自分が普段主に使用しているパソコンは2008年に製作した自作PCである。
CPUやメモリなどは随時アップデートしてきたが、マザーボードは初めから交換無し、もう9年も使い込んでいるロートルだ。
このところ、朝一で起動すると、Windows 10のパスワードを入力するログイン画面にたどり着けず、ブルーバックでQRコードが表示される画面で止まってしまう事が何度かあった。
再起動すると、時間は少々かかるが、何事もなく使えてはいる。
頻度は一週間に一回程度であるが、早々に対処しないとヤバそうな兆候である。
こういう事は、何も今回が初めてではない。
まだWindows 7の時にも同様の症状になった。ブルーバックにQRコードは付いていなかったがw
その時とった解決策は、マザーボード上の不良となった電解コンデンサーの交換修理である。
今回も恐らく、いや100%間違いなくコンデンサーの不良だろう。
何故なら……
以前メモリを交換したときに、既に異変に気付いていたからである。
メモリソケットの周囲にあるいくつかの電解コンデンサーの頭が膨張して膨らんでいたのだ。
電解コンデンサーの膨張=俗に妊娠などというが、円柱状の電子部品の中には電解液に浸した紙と電極が封入されていて、劣化するとガスが発生して徐々に膨らんでくるのである。
最終的には大爆発*1を避けるために、わざと弱く作ってある頭頂部の刻みのある部分を押し破って、ガスと臭い電解液が噴出して御陀仏となるのだ。
こうした最終局面に至らずとも、起動不良という兆候が表れるのだ。
なお、電解コンデンサーの不良は電源ユニットの中でも良く起こる。
同じような症状が現れた場合は、電源とマザーボードの電解コンデンサーの不良をチェックしてみよう。
特に、冬季に寒い部屋で起動に失敗する場合は、電源のコンデンサーが弱っている疑いが強い。
自分の場合、電源ユニットは一度交換しているのと、既に目視で不良を発見しているので、マザーボード上の電解コンデンサーが原因であるのは確定的である。
気付いているのに放置したのは、その時は症状が出ていなかったのと、処置はなかなか面倒くさいので、様子を見たのだ。
失敗すればマザーボードの交換という、コスト消費のリスクも理由である。
とにかく、もう長く持ちそうにないので、地元のパーツ屋に自転車を走らせ、交換用の電解コンデンサーを調達した。
マザーボード上の赤丸で囲んだ部分のコンデンサーが妊娠している。
真ん中の矢印で示した電解コンデンサーの頭頂部が膨らんでいる。 もっと症状が進むとX字の刻みの所で裂けて、ガスと電解液が噴出するのだ。
独特の異臭がするので、そうなったらPCの中身を見なくても故障に気付く。
こちらの写真は手前の4個のコンデンサーの頭が膨らんでいる。
奥の矢印で示したコンデンサーは、既に一度不良になって交換した電解コンデンサーである。
頭頂部の刻みがX字ではなくKとなっている。国産コンデンサーメーカーのルビコン社の特徴である。
今回調達したコンデンサーも同じルビコン社製である。
マザーボードの裏側である。
パーツはこちら側に半田付けで止まっている。半田を半田ゴテで熱を加えて溶かし、パーツを引き抜く。
表と裏を何度も見比べて、交換する部分を特定する。間違えないように、マーカーで印を付ける。
主に使用する道具だ。
上の2本が半田ゴテで、下の丸いのが半田吸収線という道具である。
半田吸収線というのは、細い銅線を平織りのリボン状にしたツールである。
半田ゴテで半田を熱して溶かし、吸収線を当てると、溶けた半田が細い銅線に毛細管現象で吸い取られる仕組みだ。
正しい使い方は、溶かして当てるのではなく、当ててから、吸収線ごと半田ゴテを上から押し当てる。
ある程度銅線の繊維に半田が吸い込まれると、それ以上吸わなくなるので、ニッパーで切り取って、新しい部分を使う。その為消耗品である。
