エルドアン大統領、権限拡大の国民投票で勝利 29年まで続投か
トルコで16日、大統領権限拡大の是非を問う国民投票があり、レジェプ・エルドアン大統領が僅差で勝利した。司法の人事権や国会解散権などの権限拡大が実現する見通し。投票結果を受けて改憲が実施されれば、大統領の任期制限が緩和されるため、エルドアン氏が2029年まで続投する可能性もある。
開票率99.45%で、権限強化の改憲案に対する賛成が51.37%、反対が48.63%。高等選挙評議会は賛成派の勝利を宣言した。
エルドアン氏の支持者たちは、現行の議院内閣制から大統領制に移行すれば、国の現代化が実現すると主張する。
大統領は公邸で「トルコは本日、歴史的な決断をした」、「この国の歴史で最も重要な変革を国民と共に実現した」と表明し、国民投票の結果を尊重するよう訴えた。さらに、死刑復活について国民投票を実施する考えを示した。
エルドアン氏は通常、公邸のバルコニーから勝利演説を行うが、今回は室内だった。
ベイシ・カイナク副首相は、賛成票が予想を下回ったことを認めた。
二大野党は結果を争う構え。最大野党の共和人民党(CHP)は、票の6割について再集計を要求している。公印のない投票用紙でも、不正の具体的な証拠がなければ有効と認めた選挙評議会の判断を批判している。
CHPのエルダル・アクスンゲル副党首は、「賛成派に有利な違法行為が頻発している」と批判。「片方に国家、片方に国民がいて対立している。最終的には反対派が勝つことになるとみんな分かっている」と述べた。
クルド系国民民主主義党(HDP)も、投票結果に異を唱えている。
エルドアン支持者たちが主要都市で結果を歓迎する一方、反対派は鍋やフライパンを叩くという伝統的な抗議手段で不満をあらわにした。
南東部のディヤルバクル県では、投票所の近くで3人が射殺された。どちらに投票するのかでもめごとになったのが原因と言われている。
改憲案では、2019年11月に実施予定の大統領選と議会選の後、大統領制に移行する。
大統領の任期は1期5年の最長2期だが、改憲案では2019年にエルドアン氏が再選された場合、それまでの在任期間をいったん帳消しにすることもあるため、29年までの続投が可能となる。
改憲案ではさらに、大統領は閣僚を含む公職者の直接任命権を獲得。複数の副大統領も任命できる。ビナリ・ユルドゥルム氏が現在務める主張のポストは廃止される。大統領は司法の人事権や国会の解散権も掌握。非常事態宣言の発令も大統領が決めることになる。
改憲と大統領制への移行について、エルドアン氏はクーデター未遂から9カ月後のトルコが直面する安全保障上の課題に取り組み、過去に続いた不安定な連立政権を避けるためには必要だと主張。新体制は米仏の大統領制に近いものとなり、クルド人の反政府行動やイスラム過激主義、隣国シリアの紛争とそれによる難民の大量流入など、喫緊の課題が山積する国に安定をもたらすと説明している。
反対する人たちは、これによって大統領権限が肥大し、権力の集中を避けるために米仏の大統領制に組み込まれている三権分立などの仕組みがないまま、1人の人間による独裁を可能にしてしまうと強く懸念している。
トルコでは昨年7月のクーデター未遂以来、これまでにも何万人もの人が逮捕され、少なくとも10万人が失職ないしは停職処分を受けるなど、反体制派の粛清が進んでいるとされ、国民の多くは独裁権威主義が拡大していると懸念する。
エルドアン氏は、首相を10年以上務めた後、当時は儀礼的な地位とみられていた大統領職に2014年に就任。この間、トルコの中産階級が成長し、インフラの現代化も進み、宗教保守派も力をつける一方で、欧州連合(EU)との関係は悪化した。
今回の国民投票に向けて、賛成派が欧州各国で支持集会を開こうとするのを複数の現地政府が阻止したため、エルドアン氏はオランダやドイツ対応を「西側にはナチズムがまだ生きている」などと非難。両国との関係も悪化した。
(英語記事 Turkey referendum: Erdogan wins vote to expand presidential powers)