別府・明礬温泉で押さえたい絶景露天に地獄の泥湯、地獄蒸しプリン!
あちこちに湯が湧く別府の中、最も標高の高い温泉地が明礬(みょうばん)温泉。別府でも珍しい硫黄の香り漂う白濁の湯が湧き、その温泉成分を凝縮して作られる天然の入浴剤「湯の花」も、この地の名物。今回はそんな明礬温泉を代表する2湯と、地獄から生まれる湯けむりスイーツをご紹介します。
湯けむり、硫黄臭、湯の花小屋が点在する山間の温泉地
この湯の花小屋の中では、江戸時代から変わらぬ製法でアルミニウムと鉄の硫酸合物、明礬が作られています。かつては薬、火薬、染め物、鍛冶溶接、絵画など多方面に使用された明礬ですが、現代では天然の入浴剤「湯の花」をはじめ、数々の美容グッズの原材料になっています。
明礬地区に23棟あるといわれる湯の花小屋は2006年、国の重要無形民俗文化財に。また、立ち昇る湯けむりと湯の花小屋という明礬温泉ならではの風景も2012年、国の重要文化的景観に指定されました。
明礬温泉の魅力をコンパクトにまとめた湯の花テーマパーク「明礬 湯の里」
「明礬 湯の里」は、江戸時代から湯の花を作り続ける「みょうばん湯の里」が運営する総合温泉観光施設。約1万坪もの広大な土地に湯の花小屋が建ち並び、湯の花関連のグッズを製造・販売するほか、上記のような露天風呂に貸切湯、郷土料理が楽しめるレストラン、和雑貨などを有する売店など、まさに「湯の花テーマパーク」!
湯の花を製造するこれらの小屋には職人さんしか入れませんが、敷地内には同サイズの見学小屋も設けられています。しかも見学は無料。
ここで、ざっと湯の花小屋および、湯の花の作り方をご紹介しましょう。
まず噴気の多い場所に、温泉ガスが均等に噴き出すように小石を敷き詰め、それをこの地で採れる特有の青粘土で均等に覆います。その上に三角屋根のわら葺き小屋を建てれば、湯の花小屋のできあがり。
わら葺き屋根は雨をしのぎ、小屋内の温度一定に保つだけでなく、屋根のわらを通して室内の余分な水分を屋外へ放出させるそうです。
敷き詰めた石の隙間から硫黄分を含んだ温泉ガスが青粘土に触れ、それぞれの成分が交じり合い、地表に結晶として現れ、1日1ミリずつ成長していきます。
これを採取し、精製、乾燥させたものが天然の入浴剤「湯の花」となります。
湯の花小屋を利用した湯の花の製法はここ、別府市明礬地区のみ。「みょうばん湯の里」も、享保10(1725)年の創業当時と同じ製法で作り続けています。
また、わら葺きの湯の花小屋も職人たちの手作り。ただし、温泉蒸気の作用でわら葺き屋根は長く持っても3年ほど。タイミングが合えば、その葺き替えシーンも見られるそうです。
できた湯の花は和紙のパックに1回分ずつ小分けされて販売。お風呂にポンと入れるだけで、即製の明礬温泉が完成。入浴後の保温効果が高く、皮膚や汗腺などの脂肪や汚れを乳化する洗浄効果のほか、殺菌、抗酸化作用もあるそうです。そんな湯の花の特徴を活かしたオリジナルの「湯の花コスメ」も実に多彩。
単品の他、お得な湯の花コスメセットもあり。中でも人気は、皮脂や汚れを落としながら、湯上りのように肌をしっとりさせる「湯の花石けん」、肌に潤いを与え新陳代謝を促す「湯の花ミストスプレー」、そして保湿成分たっぷりの「湯の花全身ジェル」のハーフサイズがそれぞれ付く「ハーフコスメセット」2,700円(税込み)。
先にお土産を紹介してしまいましたが、続いてはお待ちかね、温泉情報。敷地内には明礬ならではの硫黄泉が楽しめる絶景露天がありますよ。
別府いちの標高を誇る大露天岩風呂で、白濁の硫黄泉を満喫
湯の色も、日によってブルー、または乳白色になるとか。また温泉作用によってアクセサリーや貴金属などが変色することもあるので、必ず外してから入浴してくださいね。
