別府・明礬温泉で押さえたい絶景露天に地獄の泥湯、地獄蒸しプリン!

2017.04.19

あちこちに湯が湧く別府の中、最も標高の高い温泉地が明礬(みょうばん)温泉。別府でも珍しい硫黄の香り漂う白濁の湯が湧き、その温泉成分を凝縮して作られる天然の入浴剤「湯の花」も、この地の名物。今回はそんな明礬温泉を代表する2湯と、地獄から生まれる湯けむりスイーツをご紹介します。

湯けむり、硫黄臭、湯の花小屋が点在する山間の温泉地

大分自動車道を大分方面へと走り、左手に別府湾を望みながら明礬大橋に近づくと、やがてぷ~んと硫黄の香り。まさにその真下に広がるのが明礬温泉。
明礬温泉は鶴見山麓にある温泉エリア。地下30cmあたりに温泉脈を持つ地熱地帯で、さまざまな場所から硫黄の香りいっぱいの温泉蒸気が噴き出しています。
明治8(1875)年創業の老舗旅館をはじめ、風情あふれる温泉宿が多いのも明礬温泉の特徴。現在、10数軒が営業しています。
▲「湯の花小屋」と呼ばれる三角屋根のわら葺き小屋も至る所に点在

この湯の花小屋の中では、江戸時代から変わらぬ製法でアルミニウムと鉄の硫酸合物、明礬が作られています。かつては薬、火薬、染め物、鍛冶溶接、絵画など多方面に使用された明礬ですが、現代では天然の入浴剤「湯の花」をはじめ、数々の美容グッズの原材料になっています。

明礬地区に23棟あるといわれる湯の花小屋は2006年、国の重要無形民俗文化財に。また、立ち昇る湯けむりと湯の花小屋という明礬温泉ならではの風景も2012年、国の重要文化的景観に指定されました。

明礬温泉の魅力をコンパクトにまとめた湯の花テーマパーク「明礬 湯の里」

▲明礬温泉ならではの白濁の硫黄泉が楽しめる露天風呂もあり

「明礬 湯の里」は、江戸時代から湯の花を作り続ける「みょうばん湯の里」が運営する総合温泉観光施設。約1万坪もの広大な土地に湯の花小屋が建ち並び、湯の花関連のグッズを製造・販売するほか、上記のような露天風呂に貸切湯、郷土料理が楽しめるレストラン、和雑貨などを有する売店など、まさに「湯の花テーマパーク」!
▲敷地内には三角屋根の湯の花小屋が15棟ほど点在

湯の花を製造するこれらの小屋には職人さんしか入れませんが、敷地内には同サイズの見学小屋も設けられています。しかも見学は無料。

ここで、ざっと湯の花小屋および、湯の花の作り方をご紹介しましょう。
まず噴気の多い場所に、温泉ガスが均等に噴き出すように小石を敷き詰め、それをこの地で採れる特有の青粘土で均等に覆います。その上に三角屋根のわら葺き小屋を建てれば、湯の花小屋のできあがり。
▲見学小屋の内部。通路の左右にできている白っぽいものが湯の花

わら葺き屋根は雨をしのぎ、小屋内の温度一定に保つだけでなく、屋根のわらを通して室内の余分な水分を屋外へ放出させるそうです。
▲見学小屋の模型。小屋の地中は、ご覧のように3層になっています

敷き詰めた石の隙間から硫黄分を含んだ温泉ガスが青粘土に触れ、それぞれの成分が交じり合い、地表に結晶として現れ、1日1ミリずつ成長していきます。
▲約40~60日でこの長さまで成長した湯の花

これを採取し、精製、乾燥させたものが天然の入浴剤「湯の花」となります。
湯の花小屋を利用した湯の花の製法はここ、別府市明礬地区のみ。「みょうばん湯の里」も、享保10(1725)年の創業当時と同じ製法で作り続けています。
また、わら葺きの湯の花小屋も職人たちの手作り。ただし、温泉蒸気の作用でわら葺き屋根は長く持っても3年ほど。タイミングが合えば、その葺き替えシーンも見られるそうです。
▲左/「薬用入浴剤湯の花」2パック入り324円、右/湯の花せっけん(泡立てネット付き)1,620円※すべて税込

できた湯の花は和紙のパックに1回分ずつ小分けされて販売。お風呂にポンと入れるだけで、即製の明礬温泉が完成。入浴後の保温効果が高く、皮膚や汗腺などの脂肪や汚れを乳化する洗浄効果のほか、殺菌、抗酸化作用もあるそうです。そんな湯の花の特徴を活かしたオリジナルの「湯の花コスメ」も実に多彩。
▲右から湯の花シャンプー2,160円、湯の花ハンドクリーム1,080円、湯の花ミストスプレー2,160円、湯の花全身ジェル2,160円、湯の花コンディショナー2,160円※すべて税込

