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Rendez-vous avec les Apollons パリで男たちと

パリの街で男をめぐる僕の日々。 男との出会い、セックス、恋愛。 男をめぐるさまざまな思い・・・
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2009年 月 17日 (火)

僕と仕事

Category : 考えごと・僕の思い Tag : 僕の履歴
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このあいだの夏休み、休暇旅行で真っ先に東京に寄って詰め込みスケジュールで旧友たちと会って、懐かしさいっぱいの感慨が心に染み込むのを味わう余裕もないまま東京を飛び去った・・・ということはあの頃いくつかの出来事を巡って書いた。「夏休み」といっても、別に学校のように夏休みというものが制度として存在しているのではなく、単に長期休暇を取ったらそれが夏だったというだけのことなのだが。で、あの東京でのイベントのうち、ひとつ書くタイミングを逃してしまったものがある。高校の同級生たちとの同窓会みたいな集まりについてだ。それ自体はまたとない楽しいひとときだったのだが、そこで思いがけないある質問を旧友たちから受けてたじろいで考え込んでしまったのだ。今日はそのことについて。

その話に入るための前置きが長くなってしまうが・・・

高校なんていったら卒業したのがもう20何年も前のことだ。僕の高校は3年間クラス替えがなかった。そのおかげでもあるが、どういうわけか僕のクラスは恐ろしいほどに仲が良くて団結していた。もちろん内部では仲良しグループに分かれてはいたが、それでも全員が無邪気に楽しく毎日を過ごしながらさまざまなことを3年間にわたって密に分かち合っていたと思う。他のクラスはそういうわけではなく、僕たちだけのクラスだけがまるでジュウシマツの群れのように仲良しで、毎年夏には全員でキャンプ旅行に行ったり、卒業後も毎年のように同窓会を開いていた。たぶん皆にとっても同じだと思うのだが、僕にとっては人生で得たもっとも親しくて気のおけない友達の多くがこの高校のクラスメートだ。彼らを前にすると、肩肘張らず、見栄も張らず、何でも自然に平気で話すことができる。それも、集まる人数が多ければ多いほど気が打ち解けてリラックスして自由な気分になれるから不思議だ。

校風からして自由だった。一応学区内の一番の進学校だったが、先生たちからして自由を推奨。授業の出席も適当。すべて生徒の自主性に任せるという方針が伝統だったから、僕たちも大いにその方針を謳歌した。これから授業をしに向こうからやって来た先生に「き、君たち、どこへ行くんだ?」と廊下で詰問され、「ちょ、ちょっと・・・」と笑いながらドドドーッと大勢で逃げていくなんていうのは毎日の光景だった。だから授業の出席返事も代返なんか当たり前。「おや、今日のXX君の返事はずいぶん低音ですねぇ」なんて、先生のほうも分かっていながらとぼけたイヤミを言って流してくれる。そんな自由さに僕たちの仲の良さははぐくまれたのだろうと思う。

特に男女の仲が良かった。男女の数は半々。恋愛の図式も - といっても高校生だからたかが知れているが - 複雑に展開されていたけれど、そういう動機とは別になんだか男も女も本音を交えて語って笑い転げていた3年間だったように思う。特に、まだ実体を露呈はしていなくても根がホモセクシュアルの僕としては生まれつき女の子たちとはいやが上でも仲が良かった。感性やフィーリングがどうもそういう構造になっているらしい。ゲイの男たちならばきっと身に覚えがあるだろう。今だってそうだ。男を見ると瞬時にセックス・モードで接してしまうが、女に対しては完全に打ち解け友人モードだ。クラスの他の男たちはそうではなかったと思うが、それでも男も女も仲が良かった。

もちろん卒業して何年も経ったあとはそう頻繁に集まることはなくなっていったようだ。ようだ、と言うのは僕としては20代の半ばでフランスに来てしまったからで、その後の集まりには疎くなった。で、そのぶん自分の休暇で東京に戻るときには一番仲のいい者たちに連絡をして適当に集まってみないかと誘ってみていたのだが、それがいつのまにか恒例となってきた。あまり大事になってしまっても企画が面倒だし、それにクラスの皆の都合を僕の帰国に合わせてもらうというのもちょっとずうずうしいから、そんな僕の勝手さが通用するような内輪のメンバーで毎回だいたいこじんまりと10人くらいが集まるという形で定着してきている。

