医者の約半数が地方勤務希望?「医師10万人調査」に批判の声

延期されていた医師需給分科会が半年ぶりに開催された。

厚生労働省が4月20日、第9回となる医師需給分科会を開催した。同会議は外部から有識者を招き、医師不足・偏在など、日本の医療の未来を左右する問題について対策を話し合うもの。

これまで約1カ月に1回のペースで開催されていたが、後述する事情で延期され、前回から約半年ぶりの開催となる。

その中で、6日に厚労省が発表した「医師の勤務実態及び働き方の意向等に関する調査(通称:医師10万人調査)」の結果に批判の声が上がった。

Seiichiro Kuchiki / BuzzFeed

10万人調査は厚労省の別の会議「新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会(ビジョン検討会)」が実施し、報告したもの。全国の医師10万人を対象に配布し、約1.6万件の回答があった。

医師需給分科会などの他の関係会議は、この報告書の「内容を踏まえ」て今後の議論を進めるように求められている。医師需給分科会の開催が延期されていたのも、この調査結果を待ってのことだった。

調査結果の発表後、話題になったのは、50代以下の勤務医のうち「約半数」が「今後、地方で勤務する意思がある」と回答した点だ。ビジョン検討会はこれを受け、医師に地方勤務の意思ありとし、さまざまな提言をしている。

この調査結果はメディアでも多数報じられていた。 厚生労働省 / Via mhlw.go.jp

しかし、医師需給(不足・偏在対策)に関する政策決定に重要な役割を果たす医師需給分科会では、この報告書に対して疑問が続出した。そのうちいくつかは「地方勤務の意思」についてのものだった。

ささえあい医療人権センターCOML理事長の山口育子氏は、「地方勤務の意思あり」とした「約半数」には、「現時点で地方勤務の医師が含まれているのではないか」と質問。

今、すでに地方で勤務している医師は、地方勤務の意思が強くて当然であるとの考えを示した。

これに対して、厚労省の担当者は「地方勤務の意思あり」とした回答者に「地方勤務の医師が含まれている」ことを認め、さらに「地方勤務の意思なし」とした回答者に、都市部で勤務している医師が多かったことも明らかにした。

また、全国自治体病院協議会会長の邉見公雄氏は、この結果を「デタラメ」と強く批判。「(医師が不足・偏在している)地方に行きたいか、と聞かれたら、多くの人は(医師としての正義感から)行きたいと答えるだろう」と述べた。

「しかし、実際には(地方に)行かない。私はもう、この結果を信じるほど、お人好しではない」と、長らく地域での医師確保に携わってきた経験から発言した。

そもそも、「10万人調査」という通称に対して、回答者は約1.6万人と、回収率は低い。回答するのは働き方に課題を感じている医師が主になる可能性もあり、未回答者によるバイアス(意見の偏り)がある可能性もある。

津田塾大学総合政策学部教授の森田朗氏は、会議の最後を「半年間も中断したことで、それぞれ思いはあるだろうが、医師不足・偏在は緊急の課題。後ろ向きではなく、前向きな議論を」と呼びかけ、まとめた。

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