高橋竹山。この人物を今まで知らなかったことを僕は悔やんでいる。
彼の演奏を初めて聴いた。そのときに体に走ったものが何か分からない。悪寒のような鳥肌のような。何かこう、ぞくっとするものを感じた。聴いてみると感じると思う。音の起伏を。決して平坦になることはない。何かしらの波が立っている。それは美しくもあるし、荒々しくもある。まるで海のようだ。嵐の時もあるし、静寂な時もある。
しかし、音自体が平坦になることは決してない。だが、そこには音のある静寂。そのようなものがある気がする。このようなことを感じたのは初めてだ。
三味線を小学生の時に習っていたことがある。今思うと、その素晴らしさを感じることができる。ギターよりも弦の本数は少ないにも関わらず、三味線は心に直に訴えてくるような音を奏でる。奥ゆかしさ、というべきだろうか。
その上(三味線を演奏したことがあるという点から聴いて)で高橋竹山氏の演奏を聴くと、ブレがないのだ。確かに弦を強く弾けば音は強くなるし、ブレは少なくなる。しかし高橋竹山氏の演奏は、なんだろう。こう。志が具現化されたような。そのようなものを感じる。
高橋竹山氏のことを知れて良かった。心からそう思う。そして日本に帰国したら、三味線を再び習おう。
そう、僕は高橋竹山氏の演奏に「魅了」されたのだ。