また、「大露天岩風呂」の下、湯の花小屋が立ち並ぶエリアには貸切で入れる「家族湯」も用意されています。
全4棟にはそれぞれ由布、鶴見、高崎、扇山と、別府にゆかりのある山々の名が付いています。
他3棟の家族湯は各2,000円(税込)。白濁の湯が独占できることはもちろん、熱すぎる場合には他のお客様に気兼ねすることなく水をジャンジャン加え、お好みの温度で楽しめます。湯船の手前には3畳ほどの脱衣スペースもあります。
いい湯に入ったら、なんだかお腹がすいてきた、という方はそのまま展望・喫茶レストランへ立ち寄ってみましょう。
ヘルシーだんご汁をはじめ大分の郷土料理満載のレストラン
明礬 湯の里 展望・喫茶レストラン
大分県別府市明礬6組
[営業時間] 10:00~16:30(L.O.15:30)
[定休日]なし
0977-66-8166
明礬 湯の里
大分県別府市明礬6組
[営業時間]大露天岩風呂10:00~21:00(最終受付20:00)、家族湯10:00~21:00(最終受付20:00)、湯庵8:30~17:30、売店8:30~18:00
[入浴料金] 大露天岩風呂 大人600円、小人(4歳~小学生)300円、家族湯1棟 1時間2,000円~ ※すべて税込
[定休日]なし
0977-66-8166
美肌効果に期待大!混浴泥湯「別府温泉保養ランド」
まずは受付で入浴料を払って入浴チケットをもらいます。そこから約30mの渡り廊下を通って、泥湯が待ち構える温泉場へ。
冒頭で「混浴泥湯」と書きましたが、混浴なのは後で紹介する「大露天風呂 泥湯」のみ。その他は男女別々のお風呂が4種類あります。
浴場はこのコロイド湯を起点に、屋外に出ると打たせ湯と蒸し湯、地下に潜れば泥湯の内湯、さらにその先に「大露天風呂 泥湯」、という作りになっています
コロイド湯から階段で地下に向うと、下の写真のような灰色の湯が登場。これが内湯の泥湯。湯船の上には木の棒が、建築現場の足場みたいに組まれています。
実は小さな粒子の鉱泥が入り交じった泥湯は、通常の湯より比重が重く、その分、浮力がUPします。実際、泥湯に入ってしゃがんでもみると、なんとも不思議な浮遊感。でも、ちょっと不安定な感じもするので、そんな時に例の木が掴まり棒になってくれます。中には木の棒を枕代わりにして、プカプカ気分を楽しんでいる方も。
また、別府温泉保養ランドには異なる泉質の源泉が2つあり、内湯の泥湯は鉱泥+酸性泉の組合せに。温泉成分がかなり濃いことから、12歳以下の入浴が禁じられています。また、肌への刺激もやや強いため、この泥湯での顔面パックもNGとのことです。
泥湯から上がったら、備え付けのシャワーで泥を流しましょう。ただし、温水ではなく水シャワーのみですので、ご注意を。そしてこの内湯の泥湯の先に、「大露天風呂 泥湯」が待っています。
中央の竹竿より手前が男性エリア、奥が女性エリアに分けられています。越境は許されません!また、内湯と露天を繋ぐ部分を杉板で覆っているので、男性の目を気にすることなく、泥湯露天へとエントリーすることができます。入ってしまえば、灰色の泥湯がお肌をしっかりカバーしてくれます。
さて、「大露天風呂 泥湯」の湯はコロイド湯や内湯の泥湯よりも一層濃い灰色。それゆえ、湯船の深さも測れません。恐る恐る入ってみると、足の裏がムニュリ!これはまさか!
「大露天風呂 泥湯」は鉱泥+酸性泉+硫黄泉で構成されていて、温泉成分やお肌への刺激は内湯の泥湯よりマイルドなので、12歳以下の入浴はもちろん、顔面泥パックもOK。クリーミーな泥を薄く塗ったらしばし放置。カピカピに乾燥した泥を灰色の湯で洗い落とせば、あらステキ。お顔はまるでゆでたまごのようにつるつる、ぷるるん!
