2017-04-23
■[音楽]なぜNGT48の『青春時計』はへっぽこな“水曜日のカンパネラ”みたいになってしまったのかについての考察
立ち上げから番組を追っかけ、お披露目公演やイベントも行ったくらいに思い入れがあるNGT48がついにメジャーデビューを果たした。
すでに代表曲としての評価も定まっており、リクエストアワードでも1位をとった『Maxとき315号』を何度も何度も聴いているだけにいやがおうでも期待は高まり、youtubeでMVが発表されると知ってすぐに視聴、フラゲしてType-BとType-Cを購入して聴いた(といっても後者はハードオフで300円だったからあとから買ったのだけれど)。
この『青春時計』かなり変わった構成になっている。
まず出だしだ。48Gの楽曲といえば印象的なイントロから転調に転調を重ねていくというのがお決まりのパターンであるが、『青春時計』にはイントロがなく、いきなり歌い出しが“水曜日のカンパネラ”的なラップになっているのだ。
もちろんそのようにコンペも行われたのかもしれないが、実はこの曲の振り付けも“水曜日のカンパネラ”を担当している人が振りつけており、そこまで深読みでないことがうかがえる。
曲はそのまま終わるわけではなく、Bメロからは『365日の紙飛行機』を彷彿とさせる60年代カレッジフォーク調になり、タイトル通り、青春を強調した歌詞がうたわれていく。最先端の音楽と牧歌的なフォークソングを組み合わせるという秋元康がいかにも好きそうな雰囲気の楽曲だ。
ぼくはこの曲を30回以上聴き、なんでこのような構成の曲になったのか……正確にいうなら、なぜ秋元康がこのような曲をNGT48のデビューシングルに選んだのかについて考えてみて、ひとつの結論に達した。
もしかしたら秋元康は新潟がどういう街なのか?というのを音楽を通して、NGT48を通して、表現したかったのではないか?
出だしの“水曜日のカンパネラ”的なラップはある意味で現在の最新系の流行歌であるが*1、このラップの部分が政令指定都市になって以降の新潟を象徴しており、中盤からの60年代カレッジフォーク調は古き良き在郷としての新潟を象徴している。
つまり新潟という街は政令指定都市でありながら、少し車を走らせれば田んぼだらけの在郷で、その都市感と在郷の解離が異常に激しく、それが魅力である……その感じを曲だけで出したのではないのか?
「NGT48食少女」という番組のミニコーナーで地方出身のメンバーが「新潟は私たちの住んでたところに比べると都会」とコメントしていたが、これがすべてを表しており、どこか新潟というのは水と米と魚だけの地方(田舎)であるというイメージがつきまとっているような気がする。しかし、いうほど田舎でもなく、魅力的な……それこそ歌詞を引用すると「美しいあの街」……それをそのまんま曲で表現した……それが『青春時計』が選ばれた理由なのではないか?
そう考えると、この曲をNGT48のデビューに持ってきた秋元康の手腕は優れていると言わざるを得ない。今までの48Gのなかで最も地方に密着したNGT48の門出に選ばれた楽曲はことばではなく、曲構成だけで新潟を象徴するというこれまでになかったタイプの曲。それが『青春時計』であり、これこそがNGT48のデビューシングルに相応しい曲なのである。
………と、これはあくまでこの曲を論じたにすぎない。ここからぼくの感想を書かせてもらうが……
……この曲クソじゃね??
まず、その出だしの“水曜日のカンパネラ”調のラップだが、トラックも含め、とてつもなくヘッポコな出来であり、アイドルが持つ魅力のひとつである“ほつれ”が表現できてない。言ってしまえば、元からほつれているうえにほつれが重ねられていて、聴いてて気恥ずかしくなるレヴェルだ。
そして突如やってくる『この広い野原いっぱい』や『あの素晴らしい愛をもう一度』的な展開もただ単に『365日の紙飛行機』のウケがよかったから入れただけという感じもする。サビ終わりの「感情こそが青春〜」という部分もそのまま「365日〜」と歌えそうな感じだ。
「仏作って魂入れず」という言葉があるが、この『青春時計』にはそれしか感じない。むしろアイドル自体がそもそも仏作って魂入れずの状態なのだから、その魂は楽曲にあるのだ。故に近藤真彦の曲は山下達郎が作ったりしているのである。
ぼくはホントに秋元康に対して、なぜこの曲だったのか?の真意が聞きたい。それくらい『青春時計』には何も感じない。とはいえ、これはラブオアヘイトの話なので、他の人はどうなのかなとまとめサイトなどを見ると意外と高評価で絶望的な気持ちになる……
同じように48G推しのぼくの友人は「なんでこの曲を選んだのか?」と思っており、妹にいたっては「なんじゃこりゃ!チクタクーじゃねぇよ!ふざけんな!」というラインを送ってきた。そういう意見が多いと思っていたのだが……うーむ。井の中の蛙大海を知らずとはまさにこのことであった……
ちなみにカップリングではひなたんセンターの『純情よろしく』がよかった。ややアーバン寄りのK-POPって感じでMVもそんな感じで作られている。それでもめちゃめちゃおすすめはできないけれど……っていうか、デジパンクな曲だったり、クールな四つ打ちだったり、なんか曲のテーマというか、方向性が定まってないんだよな……
- アーティスト: NGT48
- 出版社/メーカー: アリオラジャパン
- 発売日: 2017/04/12
- メディア: CD
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