単品の他、お得な湯の花コスメセットもあり。中でも人気は、皮脂や汚れを落としながら、湯上りのように肌をしっとりさせる「湯の花石けん」、肌に潤いを与え新陳代謝を促す「湯の花ミストスプレー」、そして保湿成分たっぷりの「湯の花全身ジェル」のハーフサイズがそれぞれ付く「ハーフコスメセット」2,700円(税込み)。

先にお土産を紹介してしまいましたが、続いてはお待ちかね、温泉情報。敷地内には明礬ならではの硫黄泉が楽しめる絶景露天がありますよ。

別府いちの標高を誇る大露天岩風呂で、白濁の硫黄泉を満喫

「明礬 湯の里」に設けられた「大露天岩風呂」は標高350m。数ある別府の湯の中で最も高台にある、眺望自慢の露天風呂なんです。
▲湯船からアーチ形の明礬大橋に鶴見岳、高崎山、さらに別府湾まで一望(女湯)
▲巨石を配した浴槽は、一度に20人は入れる大サイズ。入浴料600円(税込)

湯の色も、日によってブルー、または乳白色になるとか。また温泉作用によってアクセサリーや貴金属などが変色することもあるので、必ず外してから入浴してくださいね。
▲雨天や雪の日も営業。そのときには備え付けの笠をかぶって入浴を
▲露天風呂の横には総檜の内湯も用意

また、「大露天岩風呂」の下、湯の花小屋が立ち並ぶエリアには貸切で入れる「家族湯」も用意されています。
▲家族湯も、湯の花小屋と同じわら葺き三角屋根

全4棟にはそれぞれ由布、鶴見、高崎、扇山と、別府にゆかりのある山々の名が付いています。
▲いちばん湯船が大きい「扇山」は、1室1時間2,500円(税込)

他3棟の家族湯は各2,000円(税込)。白濁の湯が独占できることはもちろん、熱すぎる場合には他のお客様に気兼ねすることなく水をジャンジャン加え、お好みの温度で楽しめます。湯船の手前には3畳ほどの脱衣スペースもあります。
いい湯に入ったら、なんだかお腹がすいてきた、という方はそのまま展望・喫茶レストランへ立ち寄ってみましょう。

ヘルシーだんご汁をはじめ大分の郷土料理満載のレストラン

「展望・喫茶レストラン」は本館「湯の里館」にあります。湯の花コスメなどを揃える売店の横の階段を上って3階へ。
眼下に点在する湯の花小屋や鶴見岳などの山々、さらに別府湾を望みながら、とり天をはじめ、さまざまな大分の郷土料理が味わえます。
中でも人気なのが、「だんご汁定食」1,200円。だんご汁とは、小麦粉に水を加えて練り、手延べして茹でた「だんご」が入った大分のおふくろ料理。こちらのだんご汁は、注文を受けてから手延べだんごを作り、たっぷりの季節野菜と共に地元味噌で煮こむ、実にヘルシーな一杯。だんご汁単品も750円で用意されています。※すべて税込。
小腹を満たすくらいでいいなら、レストランのある「湯の里館」に隣接するテイクアウトグルメ専門売店「湯庵」へ。ここは先に紹介した家族湯の受付にもなっています。
約90度の温泉蒸気で蒸した「温泉蒸したまご」50円や「チマキ」200円、「トウモロコシ」300円などを販売(すべて税込)。
中でも人気は「温泉蒸しプリン」230円(税込)。一般的な蒸しプリンよりもしっとり、こってり、まるでクリームチーズのような濃厚さ。この温泉蒸しプリンはテイクアウトの他、展望喫茶・レストランでもコーヒーとのセットメニューで用意しています(550円。アイスコーヒーの場合は650円※ともに税込)

美肌効果に期待大!混浴泥湯「別府温泉保養ランド」

噴気や熱泥、熱湯が噴出する「地獄」は明礬温泉にもあります。その名も「紺屋(こんや)地獄」。8世紀前半に編纂された『豊後風土記』に記載されているほか、弘法大師空海も訪れたという歴史の深い地獄です。「別府温泉保養ランド」は、この紺屋地獄から湧きだす鉱泥(こうでい)と硫黄分を含んだ鉱泉を交えた泥湯が楽しめる温泉施設。
▲湯の花小屋が立ち並ぶエリアの手前にある「別府温泉健康ランド」。日帰り入浴の他、宿泊も可能

