今回は鳥のくちばしについて考えてみたい。世界でいちばん変わったくちばしは、どんなものだろう?(参考記事:「フォトギャラリー:ゴージャスな羽を誇る美鳥14選」)
上下は多くても横向きは1種
世界中で1万種を超える鳥が知られているが、中には独特のくちばしをもつものがいる。
例えば、ニュージーランドのハシマガリチドリは、知られている中で唯一「横に曲がったくちばし」をもつ鳥だ、と米国ピッツバーグにある国立鳥類園の鳥類学者ボブ・マルヴィヒル氏が教えてくれた。おかしな形に見えるかもしれないが、川の石の下に隠れている好物の水生昆虫を探すには、この方がずっと都合がいい。
下向き、つまり下に曲がったくちばしをもつ鳥は多い。例えば、花の蜜を主食にするカギハシハチドリのくちばしは、花のカーブにぴったり合うよう下に曲がっている、とマルヴィヒル氏は言う。(参考記事:「羽ばたく宝石ハチドリ」)
くちばしが上向きの鳥もいる。絶滅の危機に瀕している南米のソリハシヤブアリドリは、上に反ったくちばしのおかげで、「モナリザの微笑みをもつ」と言われる。多様なソリハシセイタカシギ属は、細く上方に反ったくちばしを使って浅瀬をさらい、小さな獲物を捕らえる。
サラダトングや靴も
鳥のくちばしは、その生態について多くを教えてくれる、とマルヴィヒル氏。
南北米大陸の東部に分布するクロハサミアジサシは、受け口の、つまり上くちばしよりも下くちばしの方が長い唯一の鳥だ。これは飛びながら水面直下の獲物をすくうのに役立つ。
アトリ科の一種であるイスカは、上下のくちばしがきちんとかみ合わずに交差している。これは松かさから種を取り出すのに適した形だ。(参考記事:「アメリカ、野鳥への餌やりが拡大」)
ベニヘラサギは、その名前の元になった形によらず、くちばしを「へらというよりサラダトングのように使い」、半開きにして水中で左右に振り、獲物をひっかけるのだと米フロリダ・ガルフ・コースト大学の行動生態学者ジェローム・ジャクソン氏がメールで教えてくれた。
アフリカ大湖沼地域のハシビロコウは、靴のような形の巨大なくちばしをもっている。そんなくちばしで何を食べるのだろうか? 「食べたいものはほとんど何でも」とマルヴィヒル氏は答える。ただし、いちばんの好物は子ワニだそうだ。
餌のみに使うにあらず
くちばしは食べるため以外にも使われる。
東南アジアに生息するサイチョウのくちばしの上には、「カスク」と呼ばれるヘルメット状の突起がある。内部はほぼ空洞でハチの巣状になっており、そこで音が反響し、鳴き声が増幅される、とマルヴィヒル氏。(参考記事:「『赤い象牙』もつサイチョウ、密猟で絶滅の危機に」)
北方に分布するツノメドリは、オスもメスも鮮やかな「漫画のようなくちばし」を見せびらかして異性を誘う。「ただし、繁殖期が終わるとカラフルな固いプレートのような部分がはがれ落ち、すっかり地味なくちばしになる」と言う。くちばしを衣替えする鳥もいるのだ。(参考記事:「癒やしの鳥 パフィン」、「“癒しの鳥”パフィンの越冬地がついに判明」)