トランプ政権のロシアとの関係は流動的かもしれないが、ロシアのプーチン大統領はまだ、米国社会の一部から強い支持を得ていると自慢できる。保守運動がそれだ。
トランプ米大統領は先週、米ロ関係は「史上最低かもしれない」と警告し、ロシアとの関係改善を望む熱意が冷めたように見えたが、米国の多くの保守派は、自分たちの最大の関心事である社会問題については、ロシアは自然な連携相手だと考えている。
「もちろん、協力する分野は極めて大きい。我々はかなり前から、ロシアの友人たちと協力し合っている」。伝統的な家族の価値観を掲げてキャンペーンし、同性婚に反対する市民団体「結婚のための全米組織(NOM)」のブライアン・ブラウン代表はこう言う。
この問題は、米国内での「文化的闘争」に負けていると感じる宗教的保守派にとって、ロシアのシリアやウクライナにおける役割を気にかける共和党タカ派の地政学的な悩みよりはるかに重要だ。
プーチン氏は筋金入りの同性婚反対派だ。これが自分たちの価値観が米国の主流派から外れつつあることを恐れる米国の社会的保守派を活気づかせた。一方、2度離婚し、同性婚の問題は「決着している」と話すトランプ氏は、キリスト教福音派にとって精神的な味方になりそうもない人物だ。
ワシントンのランド研究所のシニア・ポリティカル・サイエンティスト、サミュエル・チャラップ氏は、「プーチンは(キリスト教保守派にとって)本当に重要な問題について、思想的な同調者に見えるようなことを言ってきた」と指摘する。
毎年、ロシア正教会のクリスマスの礼拝に出席するプーチン氏はしばしば、敬虔(けいけん)な母親が共産主義者の父親の意思に反し、こっそりと自分に洗礼を受けさせた話をする。
■共和党支持者のプーチン氏支持、1年で3倍に
プーチン氏への支持、あるいは少なくともロシアとの関係改善への支持は、保守運動のほかの部分にも広がっている。大統領選に出馬したことがあるランド・ポール上院議員などの共和党のリバタリアン(自由至上主義者)は、ロシア政府との対立から退くことを支持している。
一方、「オルトライト(ネット右翼)」――トランプ氏が権力の座に就くのを後押しした白人ナショナリスト(国家主義者)集団――のメンバーは、ロシア国内および国際舞台でのプーチン氏自身の政治への国家主義的アプローチを喝采した。
米調査会社ギャラップの2月の世論調査によると、米国の共和党支持者全体の間でプーチン氏を支持する人の割合がわずか1年余りで3倍近くに跳ね上がり、2015年の12%から現在の32%に達した。
なかでも、社会的保守派は欧米諸国における最も熱心なプーチン支持者だ。彼らとロシアの絆は、トランプ氏自身のロシアへの接近より古くにさかのぼり、今後もより長続きする可能性がある。米国が今月、ロシアが支援するシリアのアサド政権を攻撃したことを受け、米ロ政府の関係は緊張が高まっているからだ。