1日1組限定!古民家宿「LOOF」で楽しむ山里の暮らし

2017.04.10

山梨県笛吹市芦川(あしがわ)町。ここは手つかずの自然が残る山梨の「秘境」とも言える場所。この人口374人(2017年3月時点)の集落に、年間約1,000人が訪れるという「古民家宿LOOF(ルーフ)」はあります。都心や海外からのお客さんも多いというこの宿の魅力を、子連れお泊まりレポートします!

東京から約90分!観光地に好アクセスの秘境、芦川

「古民家宿LOOF」のある芦川町は、山梨で人気の観光地である石和温泉と富士五湖地域のちょうど真ん中あたりに位置しています。世界遺産・富士山の吉田口登山道の起点となる「北口本宮冨士浅間神社」へも車で30分ほどの距離。実際に河口湖畔から車を走らせてみると、たった10分程で芦川町に到着しました。
▲にほんすずらんの里でもある芦川町。自然豊かな道にすずらんの外灯が続く

この集落の美しい風景のひとつ、石垣の段々畑の合間の急坂を登ると本日の目的地に到着!「古民家宿LOOF」は、それぞれ徒歩1分の距離にある2つの古民家「澤之家」と「坂之家」から成ります。今回は「澤之家」に泊まることに。
▲兜作りの屋根が特徴の「澤之家」。トタン屋根に覆われているが、中は茅葺き屋根になっている
▲こちらは「坂之家」。昭和の外観を残す瓦屋根の木造建築
▲「澤之家」の駐車場は4台分。最寄りのバス停「芦川農産物直売所」から送迎も可能

一棟丸ごとどうぞ!1日1組限定の「イナカに暮らすように泊まる」宿

「古民家宿LOOF」は2014年に1棟目の「澤之家」をオープンさせました。その後、2016年には2棟目となる「坂之家」をオープン。それぞれ趣の異なる雰囲気にリノベーションされた古民家は、ともに1日1組限定で運営されています。
▲築100年ほどの古民家をリノベーションし、デザイン家具を配置した「澤之家」
▲昭和建築に北欧テイストを組み合わせた和モダンな「坂之家」

1棟につき10名まで宿泊できるとあって、友人と泊まる方が多いそうです(1棟使用料20,000円、1人あたりサービス料6,500円 ※税別)。3世代で泊まる方や、複数家族で2棟を貸し切ってご近所に遊びに行くように行き来するお客さんもいるそう。夏には庭で花火をしたり、竹を持ち込んで流しそうめんをしたり、宿泊者がそれぞれのスタイルで「暮らすように泊まれる」のが魅力です。

高スペック!古民家でも不便さを感じさせない工夫とホスピタリティ

出迎えてくれたスタッフの方に予約の名前を告げ、早速「澤之家」の中へ。詳しい説明はそれぞれの家の中で行われます。
▲あたたかいお茶で出迎えてもらいホッと一息
▲チェックインの様子。設備についての説明、支払い、鍵の受け渡しはここで行われる

「日常から離れ、時間を気にしないで過ごしてもらいたい」という思いから時計とテレビはありませんが、無料Wi-Fi、Apple TV、iPadが備え付けられています。スタッフと連絡を取りたいときはiPadにダウンロードされたLINEでメッセージを送ることもできます。
▲Apple TVとプロジェクターを使い、床の間の壁をスクリーン代わりに「床の間シアター」も楽しめる

このように、古民家といえど現代ツールが完備され、不便さは全く感じません。家の中に電源がたくさんあるのも心配りのひとつ。
▲内縁にあるコートかけ。囲炉裏の煙で燻されたにおいがつかないようにとビニールカバーが常備されている
▲充実のアメニティ。ホテルのような清潔感を取り入れつつ、敢えて古民家の素朴な雰囲気を残した洗面スペース
▲薪ストーブの他、アラジンストーブ、石油ストーブも設置されている。夏はエアコンいらずの涼しさで扇風機のみで過ごせる

大人が荷物を片付けている間も子どもは大興奮!玄関の土間にあるはしご階段を見つけ、止める間もなく登っていきます。
▲玄関土間にかかるはしご階段。上に何があるのかワクワク!

