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男装麗人の秘められた恋 作者:かんな

第一章 男装の麗人

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1話 将軍の跡取り

春眠暁を覚えずで、昼寝をしていた。

夢を見た。

『余は光の女神です。貴女には謝らなければなりません。
神の戸籍係が、貴女の魂と身体を入れ間違えてしまいました。
これから、貴女の本来の身体に魂を入れ直します。
本来の貴女は中世ハプスブルク家の将軍の男爵令嬢です。
本来の祖国、父の元へ転生させます。ただし、赤子からの人生をやり直します。
せめてものお詫びに何でも願いを三つだけ聞き入れて上げましょう。
何を望みますか?』


『本当のことでしょうか?お願いはなんでも良いのでしょうか?』


『本当です。三つの願いを言って下さい。』


『それでは、一つ目は誰よりも賢いこと。
二つ目は絶対に死なないこと。
三つめは食べ物に困らないこと。これで良いですか?』


『本当にそれで、良いのですか?』


『はい。この三つをお願いします。』


『解りました。では、三つの願いを叶えて上げましょう。
もう一度言います。貴女は生まれ変わったら、中世ハプスブルク家の将軍の男爵令嬢です。
父は、シャルル・レーニエ男爵です。四女として生まれます。良いですね?』


『はい。解りました。』


『では、目を閉じて下さい。今から、転生させます。』


『はい。』


私は、ギュッと目を瞑った。


声は消えた。


私は、恐る恐る目を開けて見た。
赤子だった。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


 オーストリア・ハンガリー帝国のハプスブルク家で、時を同じくして3人の子が生まれた。
一人は、王女マリー。
もう一人は、ドロン副将軍の男爵の長男として生まれた、アンドリュー。
そして、もう一人は、レーニエ将軍の男爵の四女として生まれた、ナタリーだった。

 レーニエ男爵は、三人も女の子がいて、四番目も女の子だったので少しがっかりしていた。
そして、女の子にしては元気良く生まれてきた子に、フランソワと名前を付けて、
男の武人として育て、いずれは自身の将軍職を譲ることに決めた。

 つまり、正式には、フランソワ・ナタリー・レーニエである。
周りには、フランソワと呼ばせた。

 三人は身分の違いこそあれ、小さい時から仲良く遊んで暮らしていた。

 剣の稽古とライフルの稽古は、レーニエ男爵が自ら、フランソワとアンドリューにつけていた。

「こら! もっと腰を入れて、剣を思いっきり突き出せ。」

「はい。」

「そうだ、その調子。」


「あそこの的の中央を撃て。」

「はい。」

 二人共、剣も射撃もメキメキと腕を上げて、15歳の頃には帝国随一と称されるようになっていた。

 こうして、過ごしながら、三人は18歳になった。


 フランソワは、周りに女と見破られない様に、胸にはさらしを巻いて膨らみを隠していいた。
幸いにして、さほど大きな胸ではなかったので、気付かれない。

 髪は、実は綺麗なプラチナブロンドで緩いウェーブが掛かっていたが、
後ろに一括りにして、その派手さが目立たない様にしていた。

 流石にお尻の大きさは、誤魔化すのが難しかったが、何とか歩き方を工夫して
解らないようにしていた。

 パッと見には、中性的に見え、憂いのある美男子に見えた。
背丈は、女としてみれば高く、男としてみれば普通であった。

 アンドリューは、筋骨隆々と育ち、フランソワより首一つ背が高くなっていた。
所謂、イケメンで、宮廷の姫達が放っておかないタイプだった。

 事実、いつも姫達に取り囲まれていて、話しかけるのさえ大変なくらいであった。

「アンドリュー! 今度、剣の勝負をしよう!」

「いいとも!」

 それを聞いたアンドリューの取り巻きの子達は、キャー、キャー言っていた。

 フランソワの周りには、男も女も取り巻きがいた。
所謂、BL系にもモテたのである。

「よし。じゃあ、これから、武道場でフェンシングでもするか?」

「いいとも!」


 二人は、取り巻きに囲まれながら、武道場に向った。

 武道場の先生に審判を頼んで、一本勝負だ。


「行くぞ!」

「おう!」

 二人して、レイピアを構える。

 二人共じりじりと時計回りに少しずつ動き出した。

 しかし、レイピアの切っ先は相手に向けたままだった。

 均衡を破ったのは、アンドリューだった。

「えい!」

 鋭い突きが繰り出された。

 フランソワは、辛うじて、転がって躱した。

 立ち上がりざま、反撃に出た。

「えーい!」

 当に喉元を突き刺す直前で、その切っ先をレイピアで、アンドリューは叩き落とした。

 剣が手から離れたフランソワは、万歳をした。

「負けたよ、私の負けだ。」

 先生が、
「勝負あり。」
と宣言した。

 アンドリューの取り巻きの姫達は、キャー、キャー言って騒ぎ出した。

「やっぱり、アンドリュー男爵様は、ヒーローね。」

「この次は、私が勝つ。次はライフルで勝負だ。」
とフランソワは、立ち上がり、捨て台詞を残して立ち去った。

「おう。いつでも受けて立つぞ!」

 二人にとっては、平和な一コマだった。

その武道場の陰から、そっとマリー王女が覗いているのを、二人は知る由もなかった。

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