One Response to 新時代に入った日本2

  1. ANCO says:

     太平洋がもっともっと広ければ、アメリカに届くミサイルなんて。地球は、アリューシャン列島に渡る鳥たちにちょうど良い大きさで、ミサイル向きの星ではなかったね。
     ミサイルは、流れ星のように眺めるのではなくて、脳天を突き刺すように降り注ぐゲリラ豪雨のようです。どうせなら日銀のバランスシートを吹っ飛ばして、アベノミクスを洗い流して、青空をみせてはくれないか。
     首相官邸が勧めるに従って「建物がない場所では物陰に隠れて地面に伏せる」とどれほど生存率が上がるのだろうか知れない。2011年3月11日に地震速報は私の携帯電話には届かなかった。行政の指示に従っていても津波に飲み込まれて亡くなってしまった。行政からの指示に従って落ち着いて行動する、そんな人類史に残る難題を課せられた日本人は、もう酒でも飲んで、みんなで踊ろうよ。
     朝鮮半島に感謝しているよ、農業、陶磁器、建築、音楽といろいろな文化をありがとう。
     酔っぱらったオヤジが家で暴れるから若い娘は国外へ家出してしまったけれど、日本列島はまた夜明けをむかえて、通りには朝から酒飲みで、倒れるまで踊るでしょう。

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