屋根裏の秘密「一人の間」と「くつろぎの間」

「わあ~!!」
子どもの歓声を聞き、追いかけるとはしご階段の上にはこぢんまりした「一人の間」がありました。兜作りの家特有の屋根裏スペースをうまく活かして、ホッと一息つける空間にリノベーションしています。
▲「一人の間」。ふかふかなマットレスの上にごろごろ寝転んで遊ぶ
▲本棚には本がたくさん。好きな本を出して読める

「あっ!あっちにも、お部屋があるよ!」
子どもがもう一つの屋根裏部屋の存在に気づきました。「くつろぎの間」です。「一人の間」と「くつろぎの間」は地続きではなく、居間から別々のはしごで登ります。こちらにも既に布団が敷かれていました。「一人の間」「くつろぎの間」が独立してあることで、グループでも就寝時にはプライベート空間を保つことができるのです。
▲屋根裏部分をロフトのように活かした「くつろぎの間」

待ってました!夕ご飯は囲炉裏で焼き魚

夕ご飯は、囲炉裏山賊料理、庭でのBBQ、自炊(自炊の場合は一名につき3,000円を割引)の3種類から選べます。時間は17時以降で好きな時間を選択。訪問した時期は寒い季節だったので迷わず囲炉裏山賊料理を選びました。
▲囲炉裏に火が入る。生活の中で火をみる機会が稀になった今では貴重な体験

夕飯の1時間前にスタッフの方が来て、夕食の準備をしてくれます。宿泊者は外出していても大丈夫です。準備が済むと「食事が終わった後の食器はシンクにいれておいてくださいね」と言って立ち去るスタッフの方。なお、スタッフは翌朝のチェックアウトまで来ませんので、観光情報などはここで聞いておくと明日の計画がスムーズに立てられます。
▲囲炉裏を囲んでの夕ご飯。「わ~!火が出た~!」

メニューは芦川産手作りこんにゃくのお刺身にはじまり、富士山麓牛の岩塩焼き、甲斐信玄鶏の串焼き、山梨産ニジマスなど地のものが並びます。
▲生姜、岩塩、バターなど薬味や調味料も料理に合わせて準備されている
▲中までじっくり火が通り、ホクホクの季節野菜
▲「これ、おひつって言うんだよ」。おひつ、囲炉裏、縁側…古民家での暮らしには、子どもにとって初めて知る言葉もたくさん
▲「ふっくらしておいしいね」。ニジマスは、表面に焦げ目がついたら食べごろ

炭を使用してじっくりと焼いた料理は、食材の旨みを引き出して素のままでもおいしい。特にニジマスは、皮はパリッと香ばしく中はふっくらと焼き上がり、今まで食べた焼き魚の中で一番おいしかった!

薪がパチパチとはぜる音をBGMに過ごす、楽しい夜!

夕ご飯のあとは、寛ぎタイム。のんびりとお風呂につかったり、シアターを見たり、はたまた語り合ったりと過ごし方はさまざま。せわしない日常から離れ、ここでは時間がゆったりと流れていきます。普段なかなかできない深いコミュニケーションを家族や仲間と取れることも、魅力の一つですね。
▲「床の間シアター」開演!プロジェクターを使用し、白い壁が大画面に早変わり。動画配信サービスを利用して好きな映画や番組が見られる

たくさん遊んで疲れたのか、子どもたちも早寝。子どもが寝たら大人の時間。ストーブの薪の音、時折外で猫が鳴く声の他は何も音がしません。囲炉裏を囲んで静かに語り合っているうちに、夜が更けていきます。
▲ワインの品揃えは常時100種類と豊富(各3,500円・税抜)
▲寒さ対策に湯たんぽ、電気あんかも常備されており、スタッフの方が布団の中に用意してくれていた

冬の朝一番の仕事は、ストーブに薪をくべること

古民家なので冬の早朝の寒さは覚悟していましたが、思っていたほどではありませんでした。つけたまま寝ても安全な薪ストーブに、ありったけの薪をくべて寝たせいか、夜明けまで火が燃えてくれていたようです。とはいえ肌寒いので、庭に薪を補充に行きました。
▲割られた薪が、沢山準備してある
▲燃えやすいように紙やバーナーが常備され、初めてでも簡単に火おこしできる

