挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
男装令嬢の恋愛物語 作者:かんな

第一章 男装令嬢

1/4

1話 ベルサイユの仮面舞踏会

 春眠暁を覚えずで、昼寝をしていた。

 夢を見た。

『余は光の女神です。貴女には謝らなければなりません。
 神の戸籍係が、貴女の魂と身体を入れ間違えてしまいました。
これから、貴女の本来の身体に魂を入れ直します。
 本来の貴女は中世の男爵令嬢です。
本来の祖国、父の元へ転生させます。
 せめてものお詫びに何でも願いを三つだけ聞き入れて上げましょう。
何を望みますか?』


『本当のことでしょうか?お願いはなんでも良いのでしょうか?』


『本当です。三つの願いを言って下さい。』


『それでは、一つ目は誰よりも賢いこと。
二つ目は絶対に死なないこと。
三つめは食べ物に困らないこと。これで良いですか?』


『本当にそれで、良いのですか?』


『はい。この三つをお願いします。』


『解りました。では、三つの願いを叶えて上げましょう。
もう一度言います。貴女は生まれ変わったら、中世の男爵令嬢です。
父は、オーギュスト・カペー男爵です。良いですね?』


『はい。解りました。』


『では、目を閉じて下さい。今から、転生させます。』


『はい。』


 私は、ギュッと目を瞑った。


 声は消えた。


 私は、恐る恐る目を開けて見た。

 本当だった。

 天蓋付きのお姫様のベッドに寝ていた。

 うたた寝をしていたらしい。

 シャツははだけ、ネクタイは取れて、だらしのない格好だった。

 え!? ネクタイ? どうやら、私は男装が趣味な様だった。


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


「おーい、ベルサイユの仮面舞踏会に出るのだろう? 遅れるぞ!」

「はーい、お父様。」

 私は、クローゼットの脇の姿見の前で、着替えた。
薄いブルーのシャツに袖を通して、カフスボタンで留める。
スカーフを選んだ。赤だ。
胸はさらしを巻いて膨らみが目立たない様にした。

 ズボンは、裾がひらひらと広がっているのにした。
金の刺繍で縁取りされたジャケットを羽織り、長い金髪を上にくるくると結んで、羽飾りの帽子を被った。

 どこから、どうみても中性的にしか見えない。
男と言えば男だし、女と言えば女に見えた。
背は女としては高く、男としては普通だった。

 ただ、お尻が大きめなのが難点で、歩き方で誤魔化すようにした。

 父は、小麦相場で稼いで、パン屋を経営している。
その儲けたお金で、男爵の爵位を買った。由緒ある男爵だ。


「お父様。行ってきまーす。」

「おう!楽しんでおいで。」

 おっと、仮面を付けるのを忘れていた。

 ダダダーと階段を駆け上がって、仮面を取って、ダダダーと階段を下りて、出掛けた。

 ベルサイユまで、15分足らずだ。

 仮面舞踏会上に着いたら、王宮や各国からの貴族と姫で賑わっていた。

 よーし、彼氏見つけるぞ!

 男装だから、男も女も見ている。

 見られることは嬉しかった。

 良かった。壁の花にならずに済みそうだった。

 長身のイケメンで長髪がカッコイイ貴族が近付いて来た。

 楽団員は既にワルツを演奏していた。

「姫で宜しいのかな?ご一曲お願いできませんか?」

 私は、頷いて左手を差し出した。

「私は、アンリ・ヴァロア男爵です。お見知りおきを。貴女はとても美しい。
こんな美女と踊れて幸せです。」

「ありがとう。」

 アンドゥトロワ、アンドゥトロワ、アンドゥトロワ。

 アンリ男爵は、リードがとても上手かった。

 今宵は楽しくなりそうだった。

+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