欧州連合(EU)からの離脱(=「ブレグジット」)を昨年6月の国民投票で決定した英国で、6月8日下院選挙が行われることになった。メイ首相が17日、官邸前で選挙実施の意向を明らかにした。
選挙実施の理由について、メイ首相は次のように語った(抜粋)。
「昨年夏、英国はEUを離脱する決定を行った」、英国には「確実性、安定性、強い指導力が必要だー私が首相になってから、政権はまさにこれを実行してきたと思う」。
EU離脱という国家的に重要な事態に英国が直面する今、「議会は分裂している」。最大野党労働党は「離脱に向けてのEUとの最終合意に反対すると脅し」、「自由民主党は政府の機能を停止させたいと述べている。スコットランド国民党は離脱法案に反対の姿勢を取り、上院も離脱前の過程に抵抗すると誓っている」。
議会の分裂は「ブレジットの成功を危ういものにし」、英国に「不確実性、不安定をもたらす」。
そこで、下院(任期5年制)では次の選挙は2020年に予定されていたものの、今すぐ選挙を行い、国が一つにまとまったところでEUとの交渉にあたることが最善の策という結論に達した、という。
明日18日、議会で総選挙開始を可能にする動議を提出する予定だ。3分の2の議員の支持があれば6月の選挙が確定するが、すでに労働党、自由民主党、スコットランド国民党は賛成票を投じる意思を明らかにしている。
6月8日の選挙は、メイ首相(保守党党首)にとって絶妙なタイミングで行われる。すぐにも政権交代ができるほどの野党は皆無の状態だからだ。
前回の下院選(2015年5月)で、労働党、そして2010年から保守党と連立政権を担っていた自由民主党は大きく議席を減少させた。労働党は左派系でジェレミー・コービン氏が党首となったが、労働党議員の間で特に支持が低い。党内では足の引っ張り合いや「コービン降ろし」が発生し、2度も党首選を行う羽目になった(どちらもコービン氏が勝利)。
メイ氏が保守党党首になったのは昨年、7月中旬だ。前首相はキャメロン氏。EU加盟残留か離脱かをめぐる国民投票で残留派を率いていたキャメロン氏は、残留派が負けたことで辞任を選んだ。
この後党首選となったが、党首選開始から間もなくして対立候補となった女性による失言が発覚し、この女性は党首選レースから去った。そこで、メイ氏は誰とも競うことなく保守党党首となり、同時に新首相の座を手中にした。
メイ氏に対し「有権者による裁きを受けていない」、「国民が選んだ首相ではない」という批判が出ていた。
元内相のメイ氏は慎重な性格でも知られる。野党不在の中で、「いつでも下院選を実施し、勝てる」状態にはあったが、これまで「選挙は2020年までしない」ことを方針としてきたため、今回の下院選実施の意向はUターンと言えよう。
世論調査会社「ユーガブ」が4月12-13日に行った調査によると、保守党は労働党に21ポイントの差をつけてリードしている。
現時点での下院の議席数(定数650)は保守党が330、労働党が229、これにスコットランド独立党(54)、自由民主党(9)の順だ。
国民投票では約52%が離脱、48%が残留を支持し、有権者は真っ二つに割れた。残留を主張してきた自由民主党のファロン党首をふくめ、「もう一度国民投票をするべき」、「今から心を変えても遅くはない」という声が未だに表明される。
メイ首相は反離脱の政治勢力に対して、「離脱を覆せると思ったら、やってみなさい」と挑戦状を突き付けた格好になった。
6月の下院選の争点は、「離脱を支持するなら保守党議員」、「残留なら離脱反対の政党の議員」の2択の選択肢となりそうだ。
国民投票前に、残留派は離脱すれば経済的にも政治的にも大変なこと(悪いこと)が起きる、と国民を脅した。まだ実際にブレグジットが始まったわけではないせいもあって、「大変なこと」は起きていない。かといって、将来、経済及び政治外交上に不利益が生じないとも限らない。
メイ首相は賭けに出た、と言えよう。
ブレジットに向けての交渉過程は以下のようになる(ロイター記事、3月29日付による)。
3月29日 英政府が、EU離脱手続き開始に向けたEU条約第50条発動の通知書をトゥスクEU大統領に送った。
3月末 トゥスク大統領がほかの加盟国に離脱交渉に向けた指針の草案を送付。
4月後半 欧州委員会のバルニエ主席交渉官に最終的な指針を委任。
5月前半 バルニエ氏は交渉の枠組みについての詳細な勧告をEU首脳会議に回答。
5月 英国を除くEU加盟国の閣僚理事会。交渉チームが守るべき「交渉指令」を最終決定。
12月 EU側は年内に基本合意に達することを望んでいる。
2019年3月末 英国がEUを離脱。
- ツイート
- シェア
- ブックマーク