今回はなにしろ僕の予定が東京4泊だったから、皆の都合を合わせるのも大変だった。いつも万障繰り合わせて出てきてくれる者が家族旅行などでどうしても参加できないということもあった。それでも今回も11人が集まった。

その場にいた男たちに限らず、クラスの男たちの多くはもう一家の大黒柱だ。もう何年も前から頭がすっかり剥げあがった大学の先生というのもいる。結婚していないなんて僕くらいらしい。女性となると、これはどういうわけか独身もまだ数人いるし子供がいなくて自由のきく立場のものが多い。そんな彼女たちはこの集まりにすっ飛んでやってきてくれる。そして今回は平日の夜だったから、皆仕事帰りに駆けつけてくれた。中には3年間のアメリカ転勤を終えて前日に日本に戻ってきたばかりという仲間もいた。

「まったくXさんは、いつも盆やら暮れやらの皆が忙しいときにやって来るんだよなぁ!で、そうやっていったいどこの国の男なんだか、何の仕事してるんだか、一人だけ違ったアヤシイ格好で現れてさ。」

とか言って誰かがまず文句を言う。僕は高校の同級生からはとても短い名前で呼ばれていて、それには語呂の都合で「さん」が常に付いている。まあ「Xさん」ということでここでは書いておこう。ちなみにけっしてアヤシイ格好なんかはしていない。単に、中年ドブネズミ・ルックではない格好をしているだけのつもりだ。

だいたい二年に一度の再会だから、会ったとたんに毎回微妙に皆お互いに歳を取っていっているのを感じる。が、一秒後にはすっかり高校時代の感覚に埋没して、かつて何度も持ち出して大笑いしたような思い出話をまた蒸し返しては懲りずに大笑いしたりしながら、時間がたつのを忘れる。

「オオタマ大ちゃんは、最近またすごいよ。今度会ったらXさんもきっとビックリだよぉ」

そんなことを言うのはマロちゃんだ。名前を音読みするとマロとなるから初日から皆、マロちゃんと呼んでいる。で、皆がオオタマ大ちゃんの様子を思い浮かべて爆笑したりする。彼がその、某大学の先生をしていてすでに禿げ上がっている男、大チャンなのだ。高校時代から大チャンというのは体育の授業の着替えのときにブリーフの中の盛り上がりが大きいものだから - それもマロちゃんの主張によるのだが - 「オオタマ大ちゃん」とマロちゃんが勝手に名付けたのだ。

「大ちゃんって、タマが大きいから大ちゃんって言うんだっけ?」

「何言ってるんだよ。大ちゃんは大岡っていう名前からだよ。ちゃんと正式に言いたかったら、『オオタマ大ちゃん』だよ。」

「あ、そうか。ハハハ。」

そんな会話が昔あったくらいに、そういうあだ名や会話は普通だった。

「エロチカにもこのあいだ出張先で会ったよ。」

マロちゃんはそうも言う。保険会社に勤めているマロちゃんは、金融界の合併に次ぐ合併で別の保険会社に勤めていたエロチカというかつての同級生とも同じ会社になってしまったのだ。エロチカというのは学校にエロ本を持ってくる専門家だったクラスメートだ。どうでもいいが、最初に持ってきた本の表紙が「エロチカ」という題名だったからだと思う。まあ、そんな感じで、このクラスには男女のあいだにも遠慮というものがない。

ところで、僕はこの高校のクラスメートたちにはとっくの昔にカムアウトしている。こうして集まっていた10年くらい前のこと、「Xさんは、その後彼女は?」とお決まりの質問が出てきたのを幸いに、「実はずっと前からいるよ。男だけどね。」というふうに答えて、それからしっかり説明した - せがまれて相棒Sの写真まで取り出して皆の手に回覧していった - のだが、果たして僕の言った意味をはっきりと理解したのは数人だけだったのではないかと思う。あまりにもあっさりと言ってしまったので冗談だと思っていた者が多かったようだ。でもその後、僕の陰でちゃんと彼らの間でディブリーフィングをしてくれたようで、噂はきちんと定着してくれているようだ。

