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朝日新聞2002年4月20日東京版朝刊第2面

有事法制ここが分からない  「武力攻撃事態」って何

Q「武力攻撃事態」って耳慣れない言葉だね。
A政府が今回新しくつくった言葉なんだ。「有事」の範囲を意味している。

Q戦争とは違うの。
A(1)武力攻撃を受けた事態 (2)武力攻撃のおそれがある事態 (3)武力攻撃が予想される事態の三つが、 「武力攻撃事態」の定義。
 現実に外国の軍隊が攻めてくるのが(1)。 (2)はその前の段階で、(3)はそのもっと前ということだね。

Q「おそれ」と「予測」はどう違うの。
A官僚はこう答弁するらしい。「おそれ」は「国際情勢や相手国の明示された意図、軍事的行動などから判断して、 日本への武力攻撃が発生する明白な危険が差し迫っていることが客観的に認められる事態」。
 「予測」は「日本を取り巻く国際情勢の緊張の高まりなどから、日本への武力攻撃の意図が推測され、 日本への武力攻撃が発生する可能性が高いと客観的に判断される事態」。わかるかなあ。

Qさっぱり。
Aそうだろうね。法案そのものがあいまいだから。

Q地下鉄サリン事件は武力攻撃事態なの。
A外国からの攻撃じゃないから違う。だけど大規模なテロが起きたとして、どんな組織がどんな目的でやっているかなんて、 最初からはわからないよね。

Qアメリカのような同時多発テロが日本で起きたら。
A警察に任せるかどうか、見方がわかれている。

Qミサイルが飛んできたら。
A武力攻撃事態ということになるだろうけど、1発だけなら、誤射かもしれない。

Q不審船は。
A基本的には海上保安庁が取り締まる。だけど武装工作員が乗っていたら武力攻撃事態と判断する場合もあるだろう。

Qケース・バイ・ケースということだね。そもそも武力攻撃事態かどうか、だれが判断するの。
A首相だよ。首相が安全保障会議に相談して、最後は閣議で決める。

Q「予測」なんて解釈しだいだよね。
A「予測」すると、実際に自衛隊は陣地を作れるし、法整備が進めば、国民を避難させたり、 米軍を支援したり出来るようにもなる。
 国会が承認しなかったら、やめなければいけないという歯止めはあるけど。

Q「周辺事態」というのもあったよね。
A日本が直接攻撃を受けたわけではないけど、日本周辺で紛争が起きて、放っておくと日本も巻き込まれかねない、 という事態のことだね。

Q武力攻撃事態とは違うわけだ。
Aそれがそう簡単ではないんだ。放っておけば日本自身の有事になりかねないという周辺事態は、 武力攻撃が「予測」される事態とも言える。区別は難しいだろうね。