たまに夢に出てくるシーンがあります。
昔の思い出でもあるシーンなのですが、歳を重ねてもふと夢にあらわれてくるのです。
なぜだろう。忘れられないからなのかな…
颯爽と風を切って走る1台のスポーツカー。
夢の中で夢中になってハンドルを操る自分がそこにいます。 頭ではわかっているはずなのに"夢なんだ"と気付かない程にドライブを楽しんでいます。
そんな夢を時々見ます。
アイツ(スポーツカー)との出会いはもう10年以上前に遡ります。
高校卒業後、なんとか就職することが出来て1年が経とうとしていた頃でした。
車にはそれほどの執着がなく車種なども詳しくなかったのですが、ドリフト好きな会社の同僚の影響からスポーツカーへの興味を持ちはじめました。次第に僕の気持ちにも変化がではじめて
「どうせ車に乗るならスポーツカーに乗ろうかなぁ」
となっていきました。
それからは車を買う為の資金を貯めるためにコツコツと貯金をしていきました。
そしてある程度お金が貯まった頃から、わくわくするようなスペシャルマシンを探すようになりました。
ある程度中古車屋さんを回っていましたが、わくわくどきどきするようなマシンは見つからず、何とも言えない日々を過ごしていました。
そんな中、実家から職場へと通う道の途中に一軒だけある中古車屋さんに古びた黒のスポーツカーが展示してあることに気付きました。
「あっ…なんかいいかんじだな…」
そうなると、自転車で通う行きも帰りもじろじろと眺めながら帰るのが日課になっていました。
「少しボロいけれど、カッコいい。」
「でも、他にもっといい車があるよね…」
少しづつ自分の中でアイツの存在が大きくなっていることに気付いてはいるものの、購入には至らない…
その後も中古車屋さん巡りをしましたが、気に入る車がありませんでした。
「アイツしかいないかな…」
そう思った時からは
「1度、車内や状態を見てみたいな」
「誰かが買っちゃったりしないかな」
「次の休みの日に見に行ってみよう!」
もう迷いはありませんでした。
人生で初めて買った車。
頑張って貯めた60万で購入。
ところどころには事故の後なのか?擦りキズがいっぱいありましたが、僕の中ではピカピカにまぶしいポルシェを購入した気分でした。
今でもあの日のことを思い出す。
運転免許証取得から1年が過ぎてしまい、初運転の時にはノッキングやエンスト。そして吹かし過ぎの嵐だったということ。
中古車屋さんのお兄さんが試練と題してガソリンを入れてと千円を渡してくれたこと。
そして親父がマニュアル操作の手本を見せてくれたこと。
とても懐かしいです。
それから結婚とガソリン価格の高騰を機に乗り換えるまでの6年間は、いつもアイツのことで頭がいっぱいでした。車をいじることが趣味にもなっていました。
色んなことがあって、綺麗にしてはボロボロに戻りを繰り返したけれど、ずっと輝いていてくれました。
出来るものなら手離したくはなかった。
いつものドライブコースをもっと一緒に駆け抜けたかった。
もう一度ドライブ行きたいな…
だから夢に出てくるのかな……
少しでも感覚を忘れないでいたいという思いから、乗り換えた軽自動車もマニュアル仕様を選びました。ですが余計に寂しく感じてしまい、アイツを忘れさせてはくれませんでした。
今ではオートマの普通車に乗っています。
歳をとって、子ども達が大人になったら"もう一度スポーツカーに乗りたい"という夢はずっと心の中にあります。絶対に叶えます。
でも愛しの"アイツ"を越えるスポーツカーはこの世に存在しないんだろうな…
これからも夢にあらわれてくれるはずです。
夢で会えることを楽しみに待つとしよう。