で、だいたいそういう昔の面白い話を盛り返してきたり、今でもいろいろな仲間の風の便りをしっかり掴んでいるのがこのマロちゃんなのだが、彼とも僕は特に大の仲良しだ。話の調子も合うし、笑いのツボも同じ。性格も生活ぶりもまったく違う二人だが、真面目な話もくだらない話も大いに盛り上がる。なんとこのマロちゃんは今はこの同じクラスのミキと結婚している。ミキのほうは一度どこか別の男と結婚したのだが離婚、その後マロちゃんと再婚した。その二人の再婚は僕がパリに来たあとに起こって、そのニュースを僕に知らせてきたK男の手紙を僕はてっきり冗談だと思って相手にしなかった。本当に二人が結婚したのだと後から真剣に教え込まれて仰天してしまった。なんでもミキが離婚して数年たったある年、このクラスの正式な大規模同窓会を開くことになってマロちゃんとミキが幹事になったらしい。その折に二人のあいだに何かが生じたということだった。ミキは今もそうだが高校時代から美人で有名で、そしてどちらかというとおとなしい感じの女の子だったのだが、いつも元気でバイタリティある女の子たちの仲間に入れられてからかわれ、そして可愛がられていた。今では鎌倉の女子高で英語の先生をしていて、ほお・・・彼女はそんな女性だったのか・・・と改めて感心してしまうほどの多趣味な生活を送り、そして仕事も家事や旅行もてきぱきと精力的にこなしている。そして素晴らしい旦那思いの妻でもある。物事が分かってきた年齢になってからの昔からの素性を知り尽くしている者どうしの再婚だから、見ている僕たちですら温かく安心してしまうようないい夫婦だ。

だから僕の帰国の際の集まりでもいつもマロちゃんとミキの夫婦セットは不可欠だ。ミキなんかは「ねえ、Xさんみたいな男の人ってさぁ・・・」とそっとゲイに関する質問をしてくれたりするから大好きだ。マロ&ミキ夫婦は旅行に出かけるたびに絵葉書を送ってくれるし、毎年の年賀状は必ずマロちゃんが自分で彫る趣味のいい版画作品だ。

さて、ここから本題なのだが、そんなマロちゃんが今回の集まりで宴もたけなわとなってきたとき、ふと僕に質問してきた。

「Xさんが勤めているそのXXXXXXってところ、名前はやたら有名だけど実際には中がどうなっているのかは分からないから聞いてみたいんだけどさ・・・働いている人たちってどういう分類っていうか、仕組みになってるの?」

もっともな質問だ。たぶん知りたいことというのはこういうことだろうと想像して僕は説明した。まあ、簡単に言ってしまえば、一番キャリア色の強い総合職、そして専門職や一般職みたいな少し責任の低いカテゴリーがあって、その両者あわせてだいたい正規社員と呼んでいいだろう。実際にはそれだけでなくて契約社員や、他の会社からの出向者も多い。そして短期の臨時の社員、そして研修生というような者も常時大勢いる。

そんなことを説明した。まあ、大して目を見開くような珍しいシステムでもない。ところが、そこでマロちゃんが引き続き出して来た質問には僕は目を見開いてしまった。

「で、Xさんはさぁ、もちろん自分の価値観とかしっかり持っていて、とにかく人生を楽しくエンジョイしながら生きていっているっていうのは分かるんだけど・・・たとえばいつか正規社員になってキャリアを築いていこうとかっていう気持ちは全然起きないの?」

?!

はじめは言っている意味がまったく分からなかった。耳に入ってきた文章をすばやく頭の中で再現して意味を理解しようと努力までしてみた。が、そんなことをするまでもなく意味は明らかだ。で、僕はたじろいで黙り込んでしまった。

そう・・・そうか。僕は正規社員ではないと決めつけられていたわけか。キャリアを築くことに興味はないと見られていたわけか。

結局その場で僕は言葉を失ったまま、どう答えていいものか分からず沈黙の一瞬を作ってしまった。幸い何か別の話が割り込んできてその話は立ち消えになって僕もサッと次の話へと移っていった。が、楽しい一晩が終わって日が流れ、この楽しかった集まりを回想しているとあのときのマロちゃんの質問が甦ってきて、彼の言葉の裏のさまざまなことについて考えが巡るのだった。

