『阪急電車 片道15分の奇跡』という映画で有村さんと一緒にお仕事をしたとき、まっすぐに役のことを考えて、気持ちを大切にお芝居をしている姿が印象に残りました。漠然と「こういう子が何年後かに朝ドラのヒロインをやるのだろうな」と思っていたんです。
朝ドラのヒロインって新人賞みたいで、一生に1回のことじゃないですか。『あまちゃん』で朝ドラへの出演は果たしましたが、有村架純はヒロインも演じたほうがいいんじゃないかと。
今回のヒロイン・みね子は組織やグループの中でリーダーでもなく、目立つわけでもない。例えば、ある回の放送の最後に別の人がすてきなセリフを言って、ヒロインはその隣にいる…つづく…みたいなことがあるのですが(笑)それでも消えない存在感が欲しかったので、有村さんの力が必要でした。
ドラマの設定をプロデューサーと話し合う中で、昭和と言っても戦後20年くらいたってからの、急激に成長する時代が持つエネルギーみたいなものを書きたいという話になったんです。そこから、具体的な話やヒロイン像を探っていきました。
僕もその時代に生きていた人間で、『ひよっこ』でいうとヒロインの弟と同じくらいの年齢なんですよ。当時を東京で見てきたから、空気感みたいなものは覚えています。都市がどうなっていたのかも記憶にありますし、東京オリンピックやビートルズが来日したことも覚えています。だから、そんなに昔の話を書いている気はしていないです。
現代でも、住み慣れた街を離れて働きにいき、集団で生活をするということは普遍的なものとして伝わると思いました。また、かつて集団就職で東京にやってきた何万人もの方たちに向けて、あの当時がドラマで描かれたという喜びも作れるのではないかと。
“集団就職”については、どんな気持ちで列車に乗って、東京に着いて、どんな暮らしをしていたかということが描かれている作品がこれまであまりなかったので、今回はその部分に力を入れたいと思っています。
若い子たちが集団で生活した中では、楽しいことや喜び、友情もあったはず。部屋でどんな話をして、休日は何をしていたのだろう…など、そういうところもちゃんと描いていきます。だから、集団就職先の東京工場編は予定より長くなってしまいました(笑)。
朝ドラは会話劇が中心になるので、単に変な人というわけではなく、「あぁこんな感じの人いるな」と思っていただけるよう、特殊すぎる人にはしないようにしています。とはいえ、やはりそれなりにみんなダメな感じがあるというか(笑)。そういう部分も魅力的に見えるのではないかと思って、それぞれの登場人物を書いています。
今回の物語は約10年に凝縮してゆっくり進んでいく予定です。自分の中では「連ドラの中で、スピンオフも全部やります」という気持ちで、一人一人のキャラクターを丁寧に描きたいと思っています。
今回、唯一自分で決めていることは、週単位で物事を考えないようにしようということ。朝ドラはどうしても、この週はこんなテーマなのでこういうトーンで…となってしまうので。
例えば、何かの事件が月曜日に起きて土曜日に終わるというパターンには陥りたくないので、どの曜日に何が起きるかはおたのしみに!“一話入魂”なのでお見逃しなく!