鈴木淑子
2017年4月23日06時00分
「働き方改革」という言葉を聞く機会がめっきり増えた。その一丁目一番地というべき長時間労働の是正に向けて、残業時間に上限が設けられる見通しだ。働きすぎがさまざまな悲劇を招いてきたことを考えれば、当然の感さえあるが、そもそも、なぜ長時間労働はやまないのか。経済学の新しいアプローチから、この日本の宿痾(しゅくあ)を見た。
「日本人は働きすぎ」と言われる。だが、1980年代に2100時間を超えていた年間総労働時間は、2000年以降、おおむね1700時間台で推移。調査方法に違いがあるものの、直近はイタリアを下回る=グラフⅠ。
転機は、87年の労働基準法の改正だ。当時日本は毎年巨額の貿易黒字を計上、「長すぎる労働時間」が貿易摩擦の元凶との非難が高まっていた。批判をかわすねらいもあり、法定労働時間が週48時間から40時間へと段階的に引き下げられ、週休2日も広がった。
ただし、30代から40代前半の男性就業者の4人に1人は、いまも週60時間以上働いている=グラフⅡ。1日8時間が所定労働時間とすると、週20時間以上残業している計算になる。
90年代後半の金融危機を境に企業から「残業も何でもやる」正社員が減り、パートや契約社員などの非正規社員の比率が上昇したのも一因だ。不安定な仕事に就く人が増える一方で、働き盛りの正社員に仕事が集中。長時間労働にあえぐ人が相当数に上る状況は、相変わらずという見方もできる。
■50時間超は注意 組織での対応を
新入社員が過労自殺した電通事…
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