確かに僕は一度も高校の同級生の前でこれまで自分のパリでの職場の詳しい話をしたことはなかった。自分の仕事ぶりについても話したことはない。そもそも僕が彼らに会うのは毎回こうして東京に休暇でやってきている時なのだ。すっかり気分はバカンス。ということは彼らの目に映る僕というのは、一にも二にも休暇の男。旅行に飛び跳ねている男。おまけに年に何度も長期のバカンスをとってあっちこっちから絵葉書を送っているから、僕のイメージから「仕事」を思い浮かべるのは難しいのだろう。

とは言っても。何の話も聞かずにもう頭からマロちゃんは思いこんでいたということだろうか。僕は仕事に確執がなくてキャリアに興味がない。よって正規社員ではない、と。学歴を棒に振って、キャリアを捨てて、享楽ひとすじに人生を生きるのみ、そういう男ととらえていたらしい。といっても普段の僕へのマロちゃんの態度を見ても、そこには軽蔑や憐憫の様子はまったくない。むしろ感嘆尊敬している様子だ。だが、その賞賛は、キャリアにとらわれずにひたすら人生を楽しくのみ過ごそうとしている点に向けられた賞賛だったわけだ。

マイッタ。開いた口の上下の歯の間で舌が引っかかったまま、僕は考え込んでしまった。ううむ。あの場にいた他のクラスメートが僕のことをどうとらえていたのかは分からないが、一番理解しあっていたと思っていたマロちゃんからこういうことを言われたというのは大きな衝撃だった。

しかし・・・彼を責めることはできないのかもしれない。僕は彼と自分との境遇や環境の差について改めて考えてしまった。さっきも書いたがマロちゃんは大手の保険会社に勤めている。もう僕たちの歳になれば少なくも中間管理職だろう。上と下からの圧力に挟まれて大変なことだろう。年中出張で国内を飛び回っていて、あの晩も仙台への出張から帰ってきたその足で宴会に駆けつけてきた。なにやら仕事が大変で容赦なく厳しいという様子は昔から僕も感じてはいたのだ。

が、そういう彼の背後の様子を僕は見ることができていたのだが、彼からは一度も僕の背後を見ることはできなかったに違いない。そもそも日常生活と仕事のことは毎回パリに綺麗に置き去って、帰郷帰郷と浮わついて僕は東京へとやって行くのだ。そして東京帰郷の際にはさらに一ヶ月の休暇をとって、「さあ、東京のあとは今回はね・・・」とどこそこへの大旅行を控えた揚々気分でやって来る。そんな状態の僕しか、彼はこれまで見たことがないのだ。

これでは、日本の社会人の通常の感覚から見て、当然「こいつはキャリアを捨てたんだな」と思うことだろう。たとえパリでの毎日をフランスや他国の人間たちと競争しながら大汗かきながら仕事に邁進していたとしても、信じてもらえないということだ。「じゃあ、なんでそう次から次へと休みをそんなにとれるのさ!?」という疑問を激しく突きつけられてしまうことだろう。そういえば、昔からマロちゃんやその他のクラスメートから言われていた。

「Xさんってさぁ、なんでそうやっていつも苦悩もストレスもまったくないような感じで元気溌剌でいられるのぉ? うらやましいよ。」

僕としては、何度も言うが、東京に出向くときにはバカンス・モード全開なのだから、その瞬間の僕には苦悩もストレスも微塵も漂っているわけがない。ところが、マロちゃんとしては、そんな僕の能天気な様子こそが僕の日常基本形でそれなりに特別な理由があると思いこんでいたのだろう。あんなに元気いっぱい人生謳歌しているのは、仕事にまったく思い入れも未練もないからだと。世界中に名の知れたところで働いてはいるけれど、臨時の契約を転がしながらなんとか生きていっているのだと。そういうふうにキッパリとキャリアを諦めて外国でリスキーな生き方をし続けるなんて、豪快でXさんらしいよな・・・と。

