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三重ツバメ防ぐネット、苦渋の設置 近隣から「ミツバチ食べる」
毎年ツバメが子育てをする店舗の軒先に、今年は巣作りをできなくする防鳥ネットが張られた。“幸福の使者”到来を楽しみにしていた店主だったが、複雑な思いを抱えての決断だった。 紀宝町大里の食料品・雑貨販売店「おのだに」。元信金職員だった中畑耕作さん(68)が、過疎地支援への思いから早期退職した翌年二〇〇八年九月に構えた店だ。 そんな店に翌春からツバメのつがいが訪れるようになり、軒下で春から夏を過ごすように。一昨年は四組、昨年は三組のつがいが姿を見せた。ヘビがひなを襲おうとした時には火箸でつかんで払ったこともある。「ヘビも生きるのに必死。でもツバメが一生懸命子育てする姿がいじらしくて」と中畑さん。 ところが昨春、近隣住民が遠慮がちに口にした言葉が心に重く響いた。「ツバメがハチをたくさん食べる。何とかならないか」。店周辺は田んぼや畑が広がり、昆虫による農作物の受粉を促したり、趣味でミツバチを飼育したりしている人が多かった。「よくよく考えて言ってきてくれたのが伝わってきた」からと、中畑さんは三月下旬、長さ約十メートルのネットを張った。 四月に入ってツバメがやって来た。防鳥ネットの前でUターンを繰り返した後、電線に止まってこちらを見詰める。ネットにツバメが絡まったこともあった。放してやる時、体の軽さに驚いた。 「おなかにはもう卵があるのかな。早いとこ巣作りしないといけないって命懸けなんだな」。そんなことを思った。電柱のツバメを眺めながら「かわいそうだね」と何度もつぶやいた。 (福永保典) PR情報
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