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男装麗人の秘められた恋 作者:かんな

第一章 男装の麗人

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6話 バスティーユ襲撃

 ルイ16世が良かれと思ってやった施策の三部会が、平民の力を台頭させることになり、
結果的に1789年7月14日のバスティーユ襲撃に始まるフランス革命を呼び起こした。

 国民議会の封建制廃止などの要求に対して、ルイ16世は、
「余は決して、余の僧侶たちと余の貴族たちを剥ぎ取られることに同意しないだろう。」と強硬な姿勢を崩さなかった。


 ある日のこと。
バスティーユ襲撃事件が起きた。


 市民の暴動はもう、押さえられない。

 ラフィエルとレオポルトは、かねてから革命が起きた時には、近衛隊に付かずに衛兵隊に付くことを決めていた。


 市民達は、棒切れ、剣、槍、ライフルとそれぞれが持てる物を持って、バスティーユ牢獄を襲撃した。

 その頃のバスティーユは、牢獄と言うよりは要塞で、火薬庫であった。
市民軍が狙ったのは、その火薬庫である。

 その数、20万は下らなかった。

 近衛隊が出動して来た。

 ラフィエルとレオポルトを見つけると、市民軍の司令部はどちらかと尋ねた。

 ラフィエルは無言で、西の方角を指差した。
勿論、嘘である。

 この前の衛兵隊の親分とその右腕達が近付いて来た。

「ラフィエル伯爵殿。レオポルト子爵殿。我々は、あなた方を隊長、副隊長として歓迎します。
なんなりとご命令を。」

 ラフィエルは、マリーの口添えもあって、伯爵に昇格していた。

 しかし、この火急の際に貴族の階級はどうでもいいことだった。

 バスティーユを守っていたのは、令官ベルナール=ルネ・ド・ローネーであった。

 市民軍は、ド・ローネー公に武器の引き渡しを求めていた。
ド・ローネー司令官は代表3名を招き入れ食事を供してもてなしたが、武器の引き渡しは拒否した。

交渉中、要塞の外では群衆の数がふくらみ、興奮状態が高まっていった。

 廃兵院からまわってきた人々が合流し、その数はさらに増加した。
やがて2人の男が塀を乗り越えて侵入し、司令部の中庭に通じる第一の跳ね橋を落とした。

 すぐさま、跳ね橋は引き揚げられて、屋上の砲台が市民軍に向けられた。

 ラフィエルは、レオポルトと衛兵隊を二手に分けて、それぞれが指揮した。

「市民軍の者よ!我等は、自由と平等と博愛を求める権利がある。
左20度の守備兵を狙い撃ちせよ!」

「おおう!」

「衛兵隊、藁を積んだ荷車を用意せよ。跳ね橋に突っ込ませる。
誰か、跳ね橋の鎖を叩き切ってくれ!」

「了解。隊長!」

 また、第一の跳ね橋が降ろされた。

 そこへ、藁に火を点けた荷車が突っ込んで行く。

「煙で、姿を隠して、内部に突入せよ!」

 ラフィエルの激が飛ぶ。

 その時、ド・ローネー公の軍隊の狙撃手が、
「あの、金髪の司令官を狙え。やつさえ殺せば、司令官のない雑魚共だ。」

 ライフルの玉が、ラフィエル目掛けて飛んで来た。

 すかさず、それを目の端に捉えた、レオポルトが馬で駆け寄って来て、自分が盾になろうとした。

 ズドーン、ズガガーン。

 玉は、レオポルトの左肩に当たった。

 ラフィエルは、無事だった。

 思わず、ラフィエルが、
「レオポルトー!」
と叫ぶ。

 レオポルトは、左肩から血を出していた。左手がぶらんとしている。

「大丈夫だ。死んではいない。あとで玉を摘出すれば治る。それよりも、指揮を続けて。」

 レオポルトは、衛兵隊に運ばれて、安全な場所まで後退した様だった。

「行けー! 今だ突っ込め!」

 市民軍はそれを合図に、バスティーユの司令塔目掛けてなだれ込んだ。

 襲撃が始まった。

 恐怖にとらわれた守備兵が発砲して、民衆と守備兵が衝突し、混乱のさなかの激しい銃撃戦により死傷者が出た。

 パリ市政府が派遣した市民代表がド・ローネーに調停を申し入れたが拒否された。

 衛兵隊が、大砲を奪取して戦闘に投入する動きを見せ、敗北を悟ったド・ローネーは、貯蔵されている爆薬によりバスティーユを爆破するよう命じたが、これは守備隊が命令を拒否した。

 要塞内部に通じる主門の跳ね橋が下ろされ、群衆がなだれ込み、激しい銃撃戦が展開された。
最終的にバスティーユ全体を群衆が制圧し、牢に入れられていた7人の囚人が解放された。

かくして、バスティーユは陥落した。

ド・ローネー公は、敗北の印にバスティーユの尖塔に白旗を上げさせた。


市民軍は、大歓声に包まれた。

「やったー! 隊長万歳! フランス万歳!」

 市民軍は、ド・ローネー公の首を取って来て、パリ市中のさらし者にした。

 革命は起こった。


 ベルサイユ宮殿では、夜半に侍従のリアンクール公に起こされたルイ16世が、パリの状況を聞かされて、尋ねたらしい。

「なに、暴動か。」

 リアンクール公は答えた。

「いえ陛下、これは暴動ではございません。革命でございます」。


 陛下は、ベルサイユ宮殿のバルコニーに立ち、
「静まれ。今、国庫を解放する。」
と言って、食料を民衆に分け与えた。

 革命の勃発であった。

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