僕があのとき口をあんぐり開けてたじろいでしまったのは、ああ言う質問をしたマロちゃんにまったくネガティヴな感じや嫌味や皮肉を言っている様子がなかったということもあった。もしも何かしらの意味合いを込めていたら、もうそろそろ30年になる付き合いだ、僕には一瞬のうちに感じ取ったことだろう。彼は、彼が思いこんでいる僕の生活スタイルを完全に支持し認めたうえで、単に素朴に「ところで仕事っていうものには、やっぱりまったく思い入れがないんだねぇ?」と軽く念押しに尋ねてみただけのようだ。

この一連の話を、パリに帰ってきてからこっちの親しい日本人の友人たちに話してみた。そうしたら、皆大笑いしながら、それでも「ううむ・・・」と唸って考えこんでいた。

「よく考えてみたら、そりゃそうよ。貴方みたいな生活は日本では考えられないのよ。その歳の男の人たちって、皆毎日仕事に追いまくられてそりゃ大変なんだから。休暇なんてろくすっぽ取れないはずなのよ。で、仕事から一歩出れば今度は家のことが待ち構えているでしょう。妻とのこと、義理の家族のこと、子供の相手、教育のこと・・・。そういう苦労じみたこと、貴方は何一つ抱えていないんだから、そりゃ、彼らから見たら普通には見えないわよ。」

休暇なしか・・・。それに家のことっていえば、僕の場合は週末の相棒Sのことだけだ。自分の親兄弟ともほとんど絶縁しているようなもんだ。子供の相手? 猫の相手なら毎日している。

「もし、貴方みたいな悠長な生活を送っている男が仕事もきちんと持っていてこなしているとしたら、そりゃもう許せないことになっちゃうんじゃない? ありえないのよ。だから、ああ、あいつはあんなに優雅な人生を送っているけれど、それは仕事というものを犠牲にして捨てたからこそできる生活なんだな。安定を捨てて自由を手に入れたんだな。だったらいいか。おあいこだ。自然にそういう結論になるのよ。そういうふうに納得する以外にありえないでしょう。」

そう言うのはいつものN子さんだった。N子さんは長いことパリに住みながら、普段からフランスと日本を行き来して日仏の企業間の進出の橋渡しやコンサルタントの仕事をしている。だから彼女の日仏の社会や文化の比較論はいつも洞察深い。

「その上、貴方みたいに仕事を終えた足で毎晩そうやって男遊びしながらそっちのほうもとことん謳歌しているなんて知ったら、大変よ。ただじゃすまないわよ。」

が、そう言いながら納得している彼女も、マロちゃんの僕への質問をもっともだと思う半面、やっぱり僕と同様、意表を衝かれたらしくて笑いながら頷いていた。

が、海外、特にフランスに住んでいる人ならば分かることだろう。この国では、仕事に燃える経営者自身は別として、よっぽどの責任家気取りか何か魂胆でも持っている者でないかぎり、どの会社でも皆休暇をしっかり取るのだ。年に6週間。僕も年々取りにくくはなってきているが、それでも仕事のサイクルを睨んでここぞと思ったところにどんどん休暇の予定を入れて周りに年中宣言しておく。彼らも次から次へと休暇を申請しにくる。「私、まだ今年4週間しかとっていないんです。」という口調で権利主張してくる。なんだか一年中スタッフの休暇の調整をしているような気分になってくるくらいだ。年に6週間の有給休暇ということは、二ヶ月に一回一週間休暇がとれるというリズムだ。それくらいだと、どんなに仕事が嫌だとしても、大変な仕事が続いていたとしても、「あとひと月ちょっとしたら一週間休暇が待っているもんね」とすぐ先の休暇を楽しみにしながらたいてい頑張りがきく。そして全員がそういうリズムで休暇を取っているから、休暇に出ている者への妬みや批判もない。それで組織や社会が、国が、回っているのだから、誰も文句も言わない。

