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ももの湯 空から見てて 小坂 60年続く番台守り おかみ逝く

亡くなった「ももの湯」おかみの百々富美枝さん=金沢市小坂町で

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 金沢市小坂町で約六十年続く昔ながらの銭湯「ももの湯」。おかみの百々(どど)富美枝さんが、三月十三日に八十一歳で亡くなった。夫と義父を早くに亡くし、一人で銭湯を守ってきた富美枝さん。昭和の面影を感じさせる銭湯と、番台に座るおかみの笑顔は、地域のなじみ客を癒やし続けた。(岡本真穂)

 銭湯は一九五八年、富美枝さんの義父が開業。近隣の同市大浦町から百々家に嫁いだ富美枝さんは、義父、夫とともに銭湯を営んでいた。しかし七三年には夫、七八年には義父が相次いで他界。残された富美枝さんは子育てをしながら長く一人で銭湯を守ってきた。

 記者が富美枝さんと出会ったのは昨年五月。小坂校区の地域の話題を探してももの湯を訪れた際に、富美枝さんは「昔懐かしい感じにこだわっているの。でも古くて設備もガタがきてるから、そろそろ閉めようかと思っているのよ」とこぼした。とはいえ、「銭湯を残したい」という思いや、常連客による継続への希望も後押しになり、長年続けてきた。

 しかし三月九日、趣味の踊りの練習後に倒れ、数日後に帰らぬ人となった。脳内出血だった。

 近所に住む寺井浜子さん(84)は、富美枝さんと旅行に行くなど五十年来の仲だった。「隔日で(銭湯に)通ってたから、数日行かないだけで『あんた、長いこと見てないね』と笑っていた。あんな朗らかな人いない」と、振り返りながら目に涙を浮かべた。常連の男性(81)は「いい母ちゃんだったなあ」と悲しげにつぶやいた。

 現在は、富美枝さんと生前から交代で番台に座ってきた長男の嫁浩美さん(56)がおかみを務める。「義母の葬儀には多くの常連さんが来てくれた。地域のみなさんの役に立つことが母の望み」と浩美さんは継ぐ決意を固めた。「続けていってね」と常連の男性から声を掛けられ、にこりとほほ笑んだ。

 

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