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2話 皇女の結婚
皇女マリー・アントーニアの婚約が決まった。
プロイセンの脅威を取り除くために母のマリア・テレージアが画策した事であった。
相手は、ルイ15世の孫である、ルイ・オーギュスト、後のルイ16世であった。
マリーは、そういう政略結婚に利用されたことに対して何一つ不平を漏らさなかった。
周囲は、オペラを見たり、楽器を奏でたりして華やかな宮廷生活をしていたマリーが、国庫の財政危機に陥っているフランスへ嫁ぐことを懸念する声もあったが……。
マリーは、婚約が決まるとオルレアン司教であるヴェルモン神父について、フランス語の特訓に励んだ。
流暢に話せるようになった頃、婚約の日取りが決まり、オーストリアを出立することとなった。
護衛役には、幼馴染である二人の男爵が随行することに決定した。
そう、アンドリュー男爵と男装のフランソワ男爵である。
四頭立ての馬車が10台から用意されて、騎士団に守られながら、フランスまで行進して行った。
アンドリューとフランソワは、ぴったりと馬で、マリーの馬車の両脇に随行した。
フランスに入国すると、派手なパレードが待ち受けれれていて、花火がポンポン打ち上げられた、
季節は、初夏になっていた。
結婚式は、王太子のルイ・オーギュストとヴェルサイユ宮殿にて挙行される予定である。
パリ中が、この結婚式を盛大に祝った。
マリー・アントーニアとその父神聖ローマ皇帝フランツ1世は、教会の中に案内された。
祭壇には、ローマ教皇から派遣された枢機卿が待っていた。
王立楽団員が結婚式の曲を奏でる。
曲が鳴り終わると、列席者が讃美歌を歌い始めた。
マリー・アントーニアは、父のフランツ1世に腕を引かれて、バージンロードを
ゆっくりと歩んで行った。
祭壇の手前で、ルイ・オーギュスト王太子が待っている。
王太子の所に到着した。
枢機卿が、アダムとイブの話をした。
その後、例の言葉を読み上げる。
先ず、王太子からだ。
「汝、ルイ・オーギュストは、健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命ある限り、真心を尽くすことを誓いますか?」
「はい。誓います。」
次は、マリーの番。
「汝、マリー・アントーニアは、健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命ある限り、真心を尽くすことを誓いますか?」
「はい。誓います。」
枢機卿が続ける。
「あなた方は自分自身をお互いに捧げますか」れている
二人は、声を揃えて言った
「はい、捧げます」
「では、指輪の交換を。」
指輪を交換した。
マリッジリングとは思えないほど、超豪華な指輪だった。
そして、誓いのキス。
ルイ王太子は、優しくマリーを抱き寄せて、軽く唇にキスをした。
ビクン、と身体が震えた。
ああ、この人に何があっても一生付いて行こう。 と思った。
そして、ブーケトスにライスシャワー。
結婚式は、無事に終わった。
あとは、お披露目である。
マリーは、控えの間で、ウェディングドレスを脱いで父が用意してくれた別のドレスに着替えた。
淡い空色で、胸繰りが大きい綺麗なドレスだ。
広間では、既に小規模ながらも園遊会が始まっていた。
管弦楽団が、ワルツを演奏している。
マリーを待っていた、ルイ王太子は、早速手を取って踊りだした。
皆、この宴を楽しんでいた。
マリーもこれがこのまま続く生活でありますようにと願った。
この結婚式により、アントーニアはフランス王太子妃マリー・アントワネットと呼ばれることとなった。このとき『マリー・アントワネットの讃歌』が作られ、盛大に祝福された。
宮廷に入ったマリーに、ルイ15世の寵姫デュ・バリー夫人が対立してきた。
もともとデュ・バリー夫人と対立していた、ルイ15世の娘アデライードが率いるヴィクトワール、
ソフィーらに焚きつけられたのだが、娼婦や愛妾が嫌いな母・マリア・テレジアの影響を受けた
アントワネットは、デュ・バリー夫人の出自の悪さや存在を憎み、徹底的に宮廷内で無視し続けた。
当時のしきたりにより、デュ・バリー夫人からアントワネットに声をかけることは禁止されていた。
宮廷内はアントワネット派とデュ・バリー夫人派に別れ、アントワネットがいつデュ・バリー夫人に話しかけるかの話題で持ちきりであった。
ということで、表立っての喧嘩沙汰にはなっていなかった。
ルイ・オーギュストは優しくて、マリーがフランス・ブルボン王朝に溶け込めるようになにくれとなく世話を焼いていた。
アンドリューとフランソワは、そのまま男爵と将軍、副将軍の地位と領地を貰い、近衛隊に入隊した。
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