休暇というが、それは単に「休暇」というひとことで片付けられるものではない。休暇は、それを制度化した人間たちの精神原則を表す一要素にすぎない。人間たちが仕事というものをどういう概念で定義しているのかということによって、休暇の意味が定義されてくる。仕事とは人間の人生にとってどういう位置づけにあるべきなのか。生きる糧を得るための、金を得るための手段なのか。社会に貢献し社会生活を潤わすためのものなのか。他の人間との共同生活と集団の一員として生きるための道標なのか。あるいは自分個人の目的を達成するための手段、自分の生活を豊かにするための手段なのか。そういった思考考察を長い歴史のあいだに経て、国民全体が仕事というものをどういう位置づけにとらえるに至ったかによって、休暇の制度ができあがる。なにしろ「休暇」というのは「仕事」の対極なのだから。仕事に対する哲学が定まったうえで、じゃあ仕事をしない休暇というものはどういう意味をなすのかが決まる。仕事の定義しだいで、休暇は罪悪にもなれば美徳にもなる。

僕が日本の会社を辞めて、何の足場もないのにパリでまだ形もまるで見えない人生を必死で盲目に描きながら生活をゼロから始めたとき、極端に言ってしまえば、僕の心に吹き荒れていた要因というのは自由と欲望だった。休暇に代表される人間らしい生活の潤いと自由。そして男たちとのセックス。言い換えれば、会社や組織に束縛されない、生きる上での精神的な自由。そしてこの地に住む僕の好みの男たちとの際限ないセックス。そう、そのたった二つの要素が、僕にとって最大唯二の人生の条件だった。それを譲るのなら死んだほうがマシだと心に誓っていた。甘いと批判されようと、僕にとって重要なのは自由と欲望充足だった。

そうして今自分の生活を眺めていみると、なんとか今その二つを謳歌していると思う。ただ、自由を保持しつづけるのは易しいことではない。会社や組織に呑み込まれないためには孤独にも通じるほどの冷酷さと厳しさが要される。可笑しいことに、職場では僕のことを皆仕事の鬼だと思っている。アフターファイブのプライベート生活や趣味というものをまったく持っていない堅物の男だと思っている者が多い。ひょっとして多くの同僚は僕のことを僧侶か童貞だと思っているのではないだろうか。なのに、仕事の外の友人や、あるいは何度も会って少し気心を知ったセックス・フレンドになると、彼らは僕のことを仕事をまったく真面目にしていないチャランポランな男だと思っているのだ。それもそうだろう。職場では僕は決して、断じてプライベートな話はしないし仕事以外の話もしない。同僚と食事をしたりアフターファイブの時間を共有することもことごとく断っている。その反対に仕事の外の友人とは仕事の話はいっさいしない。すくなくとも仕事に関して真面目な話をすることはない。そんなふうになるつもりはなかったのだが、今悟ってみると僕はそういう人間なのだ。

欲望にいたっては、もちろんこれでもまだ十分ではないが - できれば毎日違う男3人と3回セックスしたいものだ - 自分の容姿、度量や歳を考えれば最大限に謳歌していると思う。まあたいていのことはこのブログに書いてあるから説明はいらないだろう。が、本心を言えば、このブログでも僕は仕事のこともいっぱい書いてみたいのだ。職場を明かしたらさぞかし面白いことだろう。皆が知りたいとかねがね思っているようなこの業界の本当の話や裏のエピソードを披露したら話は永遠に尽きないし、きっとセックスの話よりも何倍も面白いことだろう。現に海外で僕と同業の仕事をしている日本人の多くはそういった話の記事を雑誌に定期投稿したりブログに書いたりして好評を博している。が、僕はそれができない。もちろん自分のせいなのだが、自分のプライベートな生活を、男たちとのセックスライフをここまで正直に書きまくってしまったからには、今さら同じブログ上で「実はどこそこでこういう仕事をしている者です」とは生きているかぎり言えないだろう。芸術関係のクリエイティブな仕事をしているカリスマ男なら言えるだろうが、僕がそんなことをしたら職場から追放されるまでだ。

仕事とセックスが人生の二大柱なのだが、僕にとってはその二つの柱はあまりにも向こうとこっちで遠く離れて立っている。遠く離れたまま、それぞれがすっかり太くどっしりと居座ってしまって、もうどうにも交わらない状態で聳え立っている。が、それもまた良し。天井はしっかりと支えられえていると思う。



PS. ちょうど今これを書き終えてブログ更新をしたとたん、郵便箱に見覚えのある文字の書かれた封筒を見つけた。マロ&ミキからの便りで、この夏の集まりの時に撮った写真が入っていた。本当に本当のことだ。あまりものタイミングにあいた口がふさがらない・・・



