ここ数日で急激に話題となっている新しいSNSサービス、Mastodon(マストドン)。その始めかたや基本的な使いかたはすでにEngadgetでも公開しています。
「マストドン」を徹底解説。Twitterとの違い、魅力から使い方、オススメサーバーまで(世永玲生)
今回はそもそもMastodonとはどんなサービスなのかと、誤解している人が多い連合タイムラインの表示を含む3つあるタイムラインの違いに焦点を合わせて書いてみたいと思います。
Mastodonの特徴は分散型
Mastodonは、24歳のドイツ人 Eugen Rochko氏がオープンソースで開発しているSNS。大きな特徴は、TwitterやFacebookのように一社が集中管理するサービスではなく、インスタンスと呼ばれるサーバーが複数存在する点です。実際にどこかのインスタンスで登録しようとすると、下記のメッセージを目にすると思います。最近の日本での盛り上がり方をみると始まったばかりのサービスかと勘違いしそうですが、昨年10月には最初のバージョンがリリースされています。Mastodon は自由でオープンソースなソーシャルネットワークです。商用プラットフォームの代替となる分散型を採用し、あなたのやりとりが一つの会社によって独占されるのを防ぎます。
インスタンスの1つ1つが小さなTwitterとも言えるもので、それ自体でSNSとして完結しています。しかし、リモートフォローという他のインスタンスのユーザをフォローする仕組みがあり、基本的にどのインスタンスで登録しても、世界中のMastodonユーザーと交流可能です。
▲従来の集中型のサービスと分散型の違い
この性質上、公式インスタンス(公式サーバー)は存在していませんが、開発者のEugen氏が運営しているmastodon.socialが常に最新版に更新されるフラッグシップ扱いで、公式と呼べなくもない状態です。
インスタンス一覧は、Mastodon Instancesで確認できます。
▲執筆時点(4月17日)で900以上のインスタンスが稼働しています。
Mastodonは現在も開発が続いており、githubでは活発な議論が行われています。
交流できないインスタンスもある
先ほど、「基本的にどのインスタンスで登録しても、世界中のMastodonユーザーと交流可能」と書きましたが、他のインスタンスで表示を禁止されているインスタンスもあります。Pixivが立ち上げたpawoo.netがその代表格で、多くのインスタンスでpawoo.netの投稿を見ることができません。これは、pawoo.netで投稿される画像に、国によっては問題になる性的なものが多いという理由です。国によってはブラウザにキャッシュが残っているだけでも違法と判断されかねないために、かなり慎重に取り扱われています。
3つあるタイムラインの違い
Mastodonには、自分のホームタイムラインのほか、「ローカルタイムライン」「連合タイムライン」の2つの公開タイムライン、計3つのタイムラインが存在しています。・ホームタイムライン
ホームタイムライン(表示上はホーム)は、自分の投稿(トゥート)と自分がフォローしている人のトゥートが表示されます。Twitterでいうタイムラインと同じものと考えて構いません。・ローカルタイムライン
ローカルタイムラインは、自分がいるインスタンスの全ユーザーの公開トゥートが表示されます。Twitter全ユーザーのツイートが流れているタイムラインと考えるとわかりやすいでしょうか。・連合タイムライン
連合タイムラインはMastodonに特有のタイムラインですが、「そのインスタンスが繋がっている他のインスタン全ユーザのトゥートが流れている」と誤解している人も多いようです。ユーザーガイドを見ると、このタイムラインに表示されるのは、そのインスタンスが知っているユーザーのトゥートとなっています。そしてインスタンスに知られる条件は下記。① そのインスタンにいる全ユーザー
② ①がフォローしている他インスタンスのユーザー
③ ②がブースト(Twitterでいうリツイート)したその他のユーザー
③の条件がこれだけなのか、他にも条件があるのか少々自信がないのですが、自分でインスタンスを立てて検証してみた限りでは、このようになっていました。
簡単に言うと、そのインスタンスにいる全ユーザーのホームタイムラインをまとめたものが連合タイムラインとなります。
登録するインスタンス選びは慎重に
Mastodonはオープンソースで公開されいるので、誰でもインスタンスを作ることができます。先に書いた通り、現在は900以上のインスタンスが稼働しており、中には、Pawoo.netのように企業が運営しているものもありますが、多くは個人運営のインスタンスです。このため、メールアドレスやパスワードを収集することが目的の悪意のあるインスタンスが存在しないとも言い切れず、登録するインスタンス選びは慎重に行う必要があります。先の記事でも取り上げられている「mstdn.jp」「pawoo.net」「mastodon.cloud」、そしてフラッグシップの「mastodon.social」なら問題はないと思います。
なお、現状では登録したアカウントを削除する機能がありません。これは、ユーザー側ではできないだけでなく、管理者側にも機能として提供されていません。アカウントを凍結する機能が削除にもっとも近いですが、メールアドレスなどの情報はそのまま残ります。
削除機能の実装はGithubで議論されていますが技術的に難しいようで、しばらくの間は登録したメールアドレスを捨てアドレスに変える、トゥートを一つずつ削除するなどの努力が必要になりそうです。
自分専用インスタンスという選択も
インスタンスを立ち上げても一般には解放せず、自分専用として利用する方法もあります。リモートフォロー機能があるMastodonならでは使い方です。これならパスワードを抜かれるなどの心配も不要で、アカウントを削除したくなったらデータベースを直接弄る、あるいはMastodonの実行環境ごとリセットすることも可能です。
▲自分専用なのでユーザー数は1人。
インスタンスの立ち上げ方については解説しませんが、「mastodon インスタンス 作成」などで検索すると多くの情報を得られると思います。
数か月後にどれだけ定着するか
Twitterに広告が増え、不満が多くなってきていたタイミングもあり、もともとTwitterの利用者が多かった日本人がMastodonに跳びついて今の盛り上がりとなっています。現在の全インスタンスの登録アカウントを合わせると約35万。そのうち、日本人のものと考えられるアカウントは約15万ほど。複数のインスタンスに重複して登録している人も多いので、実際のユーザー数は5~8万人程度ではないかと思います。
熱しやすく冷めやすいのが日本人の特徴です。Pawooあたりはイラストを描く人の表現の場として継続していきそうですが、Mastodon全体としてユーザー数が増えるのか、あるいはこのまま停滞してしまうのか(削除機能がないので減ることはないはず)。この数か月がMastodonにとっては重要な期間となりそうです。