さて、第1回の記事では「禁煙化」に向けた話がなぜ始まったのか、厚生労働省案の中身、そして公開ヒアリングの手前までを簡単に振り返ってきました。次回は、公開ヒアリングでの各団体の立場について触れてみる予定でしたが、つい先日こんなニュースが流れました。
“厚生労働省案に対して、自民党の「たばこ議員連盟」は対案を発表。「厳しすぎる」との党内の反発を考慮した”
厚生労働省や大臣が「やる!」と言っているのに、自民党が認めない?そもそも安倍首相が「やる!」って言ってなかったっけ?そんな疑問がふつふつと湧いてきそうなので、公開ヒアリングの内容に入る前に、今一度どの様な流れで受動喫煙防止対策が実施されることになるのかを確認しておきます。
◆今回の「受動喫煙防止対策」は、当たり前ですが誰かが「やるぞ」と言っただけでは全く意味がありません。当然ですが「法律」にならなければなりません。
法律案は誰が作るの?
ではそもそも法律の案は誰がつくるのでしょうか?
国会議員?
役人?
いろいろなパターンはありますが、案を起草するのは次の2パターンです。
●内閣立法 ⇒ 内閣がつくる(提出する)
実際は、成立する法律案の多くが内閣立法で、今回の「受動喫煙防止対策」も内閣立法です!ということを踏まえつつ、今回の「受動喫煙防止対策」の法案はどの様に成立までたどるのかと言うと、次のような流れをたどります。
①管掌官庁(今回は厚生労働省)の職員が草案を起草
②与党の政務調査会等にて了承 ※慣例的に行われるもので必須ではない ←今はココ!!!
③与党の総務会等で最終了承 ※慣例的に行われるもので必須ではない
④内閣法制局での確認、調整(法律を作るプロの公務員が確認します)
⑤内閣が法案提出を閣議決定
⑥衆議院の委員会(今回は厚生労働委員会)で審議、議決
⑦衆議院本会議で審議、可決
⑧参議院の委員会(今回は厚生労働委員会)で審議、議決
⑨参議院本会議で審議、可決 ※ここまできて法律が「成立」します。
⑩法律の公布
⑪法律の施行
それでは先のニュースはどの段階かと言うと・・・①と②の間で早くもつまずいているという状態です。
①と②の間というのは、与党自民党が「内外で異論が多く今の厚生労働省案ではそもそも政務調査会を開かない」と言っているので、そもそも政務調査会での審議を行うことすら見通しが立っていないということです。これは、塩崎恭久厚生労働相が率いる厚生労働省や、丸川珠代五輪担当大臣という推進派と、反対派である自民党の多くの議員の対立構造にあります。
なぜこの様な対立構造にあるのか?
ではなぜこの様な対立構造にあるのでしょうか?そもそも、内閣(政府)はなぜ、自民党の了解を得る必要があるのでしょうか?
政府や首相といえども勝手に法律を作ることはできず、最終的に国会議員の多数決(国会の議決)を得なければならないのはご存じの通りかと思います。そうすると政府としては、国会で過半数を占める与党の国会議員に国会で賛成票を入れてもらう必要があります。学校であれば「先生が言っているから」となりそうですが、「首相・総裁が言っているから」とならないのが政治の世界。さまざまな利害が複雑に絡みます。
そこで内閣(政府)としては、与党に内部で意見調整(利害調整)や合意形成と、最終的に自分の政党の議員たちに「賛成票を入れなさい!」と命令してもらう必要があります。(これを党議拘束といいます。)そこで、与党の了承を得る必要があるのです。
次回は「公開ヒアリング」の内容から
この様な事情から、「進めたい政府」と「了解して自分たちの議員に党議拘束を掛ける与党」の対立が生じ、早々に暗礁に乗り上げることになりました。
内閣(政府)としては、与党の合意を無視して進めることも形式的には可能ですが、極めて異例なことで、今後の議論がどうなるのかますます雲行きが怪しくなってきました。しかし、どうも本質とはかけ離れたところで議論の方向性が変わるような気がしてなりません。。。次回は、前回予告どおりに公開ヒアリングの中身からスタートします。
第1回「これまでの経緯と厚生労働省案」はこちらをご覧ください↓
www.tenpo.biz
⇒第2回へ続く(5月中旬公開予定)