横須賀美術館は建築からレストラン、絶景まで楽しめるスポットだった!

2017.04.20

美しい海と豊かな自然に恵まれた神奈川県横須賀市。ここにある「横須賀美術館」は、過去にアート情報サイトartgene(アートジェーン)が全国に約450ある美術館のなかから選ぶ「絶景美術館トップ5」に選ばれたことがあり、特に屋上広場から見える東京湾の景色は圧巻なのだとか。また、併設されたレストランや建物そのものを目当てに遠方から訪れる人も多いといいます。どんな素敵な美術館なのでしょうか?さっそく行ってみました。

海と森、自然と一体化する美術館

京急本線・馬堀海岸駅から「観音崎」行きのバスに揺られること約10分。「観音崎京急ホテル・横須賀美術館前」から徒歩2分の場所に美術館はあります。美術館へ向かってすすんでいると、目の前に鉄の谷のようなオブジェが。
こちらは鉄、銅、鉛などの金属素材を用いたアートで有名な芸術家、若林奮(わかばやしいさむ)の鉄の彫刻「Valleys(ヴァリーズ)」。ぴったりとつながった無機質な分厚い鉄の壁の間を通るのは、なんだか不思議な気分です。そしてここを抜けると、横須賀美術館の全貌が見えてきました。
▲横須賀美術館のエントランスと「海の広場」。ここから目の前に広がる東京湾を眺めることができる

前方は東京湾に面し、裏手には豊かな観音崎の森が広がっています。近寄ってみると建物の半分は地中に埋まっているようです。なかなか面白い構造ですね。
横須賀市の市制100年を記念して2007年に建てられた横須賀美術館。建築家の山本理顕(やまもとりけん)氏が設計しました。建物のコンセプトは「環境全体が美術館」。これは、地形を利用して景観と建物を一体化させる、という考え方です。横須賀美術館は前方を海に、後方を山に囲まれています。海側から見た時、背後の森が見えるよう建物の半分を地中に埋めているのです。建物自体もまわりの景観との調和を考えて、ガラス張りにしています。

建物の中は一体どのようになっているのでしょうか?さっそくなかに入ってみることにしました。

やわらかな光に包まれて、ゆったりと芸術鑑賞

エントランスをくぐると、天井から差すやさしい光に包まれます。入口の方向を振り返ってみると円に切り取られた東京湾が。
鎌倉に丸窓から庭の景色を覗けるお寺がありますが、それの海版といったところでしょうか。見事な景色にしばらく見入ってしまいます。

美術館内のところどころにこういった仕掛けがあります。探す楽しみが出来ますね。
▲美術館の内部から覗いた併設のレストラン「横須賀アクアマーレ」。まるで一枚の絵画のよう

建物にはたくさんの丸窓があります。そこから差し込む光によって、まるで海を進む船のなかにいるような気分や、木漏れ日の差し込む森のなかにいるかのような感覚になります。
▲カーブした角のない天井と、たくさんの丸窓
美術館には日本近現代美術の作品約5,000点の所蔵があります。所蔵品展ではそのなかから年に4回、その時のテーマに合った選りすぐりのものを選んで展示しています。
▲広いスペースを利用して、作品同士の間隔を空けて展示しているため、ゆっくりと鑑賞できる

横須賀美術館の館内には開放的な図書室があります。ここには約3万冊もの蔵書があり、美術の専門書以外にも、アート雑誌や、現在の展示作品に関係する資料、海外の絵本などもあるため、ゆっくりと展示作品や海外のアートについて知識を深めることができます。
▲落ち着いた環境で読書を楽しめる図書室、美術を学ぶ人にも重宝しそう

まるで絵画のような絶景、屋上広場から眺める東京湾

それではお待ちかね、横須賀美術館からの絶景を見ることにしましょう。館内の階段で、屋上広場まで上って行きます。

途中、屋根と建物の天井の間の構造が見える小屋裏スペースが。建築や設計に詳しい人には、たまらないスポットかもしれませんね。
▲小屋裏スペース。外壁ガラス張りなので海を望める

2階分の階段を上り、ようやく屋上広場のペントハウスに到着。目の前には素晴らしい光景が広がっていました。
▲ペントハウスからは地平線が見える

大きな窓の向こうに広がる海と空。まるでアート作品のような美しさです。しばらくの間、この特等席ともいえる場所からの景色に釘付けになりました。ここから東京湾を眺めていると、海を通る船の多さに驚かされます。タンカーやフェリー、ヨットなど、一日で約500~700隻もの船が行き来するのだとか。

