かつて、25wと80wのスピーカーを例に出しましたが、スピーカーの説明をしたかったわけではありません。
しかし、このことについて、問い合わせがありましたので、整理の意味も含めて説明をします。
■wとは何か
子どもに、25Wと80Wのスピーカーについて「これ何ですか?」と聞かれたら、何と答えますか?
「音の大きさ」って答えますか?
じゃあ、25wと80wのスピーカーでは、80wのスピーカーの方が音が大きいってことですか?
それは、誠に無責任な回答ということになります。
25gと80gでは、80gの方が音が大きいって言いますか?
言いませんよね?
でも、先の回答は、それと同じぐらい無責任な回答ですよ。
「音が大きい」って、言ったとしたら、wは音の大きさを表すということになりますよね?
そんな音の大きさの単位ってありましたか?
ありません。
だから、gと書いてあるのに、音の大きさだって言うのと変わりないぐらい無責任だと言いたいわけです。
wと表記してあるのに、なぜ音の大きさと関係づけるんでしょうか?
スピーカーは音を出すからですか?
もし、そういう理由だとしたら、それはあなたの勝手な理屈です。
「いやいや、オレは知ってる」とオレがさんが出てきて「それは最大出力のことだ」って言った人がいます。
そうですか?責任もてますか?
残念ながら違います。
でも、何でも知ったかぶりをする人、一人で勝手にエラくなっている人に、そういう独自の理論を言い出す人がいるのです。
そして「違いますよ」と言っても、何だかんだと屁理屈をつけて、正しいことを受け入れない人がいる。
こういう人が訂正できない、頭が固まってしまった人なのだと感じるわけです。
こういう人、ちょくちょくいて、他の例ですが「ケーブル(電線)は細い方が、電流のスピードが速くなる」と言っていた人がいました。
理由は、水道のホースも、水の出る口を押さえて細くすると、水の出が速くなるからだそうです。
話をもとに戻して、
wは音の大きさではありません
とまず言っておきたいと思います。
では、wは何の単位ですか?
wは仕事率を表したり、電力を表したりする単位です。
■スピーカーに書いてあるWは何か
では、ここでスピーカーの規格表なるものを見てみましょう。
赤い矢印で示してあるところに、100w(Mus)と書いてあります。
その左を見ると「入力」と書いてあります。
「入力」です。最大出力ではありません。
最大出力だなんて、子どもにウソを教えてはいけません。
大体、最大出力だなんて言ったら、そのあと困ったことになります。
だって、スピーカーはアンプにつなぎますから、
そうすると、どんなアンプにつないでも、この規格表のスピーカーでは100wの出力を出すということになります。
そんなスピーカーがあったら、いいですね。
何も、無理して大出力の大きなアンプを買わなくてもいいことになりますから。
それは、10円しか貯金してないのに、引き出す時は1万円引き出せる銀行があると言っているようなものです。
このスピーカーに書いてある100wとは100wまでの入力に耐えられる
という意味です。
同様に、25wとあれば、25wの入力に耐えられるという意味です。
つまり、それ以上の電力(w)を入力すると、スピーカーが壊れますよという規格です。
どのくらい大きな音が出る、なんてこととは関係ありません。
「でも、25wと80wでは80wの方が大きな音が出るのでは?」
そんなことはわかりません。何とも言えないということです。
■音の大きさの単位はdBです
dBはデジベルと読みます。
例として挙げたスピーカーの規格表では、
出力音圧レベル・・・・99dB/w(1m)
とあります。
これは、このスピーカーに1wの入力をすると、軸上の1m離れたところで99dBの音の大きさ(音圧)が出るという意味です。
ここで、はじめて音の大きさなるものが出てきました。
25wと書いてあるスピーカーと80wと書いてあるスピーカーでは、どちらが大きな音が出るかと言ってもわからないと言ったのは、このdB値がわからないからです。
スピーカーの測定条件は、紹介したように、1wの入力(もしくは2.83vの入力/8Ω)をして、スピーカーの軸上の1m先の音圧を測ることになっています。
だから、dB値の大きい方が、同じ入力(w)という条件であれば、大きな音が出るわけです。
スピーカーに書いてあるwは、あくまで何wまで入力できるかという許容値です。
MusというのはMusic Powerという意味で、瞬間最大(許容)入力値ということになります。
Music Powerの断りがない場合は、連続入力を表します。
■アンプは何wの出力が必要か
今までの説明で、スピーカーに書いてあるw数が何であるか理解できた人は、理解力のある人と思います。
頭の柔らかい人とも言えますが、理数はちょっと苦手でねと言う人には、まだ少々難しいかも知れません。
でも、スピーカーに書いてあるw数が音の大きさとは何ら関係がない、言い換えれば、25wのスピーカーより80wのスピーカーの方が音が大きいとは全く言えないということが理解できないで、数値の大きさだけにこだわって、大きい方(80w)の方が大きな音が出ると思い込んでいる人は、頭が固まってしまっているという恐れがあります。
そこで、ここではもう少し現実的に考えてみましょう。
まず、第一に大切な数値は、出力音圧レベル(dB値)です。
例として、挙げたスピーカーは99dB/w(1m)とあります。
これは、スピーカーの前面から1m離れたところでは、アンプから1wの入力すると99dBの音量が出るということです。
99dBとはどれぐらいの音の大きさでしょうか?
120dB・・・・・耳に痛みを感じる、人が聞く音としては限界の大きさ
90dB・・・・・・電車が通過するガード下で聞くぐらいの音量
60dB・・・・・・通常の人の会話
30dB・・・・・・人のささやき声
0dB・・・・・・・人の耳に聞こえる最も小さな限界の音量
大ざっぱですが大体の見当がつくと思います。
これでわかることは、再生の音量としては120dB以上は必要ないということです。
フル編成のオーケストラを聴く場合でも、120dB以上は必要ないということです。
ここでは、わかりやすく90dBのスピーカーが存在することにします。
すると、電車が通過する音をガード下で聴く程度の音量は、アンプの出力が1wで、1m前方で90dB出るわけですから、普通の家庭では十分ではないかと思います。
3m離れた地点では、音量は距離の2乗に反比例しますから、同じ音量にするには、アンプの出力は2の3乗で8w必要です。
しかし、スピーカーの能率が90dBより3dB低い87dBだと、同じ音量を出すには、アンプの出力は2倍必要です。
dBという値は対数計算(log)ですから、3dBで2倍の違いになるのです。
つまり、87dBのスピーカーでは90dBのスピーカーと同じ音量を出すには、アンプの出力が2倍必要ということです。
87dBのスピカーでは1m前方では2w、3m前方では16w必要です。
【まとめ】
(1)スピーカーの規格で注意した方がよいのは、能率=dB値です
(2)dB値の低いスピーカーはアンプの出力を大きくする必要があります(3dBの違いで2倍)
(3)スピーカーに書いてあるw数はアンプからの入力に耐えられる限界値です(音量とは関係ない)
(4)dB値の大きいスピーカーの方が、省エネに貢献できる(省エネに、スピーカーのw数は関係ない)
※ これでも、w数の大きなスピーカーが大きな音が出ると思っている人は、完全に固まっちゃっている人なのでしょうね。
2012年06月03日
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