トルコ大統領、国際選挙監視団の批判に「分をわきまえろ」と反撃
トルコで15日に実施された国民投票をめぐり、選挙運動が「不平等な条件の下で行われた」と国際選挙監視団が批判していることについて、レジェップ・タイップ・エルドアン大統領は「分をわきまえろ」と語った。
大統領の権限の大幅に拡大する憲法改正を問う国民投票では、賛成が51.4%と僅差で勝利した。野党は選挙に不正があったと主張している。
米ホワイトハウスは17日、ドナルド・トランプ米大統領がエルドアン大統領に勝利を祝う電話を掛け、米国が今月7日にシリアを空爆した際の支持表明に感謝したと明らかにした。
トルコ政府は同日、昨年7月にクーデター未遂事件を受けて始まった非常事態宣言をさらに3カ月延長すると発表した。非常事態宣言はすでに2回延長されており、19日が期限だった。
選挙監視団は「不平等」だったと指摘
欧州安保協力機構(OSCE)と欧州評議会で構成する国際選挙監視団は、賛成、反対双方の選挙運動が「平等な機会を与えられなかった」として、「不平等な条件の下で行われた」と批判した。
監視団は、エルドアン大統領をはじめ政府高官数人が積極的に関与したため、選挙運動はバランスに欠いたと指摘。多くの政府関係者が国民投票の反対意見を、テロリストのシンパと同じだと語っていたことを問題視した。
さらに、政府の施設などが選挙運動で不正な使われ方をしたほか、非常事態宣言の下で基本的な自由が制限されたとした。
一部では対応がとられたものの、真に民主主義的な国民投票の実施に必要な法的枠組みが不十分だったとも指摘している。
欧州評議会の派遣団のセザール・フロリン・プレダ代表は、「全般的に言って、国民投票は欧州評議会の基準に達していなかった」と述べた。
人権擁護を目的とする欧州評議会にはトルコも加盟している。
監視団は、選挙管理委員会が投票の土壇場になってから、公式の印が押されていない投票用紙を有効と認めたことも批判。「重要な不正予防策が外された」と指摘。野党も異論を申し立てている。
しかし、トルコ選挙管理委員会のサディ・ギュベン委員長は、印が押されていない用紙は選管発行のもので有効だと反論。過去の選挙でも同様の対応が取られたと語った。
大統領宮殿で勝利宣言したエルドアン大統領は、集まった支持者らに対し、監視団の「政治的な動機を持った報告を見ず、聞かず、認めない」と述べた。
エルドアン大統領は、選挙結果は憲法改正と行政権限を持つ大統領職の設置をめぐる議論を終わらせたと述べ、今後は改革を実行する過程に入ると語った。
同大統領はまた、長らく交渉が進んでいないEU加盟をめぐっても国民投票を実施する可能性があると述べた。
さらに、死刑制度の復活について、国民投票で支持された場合、もしくは議会が法案を可決し、大統領の署名にまわされた場合には同意すると語った。死刑制度が復活された時には、EU加盟をめぐる交渉は決裂する。
トルコ外務省は、監視団の指摘は中立的ではないと批判。同省は文書で「国民投票が国際的な基準を満たさなかったという指摘は受け入れられない」と述べた。
トルコ最大の野党、共和人民党(CHP)は票の6割の再集計を要求。副党首は、開票結果は破棄されるべきだと語った。
少数民族クルド人系の政党、国民民主主義党(HDP)も、開票結果に異議を唱えている。
国民投票の投票率は85%と高水準だった。エルドアン大統領が地盤とする中部のアナトリア地方と黒海沿岸部では賛成が多かった。
一方、トルコの3大都市では、反対票の方が多かった。反対票はイスタンブールでは51.4%を占めたほか、首都アンカラでは51.2%だった。イズミルでは反対が68.8%を占め、賛成票に大幅な差を付けた。
エーゲ海沿いや多くのクルド人が住む南東部の沿岸地域の大方の選挙区では反対が賛成を上回った。
憲法改正の概要
・大統領の任期は1期5年、最長2期まで
・大統領に閣僚や副大統領など政府高官の任命権
・首相職を廃止
・大統領に司法への介入権限。エルドアン大統領は、クーデター未遂事件の黒幕だと主張するフェトゥラ・ギュレン氏の影響が司法に及んでいると非難していた。
・大統領に非常事態宣言の発布権限
(英語記事 Turkey referendum: Erdogan dismisses criticism by monitors)