ちなみにこの場所は、全国の景観が美しいデートスポットが選ばれる「恋人の聖地」に選ばれています。確かに二人の仲がより深まるような感動的な眺めです。
ペントハウスから屋上広場に出てみました。ここからだと、爽やかな潮風と太陽の光を感じることができますね。
▲山側の「山の広場」からの眺め。向こうには屋上広場とペントハウスが見える

もちろん展示作品も素晴らしいですが、この場所自体が美術館のようでいつまでも眺めていたくなります。

東京湾を眺めながら味わう、絶品イタリアン

アーティスティックな建設や展示作品、雄大な景色を堪能したあとは、海の見える美術館併設のイタリアン「横須賀アクアマーレ」に向かいました。こちらは、美術館の正面にある「海の広場」に面したレストランです。
▲海風を感じながら食事を楽しめるテラス席も
店内は、全席オーシャンビュー。壁一面をガラス張りにした大きな窓から東京湾を眺めることができます。白と青を基調とした内観も素敵ですね。
▲ゆったりとした店内で美しい絶景を眺めながらイタリアンをいただける

「地産地消」をモットーにしているこちらのレストランには、神奈川県の各所から野菜や魚介など新鮮で美味しい食材が集まります。季節の食材をたっぷり使ったイタリアンを食べに県外からも多くのお客さんが来るのだそう。

料理にも大変こだわりがあり、美術館とのコラボメニューやシェフのおまかせコースなど、気になるメニューがたくさん。今回は、ランチのパスタセットをいただくことにしました。
▲パスタセット(1,300円・税込)。「菜の花とアンチョビとプチトマトのパスタ」にサラダ、コーヒー付き

さっそく、アンチョビの濃厚な香りが食欲をそそる「菜の花とアンチョビとプチトマトのパスタ」パスタをいただきましょう。菜の花のほろ苦さとアンチョビの塩気がほどよく効いており、そこにプチトマトが爽やかな酸味と甘みを加えています。
美しい東京湾の景色が、料理の味をさらに引き立ててくれます。あまりの美味しさにペロッといただいてしまいました。

大満足のランチコースでしたが、甘いものは別腹です。こちらのもう一つのオススメは、種類豊富なデザート。季節によって変わるメニューもあるそうですが、今回は定番メニューの「イチジクとくるみのケーキ(500円・税込)」をいただきました。
一口食べてみると、くるみの素朴でやさしい味が口の中に広がります。バターをたっぷりと使用しているため、しっとりとした食感と深い味わいが特徴的です。

美術館に負けず劣らず、魅力たっぷりのレストラン「アクアマーレ」。こちらは、ディナータイムも営業しているため、美術館の閉館後に昼間見たアートについて心ゆくまで語り合っても。もちろん、レストランのみの利用もおすすめです。

ほかにもいろいろ!見どころたくさんの横須賀美術館

横須賀美術館には、まだまだ見どころがあります。本館横にあるのは、「谷内六郎館」。こちらには『週刊新潮』の表紙の絵でお馴染みの谷内六郎の作品が多数展示されています。
古き良き日本の人々や四季を情緒豊かに描いた作品は、見ているとどこか懐かしく、やさしい気持ちになります。こちらでは、四季にあわせてその季節を描いた作品を展示しているので、タイミングを変えて何度も訪れたくなります。
観音崎にアトリエを設けていたという谷内六郎。今いるこの場所からインスピレーションを受けてこれらの作品が生まれたのかと思うと、感慨深いですね。

さいごに立ち寄りたいのは、美術館の入口近くにあるミュージアムショップ。ここでは、展示作品の絵葉書をはじめ、たくさんのお土産が用意されています。
なかでも人気があるのは、ここでしか手に入らない谷内六郎関係のグッズ。コレクションや大人の塗り絵などいろいろあって迷ってしまいそう。
▲左から時計回りに「谷内六郎コレクション(1,230円・税込)」、「谷内六郎 大人の塗り絵 子どもたちの四季編(918円・税込)」(※カレンダーは売切れで入荷未予定)

こちらは横須賀美術館限定のトートバック。しっかりした作りとお手頃価格(410円・税込)で人気なのだとか。
展示作品のポストカード(一枚100円・税込)も。自分の気に入った作品のものを選びたくなりますね。
自然に溶け込んだ素晴らしい設計と、魅力たっぷりの見どころがある横須賀美術館。横須賀を訪れた際には、ぜひ立ち寄ってみてください。
立岡美佐子

立岡美佐子

編集プロダクション・エフェクト所属の編集者&ライター。好きなものは、旅行とごはん。おいしいものやステキな景色のためならば、日本といわず世界各国どこへでも! 住まい、旅、食、街などジャンルを問わず執筆中です。 編集:山葉のぶゆき(エフェクト)

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