さて、働いた後は朝ごはん!冷蔵庫の中に用意された「朝ご飯セット」を出して調理します。スタッフの方が、朝炊き上がるように炊飯器をセットしておいてくれました。
▲朝ご飯セット。お味噌汁はお湯を注ぐだけの味噌玉になっていて楽チン
▲完成!SNSで滞在中のことを発信し、アンケートに答えると朝食無料というユニークなシステム

鍋やフライパンなど調理器具も調味料も一通り揃っていて、まるで我が家のようです。家と違うのは、食器を洗わなくて良いところ。夕飯同様、洗い物はシンクに入れておくとスタッフが片づけてくれる仕組みです。

最高に気持ちいい、扉を開け放してひのきの露天風呂!

朝ごはんの後には朝風呂もオススメ。お風呂の壁4面のうち1面が扉になっていて、全開にできます。気分は露天風呂!
▲爽やかな空気の中、朝風呂。蛇口をひねればお湯が溜まるので気軽に入れる
▲ひのき風呂から見えるのは芦川の石垣

最終チェックアウトは11時なので、ゆっくり過ごせるのも嬉しいところ。庭でも遊びました。縁側でシャボン玉をしたり、ハンモックに揺られたり、土で泥だんごを作ったり…。「澤之家」の裏には畑があり、夏、野菜がなった時には収穫体験もさせてもらえるそうですよ。
▲縁側は、ポカポカしてあたたかかった
▲日当たりの良い庭。夏は縁側BBQが楽しめる

また、「古民家宿LOOF」では、宿泊者に田舎の楽しみ方を提案したり、各種アクティビティを開催したり、周辺の観光スポットを紹介したりするコンシェルジュサービスもあります。中でも人気なのが、5月~11月頃に催行されるトレッキング。
▲オプションで申し込めるガイド同伴のトレッキング(保険料込・税込6,800円)(写真提供:古民家宿LOOF)

周辺の黒岳や釈迦岳など富士山を囲む様々な山をガイドと共に登山できます(所要時間は約2~4時間)。参加者のレベルに合わせてルートを組んでくれるので、初心者でも安心。もちろん上級者向けに、十二ヶ岳~鬼ヶ岳~王岳などを巡る最難関コースもありますよ。
▲宿から2時間ほどの釈迦ヶ岳から見る富士山。どの山からも富士山の絶景が見られる!(写真提供:古民家宿LOOF)

さて、楽しかった滞在もそろそろ終わり。時間になるとスタッフの方が現れ、チェックアウトをしてくれました。この日も平日にもかかわらず2棟とも予約が入っているとのこと。

ちなみに、「LOOF」の名前はLOCAL OFFの略語。「田舎で充実したOFF TIMEを過ごしてほしい」という思いが込められているそうです。名前のとおり、親子共々にとっても充実したひとときを過ごすことが出来ました。
▲スタッフの方に見送られ「澤之家」をあとにする。お世話になりました!

風景も人も田舎の良さがそのまま残るのどかな芦川。初めて来たのにそんな気がしないのは、古民家の日本古来の間取りに心が落ち着くからでしょうか。まるで、映画「となりのトトロ」のサツキとメイの日常のような体験。また戻ってきたい場所になりました。
…余談ですが、帰り道、郵便局の記念消印「風景印」が欲しくて中芦川郵便局に立ち寄ると、コーヒーとお茶菓子がでてきてびっくり!「コーヒーどうぞ、どこから来たの?」と局員さん。これも田舎ならではですね。
▲中芦川郵便局の風景印の図案は「芦川渓谷とすずらんと石垣の里」
写真:Acca*
大橋真生

大橋真生

富士五湖在住のフリーグラフィックデザイナー、編集者。女性や子どもに関わるデザインを中心に仕事をしています。webとフリーペーパーで『fujigoko手帖』として、子連れで楽しめる富士五湖地域の情報発信中。(編集/株式会社くらしさ)

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