まずは受付で入浴料を払って入浴チケットをもらいます。そこから約30mの渡り廊下を通って、泥湯が待ち構える温泉場へ。
温泉場に入ったら売店で入浴チケットを渡します。女性や長髪の方はヘアキャップ着用での入浴をお願いしているそうで、必要な方はこちらで受け取りましょう。準備が整ったら、売店の右手にある引き戸を開けて、いざ浴場へ。

冒頭で「混浴泥湯」と書きましたが、混浴なのは後で紹介する「大露天風呂 泥湯」のみ。その他は男女別々のお風呂が4種類あります。
脱衣所を出てまず登場するのが「コロイド湯」。約30人が入れる大きな石風呂に白濁の湯。時折、ボコッボコッと言う音が湯船の右奥から聞こえてきます。あとで支配人さんに尋ねたところ、「温泉蒸気が送り込まれる音ですね。この湯は無色透明なのですが、温泉蒸気の硫黄成分が湯に溶けだして、白っぽい色になるんです」。

浴場はこのコロイド湯を起点に、屋外に出ると打たせ湯と蒸し湯、地下に潜れば泥湯の内湯、さらにその先に「大露天風呂 泥湯」、という作りになっています
▲コロイド湯から外に出ると打たせ湯。蒸し湯はこの先にあります

コロイド湯から階段で地下に向うと、下の写真のような灰色の湯が登場。これが内湯の泥湯。湯船の上には木の棒が、建築現場の足場みたいに組まれています。
実は小さな粒子の鉱泥が入り交じった泥湯は、通常の湯より比重が重く、その分、浮力がUPします。実際、泥湯に入ってしゃがんでもみると、なんとも不思議な浮遊感。でも、ちょっと不安定な感じもするので、そんな時に例の木が掴まり棒になってくれます。中には木の棒を枕代わりにして、プカプカ気分を楽しんでいる方も。
この泥湯の泉温は約40度。ちょっとぬるめな感じもしますが、実は通常の沸かし湯の5倍の熱保有度があるそうで、注意していないと湯あたりしてしまうとか。長くても10~15分で切り上げましょう。

また、別府温泉保養ランドには異なる泉質の源泉が2つあり、内湯の泥湯は鉱泥+酸性泉の組合せに。温泉成分がかなり濃いことから、12歳以下の入浴が禁じられています。また、肌への刺激もやや強いため、この泥湯での顔面パックもNGとのことです。

泥湯から上がったら、備え付けのシャワーで泥を流しましょう。ただし、温水ではなく水シャワーのみですので、ご注意を。そしてこの内湯の泥湯の先に、「大露天風呂 泥湯」が待っています。
▲まるで大きな池!男女一緒にこの「大露天風呂 泥湯」を利用

中央の竹竿より手前が男性エリア、奥が女性エリアに分けられています。越境は許されません!また、内湯と露天を繋ぐ部分を杉板で覆っているので、男性の目を気にすることなく、泥湯露天へとエントリーすることができます。入ってしまえば、灰色の泥湯がお肌をしっかりカバーしてくれます。

さて、「大露天風呂 泥湯」の湯はコロイド湯や内湯の泥湯よりも一層濃い灰色。それゆえ、湯船の深さも測れません。恐る恐る入ってみると、足の裏がムニュリ!これはまさか!
手に取ってみると硫黄の香りいっぱい、こってりクリーミーな泥がたっぷり。これぞ、紺屋地獄の鉱泥!温泉成分に含まれる泥を利用する鉱泥浴、いわゆる「泥湯」というものは国内外にあるそうですが、ここまできめが細かくなめらかなものはかなり希少とのこと。さらに泥のクリーミーさは高い温熱効果を生むだけでなく、肌の角質をしっかり落とし、美しく再生へと導く決め手にもなっているそうです。

「大露天風呂 泥湯」は鉱泥+酸性泉+硫黄泉で構成されていて、温泉成分やお肌への刺激は内湯の泥湯よりマイルドなので、12歳以下の入浴はもちろん、顔面泥パックもOK。クリーミーな泥を薄く塗ったらしばし放置。カピカピに乾燥した泥を灰色の湯で洗い落とせば、あらステキ。お顔はまるでゆでたまごのようにつるつる、ぷるるん!
▲入浴後は広い休憩室でごろーん

内湯の泥湯よりはマイルドなれど、「大露天風呂 泥湯」も長湯は禁物。10~15分くらいで切り上げましょう。もっと温まりたい!という方は再びコロイド湯へどうぞ。
ちなみにコロイド湯から露天まで、全浴場に洗い場はありません。支配人曰く、
「ここは体を洗う湯ではなく、地獄の恵みを吸収する、薬湯をいただくところですから」。
ちなみに「明礬 湯の里」、「別府温泉健康ランド」は「別府八湯温泉道」実行委員会が発行する湯めぐりパスポート「スパポート」の対象温泉。入浴したらスタンプポン!
明礬 湯の里のスタンプは湯の花小屋入り、別府温泉健康ランドのものは泥湯パックをする女子イラスト入りでした。

地獄蒸しプリンの元祖「岡本屋売店」で、蒸したてアツアツとろけるプリンを実食!

