インカに「文字」?解読の有力な手掛かり発見か

文字のなかったインカ帝国、手紙に使われたという「キープ」の謎に迫る

2017.04.23
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インカ帝国は高度に組織化されており、キープと呼ばれる装置によって食料の貯蔵量を記録していた。新たに発見されたより複雑なキープには、数以外のメッセージが含まれていた可能性がある。(PHOTOGRAPH COURTESY DALLAS MUSEUM OF ART)
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 ペルー、アンデス山脈の人里離れた村で、色とりどりのひもに結び目を付けた装置が発見された。インカ帝国で数を記録するために使われたとされる装置だが、この村のものからは、ほかの用途にも使われていたことが示唆されるという。(参考記事:「特集:インカ 気高き野望」

「キープ」と呼ばれるこの装置は、結び目の組み合わせによって数を表す仕組みで、トウモロコシや豆類といった食料の貯蔵量を記録するために使用されていた。さらに、一帯を植民地として支配していたスペインの文献によれば、歴史や伝記の記録、手紙にも使われていたと書かれているが、これまで数以外の情報が解読された例はなかった。

 しかし、今回新たに発見された2つのキープは、より複雑な構造をもち、多くの情報が記録されていたことを証明できる可能性があるという。この研究をまとめた論文は、4月19日付けの人類学の専門誌「Current Anthropology」誌に発表された。(参考記事:「古代人は「絵文字」を使っていた?」

板とひもで作られたより複雑な「キープボード」を調べる人類学者のサビーン・ハイランド氏。キープボードはアンデス高地に伝わる植民地時代の発明品だが、インカ帝国が育んできた技術が詰め込まれている。(PHOTOGRAPH BY CHRISTINE LEE, NATIONAL GEOGRAPHIC CREATIVE)
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「色とりどりのひもが複雑に組み合わせられていました」と説明するのは、英国スコットランド、セント・アンドルーズ大学の人類学教授であり、ナショナル ジオグラフィックの探検家でもあるサビーン・ハイランド氏だ。「14の色によって、95通りの組み合わせが可能です。95というのは、表記できる音節記号の範囲内に収まっています」

 音節あるいは単語によって、色と結び目の組み合わせが決まっていたのではないかと、ハイランド氏は分析している。

何世紀も前から伝わる秘密の記録

 ハイランド氏はアンデス山脈のサン・フアン・デ・コラタ村を訪れた。スペインの植民地時代から、何世代にもわたって大切に保管してきた2つのキープを調べてほしいと、村の長老たちに依頼されたためだ。ハイランド氏がその際に受けた説明では「村の首長たちがまとめた戦争の記録」とのことだった。

 2つのキープは木箱に収められ、最近まで、その存在は村の外には隠されていた。同じ箱には、17~18世紀に書かれた数十通の手紙も入っていた。そのほとんどは、村のリーダーたちとスペインの植民地政府との間で交わされた、土地の権利に関する正式な書簡だ。(参考記事:「400年前の書簡に失われた言語を発見」

 ハイランド氏によれば、スペインの年代記には、キープが手紙として届けられていたと書かれている。スペインと戦うインカ帝国が、秘密を守るためにキープで手紙を書いたことを示唆する証拠もあるという。(参考記事:「英国最古の書字板発掘、二千年前の「日常」伝える」

次ページ:「手紙であることが証明された初めてのキープ」

アンデス山脈の村サン・フアン・デ・コラタに保管されていたキープ。村の歴史に関する情報を含んでいる可能性がある。(PHOTOGRAPH BY SABINE HYLAND, NATIONAL GEOGRAPHIC CREATIVE)
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