内湯の泥湯よりはマイルドなれど、「大露天風呂 泥湯」も長湯は禁物。10~15分くらいで切り上げましょう。もっと温まりたい!という方は再びコロイド湯へどうぞ。
ちなみにコロイド湯から露天まで、全浴場に洗い場はありません。支配人曰く、
「ここは体を洗う湯ではなく、地獄の恵みを吸収する、薬湯をいただくところですから」。
別府温泉保養ランド
大分県別府市明礬紺屋地獄
[営業時間]9:00~20:00(最終受付19:00)
[入浴料金] 大人1,100円、小学生600円、5歳児以下350円
[宿泊料金]1泊2食7,500円(別途入湯税150円)/人~ ※GW、お盆、年末年始は料金変動あり
※すべて税込
[定休日]不定休
0977-66-2221
地獄蒸しプリンの元祖「岡本屋売店」で、蒸したてアツアツとろけるプリンを実食!
1日最大600個を売ることもある大人気商品。テイクアウトもできますが、店内、または駐車場のテラスで味わう際には、写真のようにお皿で登場。柔らかいながらもコシのあるプリン生地、さらに苦みの効いた自家製カラメルのバランスが実にお見事。カスタード味はもちろん、注目は写真奥のコーヒープリン。コーヒーの苦みがきっちりでている大人味のプリンです。
人気プリンの誕生は昭和63(1988)年。朝どれの卵を1個ずつ丁寧に割って、砂糖と牛乳を加え、ミキサーではなくホイッパーを使い、手でしっかり混ぜ合わせる。それをあらかじめ自家製カラメルを流し込んだプリン型に静かに注ぎ、激熱の温泉蒸し機にセット。今も誕生以来の手作り製法にこだわり、仕込んでいるそうです。
「今、食べてみる?」とスタッフの方。
え?でも、プリンって冷たくしてたべるものでは?
「アツアツのもけっこうイケます。『甘い茶碗蒸しって感じでおいしい』と言って、蒸し立てをご希望される方もいます。タイミングが合えば、いつでもお出ししますよ」
へぇ~そうなんですね。では、お言葉に甘えましてアツアツを1個お願いします。さっき食べた冷たいバージョンとどう違うかな?
食感はまさに茶碗蒸し。でも意外にもプリン生地はしっかり。温かい分、卵の香りと優しい甘さ、そしてクリーミーさが際立ちます。冷たいプリンとはまた異なる味わい深さ、いいですね~。
岡本屋さんの元祖地獄蒸しプリンはJR別府駅内でも購入できるようですが、出来立てアツアツの“地獄蒸し立てプリン”が味わえるのは、明礬温泉にあるこの売店のみ。しかも、蒸し上がったばかりのタイミングでないと出合えない、かなりレアな地獄スイーツです。
岡本屋売店
大分県別府市明礬3組
[営業時間]8:30~18:30
[定休日]なし
0977-66-3228
明礬温泉と同じように湯けむりがもくもく上がる温泉地、別府にはもう一つありましたよね?そう、別府市街のど真ん中に位置する鉄輪(かんなわ)温泉。実はこの2大湯けむり温泉の湯をはしごすると、より高い美肌効果が得られると言われています。
まずは明礬温泉の硫黄泉で皮脂の汚れを落とし、スッキリきれいに。その後、鉄輪温泉に湧くマイルドな弱酸性の塩化物泉に浸かって、しっとり保湿。まさにお肌のシャンプー&コンディショナー的な2湯めぐり。ちなみに鉄輪温泉のち明礬温泉の順だと、コンディショナーをしてからシャンプーするようなもの。美肌効果の意味がなくなってしまうので、入る順番には十分ご注意を。
山田誠
新潟県十日町市生まれ、現在は福岡県福岡市在住のフリー編集者・ライター。九州の宿や温泉、飲食、雑貨系のショップ、さらに漁村、農村、道の駅など、暮らしと休日に関わるスポットをほぼ毎月、年間150軒以上を取材。取材後は必ず近隣の直売所で地元食材を買って帰る。1児の父。
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