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【政治】

「共謀罪」本格審議入り 野党「テロ防止の説明不足」

 犯罪の合意を処罰する「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案は十九日、衆院法務委員会で本格的な質疑が始まった。政府・与党は、東京五輪・パラリンピックの開催を控えて「テロ対策」としての法整備の必要性を強調し、今国会での成立を目指す。一方の野党は「一般市民も処罰される可能性がある」「監視社会につながる」などと訴え、廃案を求めた。 (山田祐一郎)

 午前九時すぎに始まった委員会の冒頭一時間だけ安倍晋三首相が出席した。公明党の国重徹氏の「運用上の課題として捜査権の乱用による不当な人権侵害を懸念する声が出ている」との指摘に対して、首相は「捜査の適正確保に向けて政府としてしっかり取り組んでいく」と述べた。

 民進党の山尾志桜里氏は、共謀罪の対象犯罪に保安林でキノコなどを採る行為を禁じる森林法や、墓を荒らす墳墓発掘死体損壊等が含まれることを問題視。

 法務省の林真琴刑事局長が「組織的犯罪集団が現実的に行う可能性がある犯罪を選んだ」と説明すると、「実効的でリアリティーのあるテロ対策をやるべきだ。共謀罪がテロの防止になるという説得的な説明がない」と批判した。

 これまでの共謀罪法案では、犯罪が実行される前段階で心の中で考えたことの処罰に対する批判や、捜査機関による拡大解釈によって一般市民が適用対象になることへの懸念の声が上がっていた。

 政府は今回の改正案で、適用の対象を「組織的犯罪集団」に限定し、犯罪計画への合意に加えて資金の確保や現場の下見など「準備行為」を要件に追加。「テロ等準備罪」の呼称で「共謀罪とは全く別物」と説明している。

◆刑事局長の出席巡り対立 異例の採決で決定

 「共謀罪」法案を審議する衆院法務委員会は冒頭から、政府参考人として金田勝年法相らの答弁を補佐する法務省の林真琴刑事局長の出席を巡って対立した。金田氏の答弁を求める民進、共産両党は同委員会の進め方を決める理事会で、林氏の出席に合意しなかったが、鈴木淳司委員長(自民)が職権で採決することを決め、林氏の出席を賛成多数で認めるという異例の展開となった。

 民進党の枝野幸男氏は「法相が答えるべきところを、政府参考人が答えるのはおかしい」と指摘し、退席した。同党の逢坂誠二筆頭理事も記者団に「法相のギブアップ宣言だ。(法相は)答弁できないと、政府与党が認めたようなものだ」と反発した。

 質問に立った同党の山尾志桜里氏は、法案の対象犯罪に墳墓発掘死体損壊などが入っている理由について、安倍晋三首相に答弁を求めたが、林氏が代わりに登壇。山尾氏は「局長、(出席を)登録していないので答えないで」と制したが、林氏はそのまま答弁を続けた。

 山尾氏は「この法案に自信が無いのか。答弁能力に欠ける法相の発言で、テロ対策に役立たないとばれることをどれだけ恐れるのか」と批判した。

 民進党の階猛氏が金田氏に答弁を求めると、林氏が代わりに答える場面もあった。

 自民党の小此木八郎国対委員長代理は十九日の会見で「基本方針や法案概要は法相が答えるのは当然だが、刑事罰則の理論や捜査・公判の実務などは政府参考人から詳細な答弁をする必要性が極めて高い」として、政府参考人が出席する必要性を強調した。政府参考人の出席は、国会の慣例として全会一致が原則となっている。採決で決めるのは異例だ。 (大杉はるか)

衆院法務委員会で審議が始まった共謀罪法案に抗議する声を上げる参加者=19日午後、東京・永田町で(北村彰撮影)

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◆「政府説明はうそ」国会前で市民ら抗議集会

 「共謀罪」の本格的な質疑が始まった十九日、東京・永田町の衆院第二議員会館前では、同法案に反対する抗議活動が行われた。

 主催者発表で約二百五十人が集まり、「共謀罪はいらない」などと声を上げた。

 抗議活動を主催した市民団体の海渡雄一弁護士は「政府の説明にはあまりにうそが多い。テロ対策でないものをテロ対策と言ったり、現在の対策が不十分と言ったり。絶対にこの法案を通すわけにはいかない」と訴えた。社民党の福島瑞穂参院議員も「山にキノコを採りに行こうと話し合うと、共謀罪が成立する可能性があるという。監視社会にもつながる」と懸念を示した。

 参加者らは「共謀罪は絶対廃案」「テロ対策とうそつくな」などとシュプレヒコールを上げた。

 抗議活動に参加した労働組合役員の江花新さん(60)は「国の方針におかしいと声を上げる人たちを押さえ込もうという法案だ」と話した。

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