見てきました…。
・あらすじ
野原家に宇宙船が不時着。
中から宇宙人シシリが出てくる。
シシリは、身の危険を感じると「バブバブ光線」を出して相手を子どもにする。
そして、そのバブバブ光線を食らったひろし・みさえはそれぞれ25歳づつ若返って、ひろしは10歳、みさえは4歳になってしまう。
元に戻してもらうには、シシリの父から「スクスク光線」を受ける必要があるが、シシリの父は今日本の南側(鹿児島らへん?種子島??)にいるという。
そこで、全員が子どもの姿のまま野原一家は鹿児島を目指すことに。
昔のクレしん映画には「ズレる面白さ」があった。
クレしん映画の面白さは1つの設定が、解釈次第で「くだらなさ」と「ブラックユーモア」のそれぞれを持ち合わせてしまうところ。
「くだらなさ」の方で視聴者に捉えさせたり、しんちゃんが言ってることを大人が勝手に「くだらなさ」で捉えて、後々それは実は「ブラックユーモア」だったことに気づかせて驚かせる…という手法がある。
…例えば、シシリが野原夫妻を子どもにしてしまうスクスク光線を打ったのはシシリのお父さんから「大人は危険、子どもは安全」と教え込まれたから。
これはクレしんの映画によくある流れとして「子どもが大人の、大人が子どもの言ってることを十分に理解していないから作品の設定に違う意味が生まれてくる」という展開に沿った流れ。
…昔の作品ならしんちゃんと野原夫妻の間でズレるのだが、今回はシシリ親子でそれが行われている。*1
シシリは「自分たちよりも大きい動物だから、危険だ」と思っていた。だから、シシリが言ってるイメージで宇宙人を捉えてしまう
ところが、シシリの父の言い分はもっと違う意味*2で言っているため、父親の登場と共に新しい設定や解釈が生まれて、映画がブラックユーモアな方に動く。
また、シシリに小さくされた野原一家の旅も「ズレ」の要素が活きてて、面白い。
…バブバブ光線を浴びたひろし・みさえは小さいだけで中身は大人のままだが、周りの人はそれを知らないから、ひろし・みさえは子ども扱いされる。この事が旅を困難なものにしたり、子どもだからできる突破口が生まれていく。
ところが、当初は自分たちのことを大人だと思ってるから子どものみさえが「(電車に)子ども料金で乗ってしまった…」とこぼすシーンが出てくる。
次第に「見た目は子ども、頭脳は大人」な状況に慣れていくと、コナンくん顔負けに大人と子どもを出し入れするようになっていく。
…ちなみに、どこまで関係あるかは知らないが、今年はクレしん映画は名探偵コナンとの同日上映なので、「見た目は子ども、頭脳は大人」という言葉が浮かぶような設定はひょっとすると早い段階からあったのかもしれない…。(あくまで推測ですが)
今回の映画は色んな推測をしたくなったり、知ってると気づけるような小ネタが多いため、少しでも既視感を感じた設定は「ひょっとするとオマージュ(元ネタがあって、作者なりにアレンジして引用している)のかも」と思ったほうがいい。
温故知新な映画になっているのは、25周年で過去作品を活かした作りになっているから
今回の作品は過去の映画に出てきたキャラクターや、各作品がモチーフとされる小物がたくさん出てくる。
映画を見た人はウィキペディアでどこに誰が出てくるとチェックすると面白いので、よかったら答え合わせしてね。*3
クレヨンしんちゃん 襲来!!宇宙人シリリ - Wikipedia
映画の展開にも、かなりオマージュが多い。
・怖いシーンでは本郷みつるのクレヨンしんちゃん(特にヘンダーランドやハイグレ魔王)に出てくるような仮装した男が出て来るし、
・ヒッチハイクをすれば、オカマに載せてもらうことになるし(※栄光のヤキニクロード、暗黒タマタマ大追跡)
・宇宙人が人間を見下していて話が噛み合わないのは「オラと宇宙のプリンセス」から来るネタ
・宇宙ネタ絡みのシーンになった途端エヴァやガンダムっぽい演出が増えるのはロボとーちゃんや、温泉ワクワク大決戦などからくるネタ
・ブラックユーモアが社会派で、真剣に見ていると実在する事件や歴史にぶち当たるのはブタのヒヅメやオトナ帝国にも言えるネタ
過去の作品を見ている人なら昔の作品を連想して「そうそう、クレヨンしんちゃん映画の面白さを少しづつ切り取って、集めたようないい映画になっている」と感動できるような作品。
シシリのビジュアルを見た時に
「頭にシリがついてて、顔も引きつっててブサイクなキャラで、キャラのデザインや予告は子ども向け…あんまり面白くなさそう」
と正直、思ったよ?
でも、騙されたと思って見に行ってほしい。
多くのクレヨンしんちゃん映画に言えることだが、「子どもでもわかるほどバカバカしいくせに、おとなになってから見ると高度にオタク、高度にファンタジー、高度に社会派にブラックユーモアな要素が作り込まれてる」から、予告でバカらしいと思っても蓋を開けてみるとわからない…。
そして、今回はアタリですよ!
子どもは知らないけど、子供と一緒に見に行ったお父さんは絶対楽しめるやつです!
クレヨンしんちゃんを見るならアマゾンプライムビデオがおすすめ!
Amazon限定で配信されている「クレしん外伝」が3シリーズ見られるし、映画版も一部の期間を除いてほぼ年中見られるし、TV版も50話程度見られます。
外伝はクレヨンしんちゃんファンのまま大人になった人が見ても、十分楽しめる大人向けなしんちゃんです。映画版を連想するようなブラックユーモア感と、TV版っぽい軽くて安心してみていられるノリがうまくマッテしている作品です。