「放射線の影響は考えにくい」と言い切れるか
北海道新聞によると、日本甲状腺外科学会 前理事長の清水和夫氏は、1巡目の検査で、せいぜい数mmのしこりしかなかった子供に、2年後に3cmを超すようながんが見つかっていることを挙げ、「放射線の影響とは考えにくいとは言い切れない」と言っている。
これもユーリー・デミチクと同じ考えである。彼は、甲状腺検査評価部会長を辞任した。こういう「空気」に負けない科学者がいることは心強い。
子供の甲状腺がんと放射性ヨウ素I-131の関係があるのかないのか、結論づけるためには、事故直後福島県内で甲状腺の被曝量を測定し、サンプリングすることが重要だった。
きちんとしたデータも取らずに、福島県の県民健康調査検討委員会は「放射線の影響は考えにくい」と総括している。
チェルノブイリ原発事故と比べると、I-131の放出量が少なかった。チェルノブイリでは、小さな子供たちにがんがみつかったが、福島県では小さな子供にがんが多くはない。これが理由だ。
検診を縮小しないで
そんな状況の中で、検診を縮小しようとか、希望者だけにしようという動きも、昨年秋に見られた。これはとてもまずい。できるだけ検診をしっかり続け、早期発見・早期治療をし、子供たちの命を救うことが大切だ。
原発事故と関係があったかどうかは、チェルノブイリでも事故から7~8年かけて因果関係が証明されていったことを考えると、臭いものに蓋をするようなことはよくないと思う。
もう1つの大きな問題は、がんの治療をした後の子供の心のサポートが十分にできているかである。
高校時代にがんが見つかり手術を受けた子供がいた。大学進学後に再発・転移が見つかって再手術。大学も辞め、部屋に引きこもりがちになっていると聞いた。
別の十代の男の子は、甲状腺がんの手術をした後、荒れて家族に暴力を振るうようになったという。悲しい話だ。