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旧コメント

1 ■驚きました。


最近の二件のブログから、お会いする方々がSiriusさまの職業を聞いて驚かれる理由がわかりました。でも、お仕事の情報、少し詳しすぎやしませんか。

ダコタ 2009-11-18 03:27:26


2 ■無題

初めまして。
いつもブログを楽しみに読ませていただいております。これほど胸に響く言葉が散りばめられているのに、毎回無料で拝読してもいいものか・・・と一人複雑な胸中です。(大きなお世話ですが・・・)

この世界に生きているという枠は同じなのに、Le Siriusさんのフィルターを通すと、どうしてこれほどまでにこの世は充実していて美しいものとなるのか。
ブログを拝読するたびに、ただひたすら毎回感動して圧倒されて、そして自分の中にどこからともなく、生きる活力のようなものとウキウキした楽しさが芽生えてきます。
いつもその美しい世界観を見せて下さり、ありがとうございます。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

私は東南アジアにある経済的に安定した国で、現地人の男性と結婚し生活しております。
休暇取得についてはフランスと同じようにはいきませんが、それでも日本の一般的な職場環境を考えると想像つかない程時間の融通が利きます。そして、皆さんにとって仕事というのは、プライベートを犠牲にして成り立つものではなく、かといって仕事が犠牲になるわけでもなく、LeSiriusさんの仰るとうりそれぞれは2本の違う柱で成り立っているように見受けられます。

それぞれの国で、こうであるべき基準は違うけれど、だけどいつだって、自分が今を心地よく生きることが大切だなと思います。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

死ぬ気なんてさらさらなくて、明日はまた絶対くると信じてる。だけど明日死んでしまっても後悔しないように今日を全うすること、を心に誓っています。

LeSiriusさん、いつも素敵な文章をありがとうございます!
お身体に気をつけてお過ごしください。
それではさようなら。

南国暮らしの主婦 2009-11-18 13:06:32


3 ■ダコタさんへ

読んでいただいてありがとうございます。そしてこの貴重なコメントも。

そうですね。ご指摘のとおり、最近の記事の中の描写、詳しすぎたようです。ダコタさんは僕の勤め先を断定されたのでしょうか。それとももしかしたら同じところにお勤めなのでしょうか。そうだとしたら僕としてはもう逃げも隠れもできませんが、もしも勝手な願いが許されるのならば、どうか詮索されず、誰にもこのブログの存在をお広めにならず、そして今後とも読み続けていただきたいと切に思います。

そしてよろしかったら是非別途個別に僕にご連絡をいただけたら嬉しく思います。

このブログと僕の勤務先との関連が生じてはやはりいけないと思いますので、記事の当該部分については少し書き直しました。今後は注意したいと思います。

どうぞ宜しくお願いいたします。

le Sirius 2009-11-19 01:08:26


4 ■南国暮らしの主婦さんへ

こんなに温かく素晴らしいコメントをいただいて・・・なんとお礼を申し上げたらいいものか、胸がいっぱいです。正直に言って自分で書いていることがどんなふうに皆さんの心に伝わっているのか、いつも自信がないのです。今回はとても勇気づけれられて、これからも続けていこうという意欲が湧いてきました。

東南アジアの経済的に安定した国ですか。どこだろう?・・・と興味がわきます。マレーシアかな、などと。そこでのお暮らしはもう長いのでしょうか。

外国に住んでいてもその国の人間にまったく同化するわけでもなく - そういうつもりもないし - 五里霧中をなんとか生き抜いていくと、不思議な人生観が身についてくるような気がするのです。僕だけかもしれませんが。自分と同種の守ってくれる国や社会というものがないという認識からか、何にも頼らずに自分だけの一度の人生を自分らしく思う存分生きていきたいという気持ちが強まります。そう、死ぬつもりはないけれど、明日死んでしまうようなことになってもいいのだという構え。別に人類史に大きな足跡を残さなくてもいいけれど、変わり者だろうと無謀者だろうと何でもいい、唯一の存在である自分という人間にふさわしい軌跡を描きたい。この記事に出てくるマロちゃんが昔僕に言ってくれていました。「Xさんを見てると、いつ死んでもいいんだ!っていうエネルギーを感じるよ。」