半田ゴテは2本写真に写っているが、今回使用したのは黄色のやや大きい方である。
通常電子工作をしたり、昭和レトロなラジカセやオーディオを修理するときは、下の赤い小さい方の、40W(ワット)のコテを使うが、今回の作業では熱量が不十分で、半田が良く溶けない。
最近の電子機器では、融点の高い鉛フリー半田*2が使われているのと、PCは積層基盤という複雑な構造で、銅の回路パターンから熱が逃げやすい*3のが原因である。
その為、熱量が大きい60W(ワット)のコテを使用するのだ。
作業がワープして、不良コンデンサーは既に外れているw
メインで使用しているPCなので、悠長に説明写真を撮っているヒマがないというわけだ。何せ、今回は5個も交換しなくてはいけない。
半田吸収線で粗方半田を取り除いたら、半田を熱しつつ、表のパーツを指でグイっと押すと、2本の足の熱している方の足が、基板から抜けるという寸法である。
この時、半田の熱し方が足りないのに無理やり抜こうとすると、銅パターンごと基板から剥がれてしまう。こうなるとマザーボードは御陀仏である。
そうならないように、大胆かつ慎重に作業する。また火傷にも注意だ。
片側の足が抜けたら、反対側の足の半田を熱してパーツを引き抜く。
交換する電解コンデンサーは5個全部、耐圧6.3V容量1000μFの電解コンデンサーだが、
105℃対応、低ESR/高リプル対応品(低Z品、もしくはPC補修用ともいう)
という物を選ぶ。
使う場所によっては通常品でも使えないとは限らないが、上の規格に当てはまる物を使うのが無難である。
また、耐圧は元の規格より大きいものであれば使用可能だが、耐圧が大きくなるとコンデンサーのサイズも大きくなるので、あまり違う物を使うと、元の場所に取り付けられない事がある。
今回も6.3Vのコンデンサーの在庫がなかったため、仕方なく10Vの物を入手した。
その為、直径は同じだが、高さがやや高くなっている。
メーカーは国産のルビコン社製でZLHという種類である。個人的にはニッケミ社製の方が好きだが、地元で売っていない物は仕方がない。
古いパーツを抜いたら、新しいパーツをすぐに取り付けたいが、そうは問屋が卸さない。
パーツを差し込む穴が殆ど、半田で塞がっているからだ。
鉛入りの古いタイプの半田だと、吸収線やポンプ式の半田吸取り器(いわゆるスッポン)で案外楽に綺麗になるが、鉛フリーの半田では上手くいかない。
面倒だが、リューター用のビットを差し込んで穴をホジホジする。
0.5mmのドリル刃でも良いが、1.0mmの刃では太過ぎて不味い。
マザーボードの基板は積層基盤といって、銅パターンの違う回路を何枚か重ねて作られているからだ。パーツを通す穴は単純な穴でなく、見えない内部で別の回路と繋がっているスルーホールの場合がある。太過ぎるドリルで穴を広げてしまうと、スルーホールを傷付けて断線する恐れがあるのだ。
というわけで、リューター用のビットだが、モーターで回すのも怖くて手で根気よく穴を通す。10個も穴があるので、面倒くさい事この上ない。
無事穴が開いたら、パーツの+-を間違えないように足を通して、最低限の量の半田で取り付ける。あまり盛大に盛り付けるとショートの危険がある。
こんな感じで、面倒極まりない作業であるが、無事コンデンサーの交換作業を終え、そのPCでこのブログを書いている。
何しろ、マザーボードごとお釈迦になってしまうと、復旧には1万円では済まない。別のマザーに替えるとWindowsが別のPCと認識して認証が通らなくなってしまう。
部品代だけなら、500円以下である。
とはいえ、通常マザーボードは連続使用で5年も使えれば上出来である。いい加減新しくしたいが、無い袖は振れないのだorz