中世の奇才ヒエロニムス・ボス──その狂気に満ちた絵画がフィギュアでよみがえる

中世の画家ヒエロニムス・ボスの空想的で神秘的な世界がアクションフィギュアになった。その狂気に満ちた世界観をフィギュアとして立体的に再現すると、いったいどうなるのか。実際に購入もできる驚きの逸品を紹介しよう。

TEXT BY ANNALEE NEWITZ
TRANSLATION BY MISAKO ASANO/GALILEO

ARS TECHNICA(US)

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    1/10キャラクターのほとんどは、ボスの三連祭壇画『快楽の園』に描かれている。左のパネルは人類の創造、真ん中のパネルは地上の楽園、右のパネルは人類の失墜と天罰を表しているとされる。

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    2/10『快楽の園』に描かれているなかでも、もっとも有名なひとつ「ツリーマン(tree man)」。現世での罪深い生のため、地獄へと流されていく人間たちを描いている。制作したParastoneはこう説明している。「卵の形をした胴体の中は居酒屋になっている。木の幹の足が履いている2艘のボートの間を、あらゆるものが流されていく。音楽や踊りがみだらな世界に導いたのだろうか。被り物の上のバグパイプがそれを象徴している」 IMAGE COURTESY OF PARASTONE

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    3/10『快楽の園』にはたくさんの鳥が描かれている。完璧に描写されているため、鳥類学者は鳥の種類を見分けられるほどだ。「鳥」は「愛」と「欲望」を意味するものでもある。さらにオランダ語では、「鳥」を意味する言葉(vogel)が、「セックスする」(vogelen)を意味するスラングで使われることがある。IMAGE COURTESY OF PARASTONE

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    4/10天国の泉。創造における人類を表している。IMAGE COURTESY OF PARASTONE

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    5/10「鳥とセックス」の別のあらわれ。IMAGE COURTESY OF PARASTONE

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    6/10人間の魂を食べて排泄する悪魔。頭には地獄の大釜をかぶっている。IMAGE COURTESY OF PARASTONE

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    7/10ボスの『最後の審判』

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    8/10『最後の審判』に描かれている「Head on Feet」。IMAGE COURTESY OF PARASTONE

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    9/10『最後の審判』に描かれている「青い笛吹き」。最後の審判のときには天国に行けない「不法」を象徴しているという。IMAGE COURTESY OF PARASTONE

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    10/10『最後の審判』に描かれている「ヒゲを生やしたフリーク」。爬虫類的な尾も付いている。IMAGE COURTESY OF PARASTONE

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キャラクターのほとんどは、ボスの三連祭壇画『快楽の園』に描かれている。左のパネルは人類の創造、真ん中のパネルは地上の楽園、右のパネルは人類の失墜と天罰を表しているとされる。

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『快楽の園』に描かれているなかでも、もっとも有名なひとつ「ツリーマン(tree man)」。現世での罪深い生のため、地獄へと流されていく人間たちを描いている。制作したParastoneはこう説明している。「卵の形をした胴体の中は居酒屋になっている。木の幹の足が履いている2艘のボートの間を、あらゆるものが流されていく。音楽や踊りがみだらな世界に導いたのだろうか。被り物の上のバグパイプがそれを象徴している」 IMAGE COURTESY OF PARASTONE

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『快楽の園』にはたくさんの鳥が描かれている。完璧に描写されているため、鳥類学者は鳥の種類を見分けられるほどだ。「鳥」は「愛」と「欲望」を意味するものでもある。さらにオランダ語では、「鳥」を意味する言葉(vogel)が、「セックスする」(vogelen)を意味するスラングで使われることがある。IMAGE COURTESY OF PARASTONE

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天国の泉。創造における人類を表している。IMAGE COURTESY OF PARASTONE

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「鳥とセックス」の別のあらわれ。IMAGE COURTESY OF PARASTONE

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人間の魂を食べて排泄する悪魔。頭には地獄の大釜をかぶっている。IMAGE COURTESY OF PARASTONE

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ボスの『最後の審判』

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『最後の審判』に描かれている「Head on Feet」。IMAGE COURTESY OF PARASTONE

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『最後の審判』に描かれている「青い笛吹き」。最後の審判のときには天国に行けない「不法」を象徴しているという。IMAGE COURTESY OF PARASTONE

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『最後の審判』に描かれている「ヒゲを生やしたフリーク」。爬虫類的な尾も付いている。IMAGE COURTESY OF PARASTONE

アクションフィギュア好きで、狂気に満ちた中世芸術もお好みなら、さっそく飾り棚に場所をつくってほしい。15世紀の芸術家ヒエロニムス・ボスの絵画を再現した驚きのフィギュアを紹介しよう。

中世後期の著名な画家ボスの作品は、主にキリスト教に関するテーマを扱っている。天国と地獄のぞっとするような世界を、想像力豊かに詳細に描き出したものが多い。

これらの楽しげでありながら悪魔的なフィギュアシリーズは、3Dによる古典絵画の再現を専門にするオランダのParastoneが制作した。同社はさまざまな画家の作品をフィギュアにしているが、ボスの作品シリーズも米Amazonやミュージアム・ショップで販売されている(日本では一部を横浜美術館の通販などで購入できる。価格は税込み3,800円から1万3,716円)。

ボスの作品はParastoneにとって完璧な素材だ。ボスがオランダ出身だからというだけではない。ボスの絵画は詳細なモチーフで埋め尽くされているからだ。ボスの絵に登場するあらゆる人物や獣は、非常に精密に描かれているため、それらを再現した小さなフィギュアはじっと眺めていても飽きない。キャラクターのほとんどは、ボスの三連祭壇画『快楽の園』に描かれているものだが、『最後の審判』などほかの絵から取ったものもいくつかある。

ボスの生涯についてはあまり知られていない。わかっているのは、代々画家の家系で、生前はかなり人気があったらしく、外国からの仕事も多く請け負っていたということくらいだ。

ボスが自分の作品のことを風刺画と位置付けていたか、あるいはいたって真面目に描いていたかはわからない。ボスは地元の町では保守的なキリスト教団体に所属していたが、宗教的な気持ちからというよりは、付き合いからだった可能性もある。謎多き芸術家が私たちに残したものは、快楽によって、あるいは罰を受けて狂気に陥り、体が原形をとどめないほどに変形した人間たちを詳細に描いた絵画だけだ。

下記の動画は、フィギュアのもとになったボスの絵画を解説したもの。2016年にオランダの「ミュージアム・オブ・ザ・イメージ(MOTI)」が制作した

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