国境「壁」総額7兆円、従来の3倍以上 民主党試算
【ワシントン西田進一郎】米議会野党の民主党は18日、トランプ大統領が不法移民対策として建設を指示したメキシコ国境沿いの巨大な「壁」は、総工費が約669億ドル(約7兆2600億円)に上る可能性があるとの報告書を公表した。ロイター通信が2月に国土安全保障省の数値として約216億ドルと報じたが、その3倍以上。トランプ氏は費用は下げられると強気だが、壁の有効性と合わせ、再び議論が起きそうだ。
報告書によると、同省は民主党に、国境約1950マイル(約3100キロ)のうち、池がある部分などを除く約1827マイル(約2940キロ)が壁の建設に適していると説明。1マイルあたりの建設費は、予算要求に基づき現在の2017会計年度は1610万ドルで、18会計年度は3660万ドル。これを前提に1827マイル建設すると総額約669億ドルと試算した。
この金額は国境沿いの3分の2を占めるとされる私有地や州所有地の買収費は含まない。さらに維持・管理費として年間1億5000万ドル(約162億円)が必要という。
トランプ氏は就任直後の1月25日、大統領選の目玉公約だった壁の建設を指示。議会には17会計年度に15億ドル、18会計年度に26億ドルを要求した。しかし、全体構想や総工費の見積もりなどは明らかにしていない。今後さまざまな種類の壁を数カ所に建設し、費用対効果や有効性などを検討していく考えというが、公約実現の可能性や有効性への疑問は払拭(ふっしょく)されていない。
総工費が大幅に膨らむ見通しとの報道を受け、トランプ氏は2月、自分は壁の設計や交渉に関与していないとし、「私が協議に参加すれば、戦闘機F35や(大統領専用機)エアフォースワンのように、費用は大幅に下がる」とツイッターで主張。航空機大手ロッキード・マーチンとの交渉でF35の購入価格を引き下げた実績を強調した。しかし、圧縮方法は不透明で、建設費をメキシコに支払わせるとの主張を実現するめども立っていない。