別府と言えば地獄、地獄と言えば地獄蒸し、その地獄蒸しで作るスイーツと言えば「地獄蒸しプリン」。現在、市内のいろんなお店で提供していますが、その元祖と言われているのが、明礬温泉の老舗宿「岡本屋」が営む売店の地獄蒸しプリン。
▲明礬大橋を見渡す絶景ポイントにもなっている岡本屋売店
▲地獄蒸しプリン カスタード(手前)、コーヒー共に260円(税込)

1日最大600個を売ることもある大人気商品。テイクアウトもできますが、店内、または駐車場のテラスで味わう際には、写真のようにお皿で登場。柔らかいながらもコシのあるプリン生地、さらに苦みの効いた自家製カラメルのバランスが実にお見事。カスタード味はもちろん、注目は写真奥のコーヒープリン。コーヒーの苦みがきっちりでている大人味のプリンです。

人気プリンの誕生は昭和63(1988)年。朝どれの卵を1個ずつ丁寧に割って、砂糖と牛乳を加え、ミキサーではなくホイッパーを使い、手でしっかり混ぜ合わせる。それをあらかじめ自家製カラメルを流し込んだプリン型に静かに注ぎ、激熱の温泉蒸し機にセット。今も誕生以来の手作り製法にこだわり、仕込んでいるそうです。
運よく、蒸し立て、出来立て現場も撮影できました。
「今、食べてみる?」とスタッフの方。
え?でも、プリンって冷たくしてたべるものでは?

「アツアツのもけっこうイケます。『甘い茶碗蒸しって感じでおいしい』と言って、蒸し立てをご希望される方もいます。タイミングが合えば、いつでもお出ししますよ」
へぇ~そうなんですね。では、お言葉に甘えましてアツアツを1個お願いします。さっき食べた冷たいバージョンとどう違うかな?
▲プルプル生地にスプーンを入れるとプリンの湯けむり、いや湯気がふわ~

食感はまさに茶碗蒸し。でも意外にもプリン生地はしっかり。温かい分、卵の香りと優しい甘さ、そしてクリーミーさが際立ちます。冷たいプリンとはまた異なる味わい深さ、いいですね~。

岡本屋さんの元祖地獄蒸しプリンはJR別府駅内でも購入できるようですが、出来立てアツアツの“地獄蒸し立てプリン”が味わえるのは、明礬温泉にあるこの売店のみ。しかも、蒸し上がったばかりのタイミングでないと出合えない、かなりレアな地獄スイーツです。
さらに店頭で「地獄蒸し塩たまご」なるものも発見!1個100円(税込)。殻つきのまま半日地獄蒸ししたたまごを、海水並みの塩水に一晩付けて出来上がり。殻をむいてそのままパクリ、塩いらず!お土産用の5個入りセットも650円(税込)であります。
いかがでしたか?硫黄の香り漂う明礬温泉でぜひ入ってほしい2湯、そして湯上りスイーツにおすすめの元祖地獄蒸しプリン。

明礬温泉と同じように湯けむりがもくもく上がる温泉地、別府にはもう一つありましたよね?そう、別府市街のど真ん中に位置する鉄輪(かんなわ)温泉。実はこの2大湯けむり温泉の湯をはしごすると、より高い美肌効果が得られると言われています。

まずは明礬温泉の硫黄泉で皮脂の汚れを落とし、スッキリきれいに。その後、鉄輪温泉に湧くマイルドな弱酸性の塩化物泉に浸かって、しっとり保湿。まさにお肌のシャンプー&コンディショナー的な2湯めぐり。ちなみに鉄輪温泉のち明礬温泉の順だと、コンディショナーをしてからシャンプーするようなもの。美肌効果の意味がなくなってしまうので、入る順番には十分ご注意を。
山田誠

山田誠

新潟県十日町市生まれ、現在は福岡県福岡市在住のフリー編集者・ライター。九州の宿や温泉、飲食、雑貨系のショップ、さらに漁村、農村、道の駅など、暮らしと休日に関わるスポットをほぼ毎月、年間150軒以上を取材。取材後は必ず近隣の直売所で地元食材を買って帰る。1児の父。

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