「ラノベと言えば石鹸枠」と言われて久しいような気がしますが、単刀直入に言うと「石鹸枠」はアニメにおける概念に過ぎません。ラノベには存在しない概念です。
いや、「石鹸枠」と呼ばれる各作品がアニメ化されるくらいに人気があることは否定しませんし、「萌え要素の強い学園バトルファンタジー」程度に大雑把に捉えるなら、まあラノベの流れのひとつではあるとは言えます。
けれども、そういったジャンルが「流行」といえるほどラノベ業界で支配的だったかというと首をひねりますし、序盤の細かな共通点に注目するような視点も、ラノベ読者にはほとんどなかったのではないかと思うのです。
実際のところ、「石鹸枠」とされる作品でも、基本的な設定や序盤の展開が似ているだけで、最後まで見れば別物であったりしますよね。
そう考えると媒体の違いが大きいのではないでしょうか。
ラノベだと一冊のうちの数ページにすぎない導入部分が、アニメで観ると一週間のメインコンテンツとなってしまう。
起承転結を一気に読み通すラノベ読者に対して、部分部分を断続的に視聴するアニメ視聴者という違いが、作品の捉え方に影響を及ぼしていると考えられます。
加えて言うなら、アニメ化されると「文体」がまるっとオミットされて、印象がフラットになってしまうということもあるでしょう。
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たとえば、現在放送中の『ロクでなし魔術講師と禁忌教典』は、教官ものの学園ファンタジーで、王道を往く熱いバトルが魅力の作品ですが、何故だかアニメ視聴者からは「石鹸枠のテンプレをメタった石鹸枠」と認識されがちのようです。「石鹸枠が有名になったから逆張りする作品が出てきたな」と。
しかし「ロクアカ』の第一巻は2014年7月刊行、新人賞作品なので実際の執筆は2013年あたりでしょう。一方で、「石鹸枠」の語源となった『星刻の竜騎士』のアニメは2014年4月開始ですから、時系列的には前後しています。
アニメだけで見ていると、「石鹸枠という概念が広まったあとにそれを受けてロクアカが現れた」と感じるわけですが、それは錯覚にすぎないわけですね。
こういったアニメ視聴者の錯覚が、「石鹸枠」の成立自体にも影響を及ぼしているのではないか、と個人的には考えています。
「石鹸枠とは何か」を考えるときに、個人的に外せないと思っているのが「ハサミ枠」の存在です。
もちろん、漫画やラノベでハサミのモチーフが流行ったわけでも、当時のアニメ業界でハサミを登場させるのが流行していたわけでもありません。たまたまハサミが出てくるアニメが連続したので、面白がって一つに括ってしまったというだけです。
「石鹸枠」にも似たようなものを感じるんですよね。
所詮、と言ってはなんですが、「石鹸枠」のアニメなんて1クールに一つあるかどうかという程度にすぎないわけです。『このすば』や『Reゼロ』ほど話題になった作品もありません。
それでも、「なんだか似た設定のアニメがあるね」という状況が、たまたま一年ほど続いたので、面白がって「枠」にしてしまった、という程度のものにすぎないのではないでしょうか。
さて、一般的に「石鹸枠」とされる作品はこのあたりですが。
ところでラノベ業界には「ラノベ王子」と呼ばれる名物編集者がいます。ここで彼が担当した数々のヒット作をご覧ください。
先日アニメ化企画進行中が発表されたクロプラは、「立ち上げ1巻担当作のアニメ化」でいうと、
— 庄司智 (@ss_editor) 2016年1月5日
IS/まよチキ!/機巧少女/星刻/精霊使いの剣舞/ノゲ/アブソ/アスタリスク/銃皇無尽のファフニール
に続き、ちょうど10タイトルめということで。
作品が新たに広がるのが今から楽しみです!
王子じゃ、王子のしわざじゃ…!