北朝鮮による人権無視が続いている。テロ国家呼ばわりされるのも自業自得だろう。

 ティラーソン米国務長官が、北朝鮮について、テロ支援国家の再指定を検討していることを明らかにした。

 米政府は北朝鮮を約30年前から指定してきた。核問題をめぐる6者協議の進展を受けてブッシュ政権が08年に解除したが、それ以降、北朝鮮の行動は改まるどころか悪化した。

 日本人拉致問題などをめぐる協議で、北朝鮮は3年前、包括的な調査を約束しながら、その後、全面的に中止した。最近も北朝鮮の担当大使が、訪朝した記者団に、拉致問題には「誰も関心がない」と切り捨てた。

 2月にマレーシアで起きた、金正恩(キムジョンウン)委員長の異母兄、金正男(キムジョンナム)氏の殺害事件は、北朝鮮当局が関与した可能性が極めて高い。

 化学兵器が使われたとされるが、現地警察の捜査にまともに応じようともせず、不誠実な対応に終始している。こうした態度を国際社会は見過ごすべきではない。米下院は今月、国務省にテロ支援国家の再指定を求める法案を可決した。

 再指定になれば、北朝鮮には様々な制裁が科され、アジア開銀など国際機関からの融資の道も断たれる。だが、すでに核・ミサイル問題での国連制裁があるため実質的な変化はない。

 むしろ再指定は、北朝鮮が重視する国際的な体面を失わせる象徴的な意味が強い。だとしても、テロや大量破壊兵器の拡散を許さない国際社会の警告を発することにはなる。

 トランプ米政権は、北朝鮮に対し、軍事面を含めた「最大限の圧力」をかける方針という。同時に「我々の目的は非核化であり、北朝鮮の体制転換ではない」(ティラーソン氏)とし、北朝鮮に自制を求めている。

 朝鮮半島問題は武力では解決できないし、軍事紛争になれば日本、韓国など各国が重大な影響を被る。トランプ政権も安倍政権も、圧力の強化はあくまでも平和的解決をはかる手段であることを忘れてはなるまい。

 もしテロ支援国家の再指定となれば、北朝鮮の激しい反発が予想される。だが、そんな状況を招いたのは他の誰でもない。北朝鮮自身である。

 国内向けには「百戦百勝」などと常に体制を礼賛するが、無法なふるまいの結果、国際的な包囲網は確実に狭まっている。

 国際社会の中で、不名誉なレッテルを再び貼られたくないのなら、人権を尊重し、核を放棄するしか道がないことを悟るべきである。