田中圭一さんという方が書かれた漫画、「うつヌケ」を読んだので読後の感想を書きます。
なんでも発売直後から大きな反響を呼んでいる本のようで、近所の本屋でも平積みにされているのを見かけましたが、私はKindle版で購入しました。どうやら電子版のみフルカラーになっているようなので、タブレット端末をお持ちの方はこちらの方がお薦めかもしれません。
デリケートな話題の本なので、まず自分がどういう立場でこの本を手に取ったのかを明らかにした方がよいかと思ったのですが、ブログのスタンス上そこはぼやかして書かせてください。少なくともうつについて、少しでも多くのことを知って理解したい、という必要性を持って手に取っているものだとご理解頂ければ。
「うつヌケ」はタイトルの通り、うつを(一応のところは)抜け出した方たちのレポを集めた漫画です。筆者の田中さんもそんな方の一人で、漫画ではまずはじめに田中さん自身の経験談が語られます。
田中さんは経験談のなかで、うつに至った要因を、向いていない仕事を無理にしている気持ちに蓋をして、自分を嫌いになっていったこと。うつから抜け出すことができたきっかけは、なんでもいいから自分を肯定できる行動を習慣化して、自己肯定を取り戻せたこと、にあると分析されています。これには、個人的におおいに同感できた部分です。
その他にも、本書では田中さんのお仕事の周辺にいる方々から、大槻ケンヂさんや内田樹さんなど多方面で活躍されている方まで、さまざまな方がうつ克服までの経緯を語られたインタビューが、漫画で分かりやすくまとめられています。
こちらについては、インタビューで採り上げられている方に、編集者やゲームプログラマーなど、平均的な職業よりもハードワークとされている職業の方が多かったり、うつから抜けた後に小説を書いて直木賞を受賞するなど、常人からかなりかけ離れた実績を残されている方もいて、やや人選に偏りがある印象を受けました。
そういう方のインタビューも、もちろん参考になったのですが、うつ病に苦しまれて本書を手に取っている方は、まずその表面的な実績の方におののいてしまい、そういう人並み外れた熱量のある人でないと、やっぱりうつから抜け出すことはできないのではないか...?と受け取ってしまうもいるのではないかという懸念を、若干ですが持ちました。
それでも筆者の田中さんが、セカンドオピニオンを求めて医者を転々としたり、コンビニの本売り場でたまたま見かけた本で自己肯定のきっかけを得たように、うつから抜け出すために少しでもきっかけになりそうなものは何でも掴んでみるスタンスは結構大事、というのは私もたびたび感じていたところなので、うつに苦しんでいる方が本書を手に取る意義はおおいにあるのではないかと思いました。
田中さんは普段はギャグマンガを書かれている方だそうで、漫画も全体的にライトなタッチで書かれているのと、どこか昭和っぽい懐かしさを思わせる絵柄であることも、本書で書かれていることを受け容れやすくするのに一役買っているのではないかと思います。
ひと通り読み終えてみて、私自身もなんか調子が悪いなぁ、と思ったら読み返してみたい本だと思いましたし、同じようなことに悩んでいる隣人を見かけたらお薦めできる本だと感じたので、こちらでも紹介してみました。