仮にA君、B君としようか。
いや、厳然とあったんだよね。
ちょっと特殊な環境だったのかもしれない。美大生とかならわかってくれるかな。一般の大学より閉鎖的なところがあるんだよ。少なくとも当時俺が通ってた学科はそうだった。
A君についていうと、彼はとにかく凄かった。映画監督志望で、誰もが一目置く同期のカリスマ。常に自信に満ち溢れてた。なんなら発光してた。全身から虹色のオーラを放ってたよ。生粋の遊び人で、次から次へとパーティーを仕掛けてた。
A君に遊ばれて捨てられた女が、学内に何人もいた。恋人を寝取られた男も複数いた。それでも不思議と許されてた。カリスマなんだからしょうがない、みたいな。
とにかくA君は遊びまくってるという噂だった。ドラッグをやってるとも言われてた。有名ミュージシャン達とつるんで、毎晩ぶっ飛んでるとか。
そういうのも全部、ハクになってた。噂が噂を呼んで、完全に神格化されてたよ。
A君にはなんの実績もなかった。コミュ力と自信に満ちたオーラが、彼を輝かせていた。それが全てだった。
一方、脚本家志望のB君は本当に冴えないやつだった。完全に童貞だった。童貞を表す記号みたいな感じ。ぶ厚いメガネで、映画のロゴが入った黒Tシャツばかり着てた。基本的に女子は誰も寄り付かなかった。
B君はいつも独りで一心不乱に本を読んでたな。あとはノートに何か書き付けてた。読んでるか、書いてるか。それ以外の印象がない。
俺がB君と話したのは、映画制作のグループ実習でチームを組んだ時ぐらい。話してみるとめちゃくちゃ優しくて良い奴だった。すぐに赤面するところがチャーミングだったな。映画に関しては、ちょっと引くぐらいに博識だったよ。
あれから幾星霜。
ぼっちだったB君は、今はめちゃくちゃ活躍してる。よくメディアで名前を見るようになったよ。Vシネマのシナリオを書いてたり、舞台の構成をしてたり。そのうち映画の脚本も書くんじゃないかな。ネットで検索すると何枚か顔写真も出てくる。オシャレな青年って感じだ。黒T野郎だったくせに。
問題はA君だ。彼は今、何してると思う?
生主だよ。
今のA君はぶよぶよに太ってる。豚っていう動物にとてもよく似ている。
A君は生卵を連続で飲み込んだり、半裸になって、筆ペンで全身にお経を書いた状態で、ケーナを吹いたりしてるんだ。
頭にパンストを被り、胸毛をライターで炙りながらクラウドファンディングを募る動画もあったな。
逆にいうと、若い頃のオーラとかカリスマ性とかコミュ力とか、ほとんど単なる幻想だよ。すごく脆い。そんなものに囚われ過ぎると、ろくなことにならねえよ。
あと、反社会的な行動もダメだ。乱脈なセックスとか、ドラッグとか、結局はいろんなものを奪うだけだ。脳が壊れる。
若い頃はああういうものにロマンを感じるもんだけど、ほんとバカだよな。
俺が言いたいのは、スクールカーストなんか気にしてねえで、好きなことに一心不乱に取り組むべきだってこと。
ところで、俺が今どうなってるか、知りたい奴はいるかな?
A君って俺なんだよ。
クソワロタ ざまあw
生きる活力になる脳内麻薬の量って限界があって特定の期間に使いきると残りの人生はもうだめだよな
コミュ力的な物って要求される時もあるとは思うけど、他の能力が無いとほぼ使い道が無いのですね。 客観的には、能力の違いで片付く話だとは思う。美大生の道徳の教科書に載せても...
カネを稼ぐには変に能力があるより、他人の能力を使って中抜きするほうがいいよ。
(バーン)中抜き警察だ!両手を上げろ!
中抜きも能力がいるよ。クリエイターは誰にでも中抜きさせる訳じゃないし、そのハードルは独特で扱いが難しい。納得しなければ、中抜きポジションにおいておいてくれない。
元(?)キングレコードの大月さんが、アニメ等のプロデューサの仕事は金集めであると言い切っていた。金を動かせるから、皆が着いてくる。力を得る。 「オレは中抜きをしたい」と...
そんなことのために能力を磨く時間をかけるなら、別のとこあたった方が早い。 確実性を上げるより、「数打ちゃあたる」が正解。