5/5
5話 テルミドールのクーデター
私は、男装してナポレオンの南方遠征に従軍したかったので、父を説得するために、アンリ男爵に来てもらった。
「お父様。お願いがあります。ナポレオンの南方遠征に志願したいのです。ダメですか?」
「私からもお願いします。ご令嬢は、男勝りのライフルの腕を持っています。必ずや軍功を上げて、
領地奪還の礎にしたく存じます。」
「うむ。女性の身で、男装してまで行きたいと申すのだな。もう少し、女らしく育てればよかったのだが……。
もし、領地が奪還できるのであれば、それに越したことはない。儂は、今度領地ができたらパン屋は止めて、ワイン造りをするために葡萄栽培をしようと思っている。
ところで、昨今、ナポレオンの噂が絶えないが、アンリ男爵の見解はどうか?」
「はい。私もまだ、一緒に戦ったことはなく噂でしか知りませんが、大尉から少佐まで一気に駆け上がって、今の南方司令官に任命されたとのこと。武勇は噂を信じてよろしいのでは?と思っております。
私の集めた情報では、ナポレオンはフランス軍の中でも、主に王党派蜂起の鎮圧を行っていた、
カルトー将軍の南方軍に所属していて、トゥーロン攻囲戦に出征。
砲兵司令官となり、少佐に昇格したとのこと。
「フランス革命政府」対「反革命側反乱軍」、近代的城郭を備えた港湾都市トゥーロンは、
フランス地中海艦隊の母港で、イギリス・スペイン艦隊の支援を受けた反革命側が、
鉄壁の防御を築いていたそうです。
革命後の混乱で人材の乏しいフランス側は、カルトー将軍らの指揮で、
要塞都市への、無謀ともいえる突撃を繰り返して、自ら大損害をこうむっているような状況で、
あったところに、ナポレオンは、まずは港を見下ろす二つの高地を奪取して、
次にそこから大砲で敵艦隊を狙い撃ちにする、という作戦を進言して採用されたようです。
豪雨をついて作戦は決行され成功、外国艦隊を追い払い反革命軍を降伏に追い込んだとのことです。
これにより、パリでは、半ば英雄扱いになり掛けているという状況らしいです。」
「そうか。解った。では、気を付けて行くが良い。アンリ男爵殿、くれぐれも娘を頼みますぞ。」
「はい。それは、もう勿論です。」
「うむ。それを聞いて安心した。フランソワよ、気を付けるのだぞ。」
「はい、お父様。」
こうして、私は、アンリ男爵と共にナポレオンの南方遠征に志願することにした。
宿舎井戸端会議で聞いた話では、テルミドールのクーデターが起きて、ロベスピエール以下22人が失脚して、ギロチン送りにされたとのことであった。
確か、ナポレオンは、ロベスピエールの弟と懇意であったはず。
私は、アンリ男爵と相談して、入隊は暫く控えて様子を見ることにした。
6話 南方遠征
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。