佐川急便は18日、新潟県の第三セクター鉄道、北越急行(新潟県南魚沼市)が運行する「ほくほく線」を使った宅配便の輸送を本格的に始めた。物流業界の運転手不足が深刻になるなか、三セク鉄道は利用者の減少が問題になっている。鉄道で乗客と荷物を一緒に運ぶ「貨客混載」で宅配便の配送の利便性と地域の交通網の維持を狙う。
佐川急便と北越急行は18日正午、乗客と宅配便を乗せた列車の出発式をほくほく線の六日町駅(新潟県南魚沼市)で開いた。式典に出席した佐川急便の内田浩幸取締役は「これからは鉄道や他の交通手段を使うことで、輸送効率の向上や働き方改革につなげていきたい」とあいさつした。
式典後、佐川急便の従業員が最大200キロまで荷物を積み込める専用ボックスを使い輸送に取り組んだ。改装した車内の車椅子スペースにボックスを運び込んでベルトで固定した。北越急行の渡辺正幸社長の「貨客混載、発車!」という合図とともに乗客と荷物を乗せた列車が動き出した。
新しい事業は昨年6月に両社が合意。ほくほく線の六日町駅―うらがわら駅(新潟県上越市)の約47キロメートルの区間で1日1往復、宅配便の荷物を輸送する。両駅から佐川急便の配送センターに荷物を運び、そこから家庭などに配達する。
鉄道やバスで乗客と一緒に荷物を運ぶ貨客混載は生活に欠かせない2つのサービスの維持を狙う試みだ。
一つは過疎地の宅配サービスの維持だ。過疎地はトラック運転手を確保しにくいだけでなく、住宅がまばらで荷物の量が少なく配送効率も悪い。既存の鉄道やバスの路線を活用してトラック輸送を代替できる。
もう一つは地域交通の維持だ。地方の鉄道やバスの多くは乗客の減少により経営は厳しい。宅配会社から受け取った運賃は経営資金に充てられる。宅配会社では最大手のヤマト運輸も岩手県や宮崎県のバス会社と連携して貨客混載を始めている。