プロに学ぶ!投資初心者でも明日から実践できる「投資信託」の基本

【イメージ画像】投資リスク

公的年金や退職金に期待が持てないいまの時代、老後の生活に不安を抱いていない人は皆無といっていいのではないでしょうか。「家計の金融行動に関する世論調査」(2015年、金融広報中央委員会)によると、金融資産を保有する目的の第1位は、「老後の生活資金」(66.5%)です。多くの人が、少しでも豊かな老後を送るために、何とかお金を貯めようと努力している姿が浮かび上がります。

こうした人たちは、具体的にどんな金融商品を保有しているのでしょうか。日本証券業協会が全国20歳以上の男女個人7000人を対象に行った「証券投資に関する全国調査」(2015年)によると、ダントツの1位は「預貯金」で、91.9%。株式(13.0%)、投資信託(9.0%)に大きく差をつけています。

投資に対するマイナスイメージの理由

なぜ日本人の多くは、投資に目を向けようとしないのでしょうか。

上記の調査で「証券投資の必要性」を聞いたところ、「必要とは思わない」と答えた人は75.8%にのぼり、その理由として、「金融や投資に関する知識を持っていない」(38.5%)「損する可能性がある」(38.0%)「リスクを取りたくない」(33.3%)「ギャンブルのようなもの」(21.8%)などが上位に挙がりました。

どうやら、投資に対してマイナスのイメージを持っている人が多く、それが投資をためらう大きな要因になっていると言えそうです。

「そうした不安は、あながち妄想とも言えないのです。1年間というスパンで、投資信託の収益幅を見ると、確かにリスクはあると言えるからです」

そう話すのは『新版 投資信託選びでいちばん知りたいこと』(ダイヤモンド社)などの著書を持つ、モーニングスター代表の朝倉智也さんです。

投資にリスクはつきもの

実際に、見ていきましょう。1993年6月〜2013年6月の20年間のデータ(下図注釈※2の投資信託について、1、5、10年の毎月末のリターンを算出し、収益が最大になるものと最小になるものを抽出)を見ると、1年間の投資収益幅は、国内株式型の投資信託(TOPIX配当込み)で+61.4%〜-45.4%。新興国株式型の投資信託(MSCIエマージング配当込み、円ベース)で+81.1%〜-62.7%。最大・最小収益率の振れ幅は相当なものです。

【グラフ】長期投信でこんなにリスクを減らせる

「投資信託とは、たくさんの個人投資家から集めた資金を、プロが金融市場で運用する商品のことをいいます。1つの商品のなかに数多くの銘柄が含まれており、そのため、分散投資してリスクを抑えることができるのが、大きな特徴です。とはいえ、この収益率の振れ幅を見てもらえればわかるように、それなりのリスクがあります」

「長期投資」でリスク軽減

「個別の株式銘柄に投資するより安全」と言われる投資信託でさえリスクがあるとなると、素人が投資に手を出すのはなかなか・・・。

「じつは、そのリスクを減らす方法があるのです。『長期投資』です。前述の新興国株式型投資信託の場合、10年間運用を続けることで、収益幅は+14.7%〜-0.3%となり、リスクは大幅に減ります。長期投資すればリスクは軽減され、安定的な利回りを得られることを、過去の数字が証明しているのです」

ちなみに、国内株式型投資信託でも、10年間運用を続けることで、収益幅は+5.6%〜-5.3%となり、やはり収益率の振れ幅は小さくなります。

お金の殖やし方

長期投資により、リスクを大幅に軽減できることはわかりました。でも、お金が減らないだけでは投資の意味がありませんよね。どうしたらお金を殖やせるのしょう。コツを朝倉さんに教えてもらいました。

「一番大事なのは、ある程度まとまった額の資金を元手に投資をスタートさせ、その後は、運用益が出ても自分の財布に入れず、そのまま運用に回すこと。資産運用の基本は、得られた利益を再投資して、雪だるま式にお金を増やしていくことなんです」

たとえば、利回り年4%の投資信託があって、AさんとBさんが同時に100万円投資したとしましょう。1年後には4万円の運用益が生じ、104万円になります。そこで、Aさんは4万円を引き出し、Bさんはそのまま同じ投資信託に再投資するとします。利回り年4%のまま、20年間が経過したとき、2人の資産にはどのくらい差がつくと思いますか?

毎年4万円ずつ引き出していたAさんの資産は180万円、再投資を続けたBさんの資産は、利息が利息を生んで約220万円。40万円もの差が生じるのです。

「具体的な数字を見ると、複利(=利息を元本に組み入れてさらなる利息を得ること)のパワーを実感できますよね。30年運用を続ければ、その差は100万円以上にもなります。運用期間が長ければ長いほど、複利の果実はうまみを増すのです」

コツコツ「追加投資」も大事

朝倉さんは、投資信託で長期運用を行う際、もう一つ大事なことがあると言います。それが「継続的な追加投資」です。

「たとえば、利回り年5%の投資信託に投資するとして、一気に100万円を投資するケースと、毎月コツコツ1万円を投資するケースを比べてみましょう。15年後、前者は約208万円(投資額100万円)、後者は約266万円(投資額180万円)になります。ある程度まとまった資金で投資信託をスタートし、なおかつ毎月コツコツと積立投資ができれば、まさに向かうところ敵なしなのです」

なるほどと思う一方で、不安もよぎります。

じつは、私も以前、積立投資をしていたことがあるのです。具体的には「月末に2万円を投資する」と決めて実行していたのですが、「投資に回す余裕のあるお金なんだから、今月は飲み代に使ってもいいか」などと、投資を見送る月が少なくありませんでした。「投資をしないといけない」というプレッシャーも感じ、正直、心地もあまり良くありませんでした。

「それが人間というものです。積立投資は、毎月任意に行うのでは長続きしません。積み立てが続けられる『しくみ』をつくることをおススメします」

目標を実現するための投信

積立投資を続けるための「しくみ」として、朝倉さんは、給与振込口座から毎月一定の日に、自動的にお金を投資に回す方法を挙げます。

「投資信託は『いますぐ儲けたい』『すぐに2倍、3倍にしたい』といった即効性を求める方には向かない投資方法です。投信が最も適しているのは、この先の人生を送るうえで、中長期的な目標があり、その目標に向かってお金を殖やしていきたいと考えている方々です」

つまり、老後の生活資金を貯めたいと考えている人にとって、投資信託はとても有効な手段だということです。さあ、コツコツと、焦らずじっくりと、老後の生活資金を殖やしていこうではありませんか。

(文・永峰英太郎)

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