ちなみに、草食系男子が増殖し始めた2005年頃に、森岡さんは草食系男子を「ジェンダーフリーの新人類」と賞賛したらしいのですが、どうもそうではないのではないか。草食系男子というのは機能不全家庭のIP(Identified Patient)なのではないか、というのが私の推論です。
私は20代後半で草食系男子(2人)と結婚を考えた交際をしたのですが、うまくいかなかったのです。弱いんです。自立していないので、会社の社畜になっちゃうんです。
どちらの源家族も、父親に権威がなく、母親は愚痴を子どもにまき散らし放題で、同胞(他のきょうだい)も問題を抱えていて、そのモラルハザードの中で誰一人、成人になれない。
これを纏綿(てんめん)状態と言います。家族がぐちゃぐちゃになっていて、境界線が引けないのです。この話はフィッツジェラルドの『夜はやさし』を題材にやります。
一方、元祖草食系男子たる森岡さんは、昔っからお母さん(亡くなった)の毒親っぷりを綿々と著書でグチっている。
森岡 しかしですよ、我々をそういうひよわなお勉強男に育てたのは、いったいどこの誰ですか。それは愛と権力と暴力と餌付けによって、男の子を受験システムの秀才へとひたすら調教してきた、われらが母親たちではないですか! ですから、マゾ=フェミ男たちは、この点では、はっきりとマザコンなのですよ。
いいですか、ではどうして母親は息子をマザコンにしたのか。それは家庭をかえりみない旦那や、女性の人生を抑圧する社会に対するルサンチマンが、母親たちを息子の調教へと駆り立てたからです。いいですか、すると、母親のルサンチマンが、その息子を経て、若い女やフェミニズムをダシにして、男根主義オッサンや男性権力者たちに復讐しようとしていることになる。これでルサンチマンの円環構造がみごとに閉じたことになる。『男は世界を救えるか』(P.28)
1995年の著作ですけど、ここで問題はだいたい見えています。どうも父親が家庭を顧みないタイプで、母と息子の間で強力な母子カプセルができた。そのせいで、結婚後も息子が自立できない。この時点で、問題の所在は明らかであり、現在の結婚難のタネは撒かれているんです。私が結婚できないのはこいつが悪い。こういう学者が早稲田大学の教授になる社会が悪い。
森岡さんは草食系男子に、恋愛術を教えれば、結婚に結び付くのではないかと考えた(だから『草食系男子の恋愛学』を書いた)ようなのですが、私の経験だと、草食系男子が本当に必要なのは、恋愛ではなく、自立を勝ち取ることではないかと思うのです。彼らは下図の緑の矢印の行動パターンをたどりがちなのですが、青の矢印の行動パターンを取れるように矯正するのが大事なのではないか。