ちょうど今、窓の外にはデコボコと建物が描く地平線の向こうに紅の空が輝いています。でも、それはもう秋の最後を宣言するような冷たく神々しい夕焼け。お暮らしの南国では、おそらくこれからが暑いながらも気持ちのいい季節になっていくのではないでしょうか。

お元気で。これからもよろしく。

le Sirius 2009-11-19 01:41:05


5 ■英雄色を好む

 まさしく、この言葉がSiriusさんにはぴったりだと思いますし、僕の中でも思いがありまして仕事できる=SEXにたける=遊び上手。

 仕事を犠牲に・もしくは出世を諦めるから思いっきり自由になれるという考えは僕の中ではないですね。

 最高のSEXに出会った時には、相手が仕事の話をしなくともきっと敏腕なのだと感じますし。実際そうであることがほとんどです。

 ただ、Siriusさんの仕事の面はあまり知りたくないなぁって思うこおもあります。言葉にしなくともSEXで解るからです!!

 最後に、誤解がないように。当然僕はSirusさんとは面識はありませんよ!!

たろう 2009-11-19 08:55:02


6 ■たろうさんへ

英雄色を好む、とはこれまた過大なComplimentをどうもありがとうございます。でも、僕が色を好むという点は事実とみなしていただいて結構なのですが、「色を好めば英雄」というわけではないので僕をよーく知っている人たちは陰で笑うかもしれません。(^O^) でも、幸い・・・僕の仕事ぶりと私生活の両方を知っている人というのはこの世で一人もいないということに今気づきました。いや、もしかしたら一人だけいるかもしれません・・・かつての同僚かつ良き友人。今は遠いところにいますが。でも一人だけです。だからこそ、こんなブログを書いていられるんですけどね。(*^▽^*)

ともかくも、僕のことは置いておいて、僕自身も「英雄色を好む」という諺には大賛成。エネルギー、知性、性欲、みな同じ源から出てくるものですから、本当にバランスよくすべてに秀でている人間は当然「色」にも秀でるはずです。そして・・・いや、しかし・・・今思いついたのですが、色というものはやっぱりちょっと曲者ですね。というのも本人一人が勝手に色に長けていても - 本人一人で性欲旺盛でも - モテて性の相手に恵まれなければ「英雄色好めず」になってしまいますよね。英雄だけど不細工なために「英雄色好む」と称されない・・・結構そういう人が多いのでは、現実の世の中は。(ノ_-。) で、英雄仕事にのみ励む。そうなっていく。で、結構そういう人たちが世の中を支配しているものだから、「色も好む英雄」に対して反感というか妬みムードが生まれる。まあ、色を好むのは誰にでもできるけれど英雄になるのは難しいということを考えると、たとえ色を好めなくても英雄になって仕事に邁進している世の中のリーダーたちはそれなりに偉いということにはなるのでしょうか。(^_^)v

今度、まさしく「英雄色を好む」にふさわしい男たちをじっくり探して、彼らについて書いてみたい気が湧いてきました。

言い遅れましたが、たろうさん、面識はないものの僕のブログを当初から温かく読んでいただいて、ありがとうございます。

le Sirius 2009-11-20 02:01:10
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プロフィール

Le Sirius

Author : Le Sirius
    
パリの街で男をめぐる僕の日々。男との出会い、セックス、恋愛、相棒Sのこと・・・

パリの男たち。パリにやって来る世界の男たち。男たちのまわりに僕の暮らしがある。一瞬の熱い出会い。数日のつきあい。ゆったりと流れる友情への道。形はさまざま。

好きな方向へ、したいことを奔放に求めて駆けてきたら、今日の自分がある。仕事、遊び、友人、趣味で埋まる日々の隙間を縫って、毎日のどこかに濃厚で楽しい秘密の時間が陣取っている。

そんな日々の情景そして僕の心の中の景色について、国を越え海を越え、昨日、今日、明日の時空を越えて書き綴っていこう。


Le Sirius宛てメールアドレス: 
sirius.apollon@gmail.com


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